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平成28年(2016年)2月20日(土) / 日医ニュース

女性医師のアンガージュマンを求める

勤務医のページ

整備されてきた就労環境

 2004年の新医師臨床研修制度で顕在化した医師不足を契機に女性医師問題が浮上し、女性医師支援から男女共同参画活動へと発展してきた。就労環境も急速に整備され始め、多くの病院に院内保育ができ、病児保育・短時間正規雇用・ファミリーサポート・復職支援も広まってきた。運用面では依然として問題はあるが、システムとしては10年前とは隔世の感がある。

次々に生じる問題とその要因

 しかし、次々と新たな事案が出てきて、多種多様な形で女性医師に影響を及ぼすので、常に社会の動きを注視する必要がある。
 例えば、2004年の新医師臨床研修制度では、何年か経って現場からの声で問題が発覚した。研修医が妊娠して研修を中断すると、休止期間を過ぎてしまう。90日間の休止は認められていたが、それを超える研修の中断と再開に関する規定がなかったのだ。
 そこで、2009年、厚生労働省は「臨床研修を長期にわたって休止する場合の取扱いについて」の施行通知を出した。実にそれまでの5年間、研修医の妊娠出産は想定されていなかった。
 同様に、新しく始まろうとしている新専門医制度に不安があり、日医の男女共同参画委員会が平成27年10月に急ぎ中間答申を提出して、改善要請がなされた。
 なぜ、制度設計に女性医師の視点が十分に反映されないのか? その原因は、モノ言える立場に女性医師が少なすぎることと、真の男女共同参画を目指そうという創造性の欠如にあると考える。

医師会への女性医師の参画状況

 社会へ意見を発信できる場として、医師の最大の集団である医師会の役割は非常に大きいが、女性医師の参画は不十分である。
 私は10年前から日医の勤務医委員会委員を務めてきた。当初、委員13名のうち女性は私1人であったが、4年後に2人となった。2011年、国の「2020.30運動」の掛け声の下、日医は2014年度を目標に「女性一割運動」を掲げたが、それ以前に勤務医委員会では目標を達成していた。2014年には、日医に念願の女性医師と勤務医の理事枠ができて、女性医師や勤務医の声が中枢部に届く架け橋ができた。
 このように、日医は随分変わってきたが、いまだ役員の女性比率は1割にも満たない。
 郡市区等医師会の状況はどうか?「郡市区等医師会における勤務医に係る調査 報告書」(日医勤務医委員会、平成26年2月)によれば、女性役員の平均人数は0・7人で、ゼロのところが54・3%という悲惨な状況である。

女性医師が医師会活動に参画し難い理由

 女性医師が医師会に参画し難いのは、仕事と育児に精一杯で時間がないのが主因だが、男社会に入り難い、医師会の活動が分からないといった理由も聞かれる。
 この辺りは、男女共に根深い固定的性別役割の意識、男性側の男尊女卑の意識と男社会への固執、女性側の社会性の低さといった問題が根底にあると思われる。「イクメン」が社会的市民権を得て、育児という貴重な体験を男性も共有する風土が芽生え始めた一方で、″育児は母親の手で"という女性の気持ちで育児を抱え込む場合もある。
 男尊女卑は昔ほどではないが、ガラスの天井は厳然として存在している。しかし女性も、「自分はこの程度で良い」という天井を設けていないだろうか。また、「時間がない」「男社会は嫌」「医師会の活動は分からない」といった口実で、社会活動から逃げていないだろうか?

女性医師が医師会活動に参画するために

 男女共に引き続き意識改革が必要だが、医師会役職への女性医師登用と、医師会活動を広く情報発信して理解と共感を得ることが急務である。
 まずはクオータ制を導入し、日医の各委員会や地域医師会の役員へ一定数の女性医師を登用することを提案したい。
 情報発信は、医師会に未入会の医師も対象として、定期的にメール配信すると良い。入会していない女性医師や勤務医は、わざわざ医師会のホームページを見にいかないからである。小難しくて長い記事はご法度である。直感的な見出しで、ワンスクロールで見られる記事が良い。
 自分達と同じ立場の勤務医や女性医師からトピックの問題や医師会の取り組みが発信されれば「自分も参画しよう」という気持ちも湧く。
 日医は、医師会のドメインを持つメールアドレスを全医師に与え、情報発信のハブとなったらどうか。

真の男女共同参画を目指すために

 10年後には、生産年齢人口世代の2人が高齢者1人を支える時代になる。女性医師は更に増え、男女問わず育児や介護をしても普通に働けないと社会を支えられない。そのためにも真の男女共同参画社会が必要で、その実現には、女性も社会参加して意見を発信することが不可欠である。

 10年前、医療崩壊が問題となった頃に開催された平成18年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(埼玉県医師会担当)のメインテーマは「勤務医のアンガージュマンを求める」であった。
 今こそ、女性医師のアンガージュマンを求めたい。

アンガージュマン:社会参加して現実の問題に取り組むこと。

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