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平成28年(2016年)3月20日(日) / 日医ニュース

「最新医療・放射線~驚異の画像診断と進化する治療~」をテーマに開催

「最新医療・放射線~驚異の画像診断と進化する治療~」をテーマに開催

「最新医療・放射線~驚異の画像診断と進化する治療~」をテーマに開催

 日本医師会健康フォーラムが2月28日、「最新医療・放射線~驚異の画像診断と進化する治療~」をテーマに、日医会館大講堂で開催された。
 小森貴常任理事の総合司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(道永麻里常任理事代読)は、「近年、放射線の医療応用は目覚ましく、さまざまな診療科において診断や治療の向上につながっている。がん治療においても、切らずに根治を目指す『放射線治療』は、患者さんの生活の質を維持しながら治療が行えるとして、大きな期待が寄せられている」と述べるとともに、画像診断技術は正確な診断だけでなく、人体にメスを入れることなく治療をするためには必要不可欠となっており、今後、その重要性は一層増すことが予想されるとした。
 続いて、西村恭昌近畿大学医学部放射線医学教室放射線腫瘍学部門教授、福田国彦東京慈恵会医科大学放射線医学講座教授、荒井保明国立がん研究センター中央病院病院長の3名によるシンポジウムが行われた。

放射線治療の進歩とチーム医療の重要性

 西村氏は、放射線治療の長所や短所等を説明した上で、「近年その進歩により治療成績の向上と合併症の低減が可能になっているが、特に空間的線量分布の改善は進歩が著しい」と述べ、その一つである強度変調放射線治療(IMRT)について解説。IMRTにより障害が少なく、かつ効果の高い放射線治療が実現できるようになったとした。
 また、「がん治療の均てん化ということで、放射線治療を受けられる病院の数は着実に増えているが、これを支える専門のスタッフがいないと高精度の放射線治療はできず、まだまだ不足している」として、チーム医療の重要性を指摘した。
 更に、がん患者に対して、専門医から診断を受け治療の話になった際には、ぜひ外科的手術以外の放射線治療の可能性を検討して頂きたいとした。

画像診断の進歩

 福田氏は、X線写真、CT(コンピュータ断層撮影)、RI(核医学検査画像)、US(超音波検査画像)、MRI(磁気共鳴画像)など、主な画像診断装置についてそれぞれ解説。その上で、「放射線の検査を受けた際の被曝(ひばく)量は、この15年くらいで撮影の部位や目的により3分の1から10分の1くらいまで低減することができるようになっている。我々の役目は、できるだけ少ない線量で適正な検査を全うし最大の情報を得て診療すること」と述べるとともに、患者は画像検査により得られる利益と損失とを考慮し、適正な検査を受けていくことが大事だとした。
 更に、主治医と画像診断医との連携の重要性を指摘し、診療の質を担保していくために画像診断に対する理解を深めていく考えを示した。

IVR(画像下治療)

 荒井氏は、「IVRは、画像を頼りに、体内に挿入した細い器具や針を病巣まで到達させて行う治療であり、小さな穴からピンポイントで治療ができ体への負担も少ないことから、さまざまな病気の治療に応用可能である。世界的に見ても日本のIVRはレベルが高い」と説明。その一方で、「IVRで何ができるのか」医療従事者も含め認知されていないことから、活用されていない場合が多くあると指摘。IVRは「患者さんに優しい治療」であり、今後ますます重要性が増すものと予測されるとした。
 更に、「日本では、医療費のことがいろいろ言われているが、欧米に比べて安価で質の高い医療を受けられている現実がある。こうした恵まれた環境にあることを理解した上で、コストとベネフィットのバランスを考え、国として医療をどうしたらよいのか考えていくべき。そうした理解を深めて皆が納得できる形にもっていくことが望ましい」と述べた。
 その後、フロアとの質疑応答が行われた。参加者は512名。
 なお、当日の模様は、NHK Eテレ「TVシンポジウム」で3月12日に放映された。

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