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平成28年(2016年)5月5日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

平成26・27年度医療政策会議報告書「高齢社会における経済的・文化的・医学的パラダイムシフト」まとまる

日医定例記者会見 4月6日

 石川広己常任理事は、医療政策会議が会長諮問「高齢社会における経済的・文化的・医学的パラダイムシフト」に対する報告書を取りまとめ、3月30日に田中滋議長(慶應義塾大学名誉教授)から横倉義武会長に手交したことを報告した。
 報告書の「はじめに」では、同会議における2015年から2016年にかけての地域包括ケア、地域医療構想、社会的共通資本論などに関する講演や討議を踏まえて取りまとめを行ったとし、各章の概要を説明。
 第1章「パラダイムシフトほど大層な話ではないが切り替えた方が望ましい観点」では、科学は非連続的に進歩するというパラダイムシフトを唱えたトーマス・クーンが、その概念の中で「社会科学」の世界を想定していなかったことを挙げ、歴史と制度に関する知見が不可欠なはずの政治経済学の分野において、過去との不連続を説く安易なパラダイムシフト論が目立つ実態に警鐘を鳴らしている。
 第2章「超高齢社会における地域の力:地域包括ケアシステム構築にあたって」では、地域包括ケアシステムの定義をめぐる考え方や議論の経過を記すとともに、今日の高齢社会においては、急性期医療を提供する病院も「一連の医療介護の連続過程」の一環となり、在宅医療に代表される生活医療こそが医療の中心となる時代に変わったとの見解を提示。地域包括ケア研究会が重視してきた「自助・互助・共助・公助」の考え方を概説した上で、「医療、介護、障がい者支援者、児童ケア等に携わる事業者と専門職者は、地域包括ケアシステムに加わるとの自覚をベースに、これまで培ってきた専門的なケア機能を自事業所の利用者に提供するにとどまらず、圏域・市町村域や医療構想圏に展開していく姿勢が求められる」としている。
 第3章「高齢社会における保健医療分野の3つのパラダイムシフト論の真贋の検討」では、昨年塩崎恭久厚生労働大臣の私的懇談会で取りまとめられた『保健医療2035』を取り上げ、プラス・マイナス両面の評価を提示。同報告書が財源確保方策で所得税の累進制、資産課税、企業課税の強化及び消費税の再引き上げに全く触れていないことから、「財源論から逃げている」と指摘している。
 第4章「高齢社会に求められる地域医療介護サービスのあり方」では、地域における医療・介護のニーズの違いに触れ、十分な地域分析を踏まえて計画を策定すべきことを強調。地域包括ケアのネットワークが機能するためには専門職と患者及び家族の情報共有の場が不可欠であるとし、「場」としての医療機関の重要性などを説いている。
 また、現在、各地で策定が進んでいる地域医療構想に関しては、「行き過ぎた機能分化はかえって効率性を阻害する恐れがある。高齢者のニーズが複合的であることを考えれば、各施設の機能も一定程度ケアミックス的なものであることが望ましい」との見解を示している。
 「おわりに」では、第一次団塊の世代の多くが人生を卒業すると見込まれる2040年までの体制をできるだけ早く、市町村ごとに設計するとともに、できるだけ早く社会の知恵と力を少子化対策に向けることも必要であると強調。時代を先取りした医療介護提供体制を構築するに当たっては、日医がこれまで以上に力を発揮し、貢献する姿を期待すると結んでいる。
 なお、巻末には、会議で講演した4名の有識者の講演録が収載されている。

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