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平成27年(2015年)12月20日(日) / 日医ニュース / 解説コーナー

「医師主導」による医療機器開発の更なる促進を目指して

「医師主導」による医療機器開発の更なる促進を目指して

「医師主導」による医療機器開発の更なる促進を目指して

 本年6月に日本医師会「医師主導による医療機器開発・事業化支援」業務が開始され、これまで78件のニーズやアイデアが登録された。
 今後も多くの臨床医による登録が期待されることから、今号では医師であり支援業務の協力事業者である(株)日本医療機器開発機構代表の内田毅彦先生と担当の羽鳥裕常任理事に、医療機器開発・事業化のポイントや今後の見通しについて話をしてもらった。

 羽鳥 支援業務の開始から半年が経ち、治療系における整形や血管、消化器の領域のアイデアが多く登録されています。これまで登録された案件の「目利き」を行ってこられてどのように評価されますか。
「医師主導」による医療機器開発の更なる促進を目指して 内田 大学や研究機関に勤務する医師のみならず開業されている医師から多くのアイデアが寄せられたことは大きな成果だと思います。
 一方で、登録されたアイデアが既に権利化や製品化されているものもあり、もっと早く日医の支援業務が開始されていれば、という思いもありました。
 羽鳥 医師がニーズやアイデアを持っていても具体的に機器の開発となると特許取得などの権利化が高いハードルになっているのではないでしょうか。
 内田 はい。日常臨床の中で画期的なアイデアが生まれても他の特許を侵害していないかどうか調べたり、特許を出願したり、ということは多くの先生が知っていることではありません。
 しかし、日医の支援業務では類似特許を検索して、先生が特許取得を希望されるのであれば弁理士の紹介や日本医療機器開発機構による特許取得の支援も可能です。
 特許取得と言うと敷居が高いとお感じになる先生方が多いと思いますが、国内の特許出願であれば、書類の作成など、かなりの部分を弁理士に任せても50万円程度だと思います。国際特許はそれから1年以内であれば、PCT(Patent Cooperation Treaty)出願という方法でこの協定に参加している世界各国に出願する権利を保有できます。この場合、各国への出願は費用がかかりますが、日本での出願からおおよそ30カ月は各国での出願の猶予がありますので、その間に資金援助してくれるパートナーを見つけることができれば、ご自身の負担が少なくても事業化につながる可能性があるのです。逆に、どんなに優れたアイデアでも、「特許がない」というだけで、事業化には至らないということがほとんどなので、まずは特許の出願が大事なことです。
 今後、医師会によるセミナーなどを通じて、特許取得の事例などを紹介することで、多くの医師が「発明の権利化」の必要性を理解頂くことを期待しています。
 羽鳥 平成28年5月に、日医会館において国・地方の行政、医療機器製造業、ものづくり企業などの参加を得て「開発事例の紹介」や「特許出願のポイント」を中心に現場の先生方に一歩踏み出せるようなセミナーの開催を予定しています。更に、都道府県医師会と共に地方行政やものづくりメーカーと連携したセミナーも進めていきます。
 また、日本医療研究開発機構(AMED)へのアイデア橋渡しも強化していきます。
 これまで世界の市場で革新的な医療機器開発と支援の実績をお持ちの先生から現場の先生方に助言を頂けますでしょうか。
 内田 日本は技術大国であるととともに、医療水準も世界最高レベルです。となれば、医療機器産業は世界をリードしていても良い領域なのですが、実際は年間7000億円もの貿易赤字を抱えています。そのため、国を挙げて医療機器開発に取組むことは国益という観点からも大変意義があると思います。先進的な医療機器はそもそも医療現場のニーズから生まれるものですが、医師にニーズだけを求めるのではなく、アイデアを出して頂き開発を進めることで国内のみならず海外の医療従事者のニーズにも応える医療機器が提供できると考えています。
 「医療機器開発なんて自分とは無関係」と思われる先生も多いのではないかと思いますが、世界の医療を変えるようなアイデアの事例もあります。日本の医師が新たな心臓手術法を考案し、その手術に必要な医療機器が開発され、これが世界に広がりつつあります。心臓弁膜症の治療法が大きく変わる可能性があるとてもエキサイティングな事例です。
 また、「点滴セット」では、重力を利用した滴下か同じ点滴部材をポンプで押し出す方法がありますが、ペットボトルを差し替えて、外出中や在宅で簡単に点滴管理ができるという、点滴のあり方を大きく変えるような発想を持った日本人医師もいらっしゃいます。
 このように、「医師主導」による医療機器の開発は、決して世界が違う話ではなく、身近な所からアイデア一つで生まれる可能性があります。そのためにも、全ての医師が利用できる日医の支援窓口を通じたニーズやアイデアの具現化を国が支援する、というスキームはとても素晴らしいと思います。
 羽鳥 日医は地域医師会や学会と協力しながら全ての医師に対する医療機器開発の窓口として支援業務を進めていきます。正月休みにアイデアをまとめようという先生もおられると思います。ぜひ、チャレンジして下さい。
 本日はありがとうございました。

「医師主導」による医療機器開発の更なる促進を目指して

内田 毅彦(うちだ たかひろ) 氏
(株)日本医療機器開発機構代表
1994年福島県立医科大学医学部卒業、2002年ハーバード公衆衛生大学院修了。2003年医薬品医療機器審査センター(現医薬品医療器総合機構)、同年厚生労働科学研究費補助金による治験推進研究事業の実務責任者として、日医治験促進センターを設立・運営。2010年ハーバード経営大学院修了。2011年医療機器開発支援会社としてNecess Medical社(米国カリフォルニア州)設立、2012年9月から現職。

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