閉じる

平成28年(2016年)8月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

グレープフルーツの思い出

 果物が好きで冷蔵庫には、季節の果物が欠かせない。幼い頃住んでいた県南の田舎町には八百屋は一軒のみで野菜や干物ばかり。果物はせいぜいリンゴぐらいであったように思う。
 バナナなどは見たこともなく、無論食べたこともなかった。当時、バナナは都会でもお金持ちか、病気になった時しか食べられない大変貴重な品であった。小学校入学前の就学時健診で、私は絵本に描かれていたバナナを見て「黄色いダイコン」と答えたらしい。一緒に付いてきた母は相当ショックだったらしく、それ以来父は東京出張のたびに、いろいろな果物(パイナップルやメロンなど)を買ってきて食べさせてくれた。
 果物で鮮烈に覚えているのは、40年前(1971年)輸入自由化で大量に入ってきたグレープフルーツの登場である。アメリカから輸入される半年前から、テレビにグレープフルーツの宣伝が頻繁に流れるようになった。何人もの芸能人・有名人がハワイで食べたグレープフルーツがいかにおいしかったか自慢気に話していた。
 食べ方なるキャンペーンも流れ、それによると、素敵なガラスの器に半分に輪切りした果物が鎮座し、真ん中には赤いチェリーが一個乗っていた。なんてオシャレなんだろう。期待は高まる一方であった。
 やがてわが家の食卓に上る時がやってきた。最初の一口を食べた印象は、「甘くもなく、水分ばかり多く、しかも微(かす)かに苦味もある」。当時はジューシィという感覚もなかったので「水っぽい」と感じたのだろうと思うのだが、家族一同顔を見合わせてしまった。それ以来砂糖をたっぷりかけて食べるのが定番となった。しかし年々品質が良くなり味も向上し、値段も手頃で一年中手に入る主婦にはありがたい果物になった。
 ちなみに私の一番は柿である。日本古来から愛された自然の甘さがたまらない。秋になるのが待ち遠しい。

(一部省略)

岩手県 いわて医報 No.771より

関連キーワードから検索

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる