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平成28年(2016年)4月5日(火) / 日医ニュース

積極的な原因究明で医療事故の再発防止を

積極的な原因究明で医療事故の再発防止を

積極的な原因究明で医療事故の再発防止を

 平成27年度医療事故調査制度に関する医療機関向け研修会が3月10日、日医会館大講堂で開催された。
 本研修会は、平成27年10月に開始された「医療法に基づく医療事故調査制度」における院内医療事故調査への理解を深めることを目的として、日医が医療事故調査・支援センターから委託を受け、本年2月から3月にかけて、宮城県、福岡県、北海道、大阪府、愛知県、東京都、岡山県と順次行ったものである。今回の参加者は386名。
 冒頭のあいさつで横倉義武会長(今村定臣常任理事代読)は、医療事故調査制度について、法律の成立から制度開始までの準備期間が十分ではなかった点を指摘した上で、「そのような中、多くの医療関係者の方々が、医療の安全と質の向上を図るという制度の趣旨や、医療の原点である医療提供者と患者・家族の信頼関係の構築という大きな目標をよく理解され、真摯(しんし)な姿勢でこの制度に向き合って頂いていることを大変心強く思う」と述べた。
 「医療事故調査制度の概要について」と題して講演した海老名英治厚生労働省医政局総務課医療安全推進室室長補佐は、同制度について、医療事故の再発防止により安全を確保することを目的に、医療事故を医療機関が自ら調査し、遺族への説明や医療事故調査・支援センターへの報告を行うもので、「医師法21条に基づく届出」とは別制度であることを強調。
 医療事故の定義のうち、「当該死亡又は死産を予期しなかったもの」については、「患者等へ事前に説明」「診療録等に事前に記載」されていなかったものであると説明した。
 「医療事故調査制度の理念と『医療事故調査・支援センター』の役割」と題して講演した、木村壯介日本医療安全調査機構常務理事は、同センターは、医療機関から報告される医療事故調査結果の整理・分析を行い、医療事故防止の普及啓発を行う他、医療機関管理者や遺族の依頼を受けて、院内調査とは別に調査も行うことを説明。
 医療事故であるか否かの判断に関する相談には、合議の上、センターの助言を行うとし、事前に、(1)臨床診断と治療経過・既往症、(2)事故発生(医療行為)前後の状況、死亡までの経過、(3)死亡の予期に関する説明・記録等の状況、(4)推定死亡原因、(5)相談内容─などをまとめておくとスムーズであるとした。
 事故発生の報告については、書面とウェブで受け付けていることを紹介するとともに、センターへの調査結果報告に内部資料は不要であるとして、ヒアリングのメモや委員会の議事録等、個人の責任追及につながりかねないものの取り扱いに注意を呼び掛けた。
 「医療事故調査等支援団体の役割」と題して講演した今村常任理事は、「本制度における院内事故調査は、医療機関が主体的に行うものである」と前置きした上で、支援団体として、日医や都道府県医師会などの職能団体、地域の大学や基幹病院、病院団体が、(1)制度全般や医療事故の判断に関する相談、(2)調査手法や報告書作成に関する助言、(3)解剖や死亡時画像診断(Ai)に関する技術的支援─などを行うことを説明。支援団体が連携するための「支援団体連絡協議会」においては、都道府県医師会が調整役を担うとした。
 同常任理事は、「一人の経験を医療界全体の財産にする」との観点から、医療事故が疑わしい症例は積極的に報告し、再発防止に役立てるよう要請した。
 引き続き、日医医療安全対策委員会の委員らにより、「院内医療事故調査の具体的方法」が5つの段階に分けて説明された。

【院内医療事故調査の具体的方法】

①事故の発生と相談
 上野道雄同委員会副委員長(福岡県医師会副会長)は、「医療事故調査で未知の病態が明らかになり、遺族や医療関係者の心が癒されることもある」として、遺族からの訴えがない場合であっても、想定外の死亡事例は届け出るよう強調。
 支援団体への相談や依頼は原則として管理者が行うべきであるとし、診療記録や画像、モニター記録、チューブ類、機器等、資料の保存を、医療安全担当者を中心として組織的に行うべきであるとした。
 また、遺族には誠意をもって説明するとともに、病理解剖の承諾を得ることが重要であるとした。
②事故報告後、調査委員会開催までの対応
 上野副委員長は、初期対応で行う業務として、「資料の収集と整理」「聞き取り」「論点整理」を挙げ、特に、臨床経過(病歴)に身体所見や検査結果等を時系列に記載した「事例の概要」を作成することが事前準備の基本であると強調。
 当該事例の病態と関係者の関わりを時系列の表にした「臨床経過一覧表」と見比べつつ、記録の問題点、空白の時間、不十分な記載、記載の矛盾等を抽出し、聞き取り調査や資料の追加を図ることで、効率的な審議につながるとした。
③院内事故調査委員会
 小林弘幸委員(東京都医師会理事)は、調査委員会について、「委員長・委員・外部委員・当事者である医療スタッフで構成し、弁護士は不要で、委員長に病院管理者が就任するのは避けるべきである」との見解を述べた。
 調査においては、個人の責任追及の場にならないよう配慮しつつ、匿名性の確保にも努めるべきであるとし、医療事故の原因が、(1)環境、(2)教育、(3)バックアップ体制、(4)それ以外─のうちどれに該当するかを検証すると、再発防止策の検討につながりやすいと指摘した。
 また、委員会の開催は、「センターへの報告から1~2カ月以内」「審議時間は長くても3時間以内」が望ましいとし、事前準備の充実度が審議の深みを決するとした。
④院内事故調査報告書の作成
 上野副委員長は、調査報告書について、「事例の概略」「病態(死因)の審議結果」「診療の妥当性」「具体的な事故防止策」を柱に構成し、診療の妥当性については委員会における全体的議論を踏まえて行い、関係者の状況や背景を配慮する余地はないか、看護職も含めた関係者の意見を十分に聴取してから作成すべきであるとの考えを示した。
 疑問が浮上した場合には、全委員に郵送して意見を求めるとともに、院外専門委員と医療機関が修正協議を繰り返すことが重要であるとし、報告書作成の協議が事実究明の最後の機会であることを強調した。
⑤遺族への説明
 平松恵一委員長(広島県医師会長)は、遺族への説明は遺族の代表者に対して行い、説明には当事者を含む当該診療科の医師と、幹部、医療安全管理者、メディエーター等、複数で対応し、遺族との窓口を担う看護師の同席も望ましいとした。
 当該医療機関は、遺族の心情に配慮しつつ、面接の日時、場所、出席者を決めた上で、報告書を基に病態(死因)を分かりやすい表現で説明すべきとし、説明に対する疑問には丁寧に答え、謝罪が必要な場合は、明確かつ早めに意思表示を行うべきだとした。
 また、報告書や説明資料については、事前に交付することで効率的な面談につながるとし、面談が長時間に及ぶ場合には仕切り直すことを提案した。
 その後、「日頃からの院内の医療安全体制」と題して講演した馬場文子福岡東医療センター医療安全管理係長は、同センターが「速やかな報告で、病院は職員を守り抜く」ことを宣言し、医療安全研修を重ねて制度への理解を深めてきたことを説明。
 聞き取りにおいては、当事者を問い詰めるのではなく、何が発生したのかを明らかにすることが重要だとして、望ましい例と望ましくない例をビデオで示し、尽力した医療者の心情に配慮する言葉を掛けつつ、自ら語らせることが大切だとした。
 更に、患者が生存中に報告を受けることで、他診療科の応援を得て死亡事故を減らせるとし、早期報告・早期対応のためにも、報告しやすい環境の整備が鍵であるとした。

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