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平成28年(2016年)4月20日(水) / 日医ニュース

糖尿病治療における地域連携の先駆的取り組みなどを報告

糖尿病治療における地域連携の先駆的取り組みなどを報告

糖尿病治療における地域連携の先駆的取り組みなどを報告

 第5回日本糖尿病対策推進会議総会が3月24日、日医会館大講堂で開催された。
 冒頭、日本糖尿病対策推進会議会長としてあいさつした横倉義武会長は、「都道府県での医療計画の策定に当たっては、厚生労働省が定める『糖尿病の医療体制構築に係る指針』の中で、糖尿病対策推進会議を活用するよう明示されている。地域の実情に合わせたさまざまな取り組みが進むよう、引き続きご尽力をお願いする」として、地域の糖尿病対策推進会議の更なる活動に期待を寄せた。
 続いて、羽鳥裕常任理事が、構成団体及び役員を紹介した後、演者5名による講演が行われた。
 植木浩二郎国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長は、「J-DREAMS診療録直結型全国糖尿病データベース事業」と題して、国立国際医療研究センターと日本糖尿病学会が共同で行う、データベース事業について説明。同事業の特徴として、データの収集に当たり、電子カルテに糖尿病専用の入力画面を作り、入力データを統一できることなどを挙げた。
 その上で、情報を匿名化した後に、国立国際医療研究センター内に設置する糖尿病クラウドセンターに収集し、日医に構築予定のかかりつけ医のデータベースと結合することで、糖尿病診療の向上を図りたいとした。
 江口成美日医総研研究部専門部長は、「糖尿病疾病管理データベースに関する研究─かかりつけ医の臨床データ構築に向けて─」と題して、現在検討中の診療所向けの糖尿病疾病管理データベースについて紹介。
 データ入力は、電子カルテ、ORCA、紙カルテなどに対応し、現場での負担を最低限に抑える方向で考えており、今後は、「より柔軟な入力方法・収集手法の確立」「パイロット診療所の拡大」「特定地域での展開による悉皆(しっかい)性の確保」「将来的には他の疾病管理データへの拡張」を検討していくとし、5月ごろからのテスト試行を目指すとした。
 榎本健太郎厚生労働省保険局国民健康保険課長は、「糖尿病性腎症重症化予防に係る最近の動向について」と題して、糖尿病を取り巻く現状に関し、医療費が高額になる透析治療について、透析導入患者は糖尿病性腎症を主要原疾患とする割合が多いことを報告。糖尿病性腎症重症化予防に向けた取り組みとして、埼玉県等の先行事例を横展開していきたいとした。
 更に、同日の会議終了後に、日医、日本糖尿病対策推進会議、厚労省の3者による「糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定」を締結し、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定した上で、その取り組みを進めていく考えを示した(別記事参照)
 江崎禎英経済産業省商務情報政策局へルスケア産業課長は、「健康・医療情報の活用による行動変容の実現に向けて」と題して、レセプトや健診データを活用した生活習慣病予防サービスの実証事業について解説。
 活用例として、本人の同意を取得した上で、レセプトデータや健診データに、対象者が測定した日々の運動などの健康関連データを臨床医等が活用し、対象者の行動変容を促す枠組みを示し、次年度には、日本糖尿病対策推進会議及び厚労省等の関係省庁と連携の上で本年夏ごろから実証を実施していく予定であるとした。
 片山茂裕埼玉県糖尿病対策推進会議副会長は、「埼玉県における市町村国保共同による糖尿病重症化予防」と題して、埼玉県医師会、埼玉県糖尿病対策推進会議、埼玉県の3者により作成した糖尿病性腎症重症化予防プログラムを紹介。
 内容は、健診・レセプトデータからハイリスク者を抽出し、通院していない人には受診勧奨を、通院している人には保健指導を行うというものであり、平成28年度には、県下全市町村国保で展開予定であるとし、「数年後に評価指標を伴った実際の予防効果が報告できるのではないか」と述べた。
 その後は、フロアと発表者との間で質疑応答が行われ、今村聡副会長の総括により会議は終了となった。当日は約150名の出席者であった。

キーワード
日本糖尿病対策推進会議とは

 糖尿病の発症予防、合併症防止等の糖尿病対策をより一層推進し、国民の健康の増進と福祉の向上を図ることを目的として、日医、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会の3者で平成17年2月に設立した組織。現在は前述の3団体に日本歯科医師会を加えた4つの幹事団体、14の構成団体からなり、横倉義武会長が会長を務めている。

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