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平成28年(2016年)1月20日(水) / 南から北から / 日医ニュース

わが家の妖怪

 わが家は、今のところへ引っ越してから20年が過ぎた。新築当時から、1階のリビングにいると、2階の廊下の辺りから、小さな音ではあるのだが夜ミシミシと歩くような音が聞こえるのである。
 小生「始めからやけにきしむ家だなあ」。当時は娘もうちにいた。女房殿と娘がにこにこしながら口をそろえて曰く「また、歩いとるねえ」「ええっ、2階には誰もおらんだろう......」彼女たちによると、わが家には、建ったばかりの頃から座敷わらしが住んでいて、時々、2階を歩いているんだそうだ。姿は見えないのだとか。
 ところで、座敷わらしには二つのタイプがあって、"幸をもたらすわらし"と、"災いをもたらすわらし"とがいるらしい。新築の年は、そう、忌まわしい1994年、忘れもしない大渇水の年だった。その年の9月に引っ越したのだが、わが家のある南町は特別なのか、案外と水が出ていたのである。近くに道後温泉があるから? それとも公営の施設が近くにあるからだろうか。いえいえ、女房殿と娘によると、それは座敷わらし様のおかげのようである。
 わが国には、昔から八百万の神と共にたくさんの妖怪が住んでいた。家の周りにもそこかしこにいた。竃(かまど)の神様、くらぼっこ、くねゆすり、枕返し、天井なめ、あかなめ、長手など数え上げるにいとまがない。子どもの頃、皆さんのおうちの雨戸の内側には、お礼が貼ってなかっただろうか? あれは、妖怪"札返し"を寄せ付けないためなのである。天井のシミが怪物の目に見えなかっただろうか? あれは、天井なめの仕業なのである。夜道を歩いていると、後ろから誰か追いかけてこなかっただろうか? 妖怪のびあがりだろうか、大入道だろうか。おおーこわ......。
 子どもの頃、母の里では男用のトイレは外にあったのだが、夜中に一人でトイレに行くのは恐怖であった。ふーっと風が吹いただけで、ぞーっとして"ざぶいぼ"が出たものだった。小さな一物がますます縮み上がって......おおーこわ......。
 八百万の神は今もおわすが、妖怪たちは、今はどこかへ行ってしまった。いや、ゲームの中で、妖怪何とかで活躍しているか。うーむ、ちょっと違うな......。
 それはそうと、最近、2階で足音がしないのである。座敷わらし様はどこかへ出ていったのだろうか。そういえば、家の"がた"と共に、最近、女房殿も小生も体のあちこちが痛く、病を持つ身になってしまった。どなたか、住み込みの座敷わらしを紹介していただけないだろうか。ただし、幸をもたらすほうに限るが。

愛媛県 松山市医師会報 第303号より

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