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平成28年(2016年)10月20日(木) / 日医ニュース

埼玉県における医療事故調査制度の取り組みについて

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 平成27年10月に医療事故調査制度が施行されたが、埼玉県医師会では平成27年4月より準備を開始した。4月23日に第1回医療事故調査制度支援団体検討委員会を開催し、7月29日の第3回検討委員会において、埼玉県医師会の基本方針を決定した(表1)

表1 医療事故調査制度に関する埼玉県医師会の基本方針
  1. 埼玉県において、埼玉県医師会が医療事故調査支援団体となる。
    (県内に他の支援団体が指定された場合は、支援団体間の総合的な連絡調整を行う。)
  2. 医師会会員施設だけでなく、非会員医師の医療施設も対象とする。
    (助産所、歯科施設も含む。)
  3. 当該医療施設等に、調査の中立性、透明性、第三者性を確保するために、院内事故調査委員会に対して、支援団体から事故調査委員を派遣する。
  4. 事故調査委員は、医療事故調査・支援センター、医学会、県医師会と協力して選出する。
  5. 埼玉県医師会に常設委員会を設置する。

 また、この間に、医療事故調査制度におけるAiに関する意見交換会、病理解剖に関する意見交換会を開催し、了解事項を取り付けた。
 そして、8月26日に第4回医療事故調査制度支援団体検討委員会(最終回)を開催し、以下の四つの事項について了解した。

  1. 埼玉県医師会に常設委員会として医療事故調査支援委員会を設置する。
  2. 院外専門委員の登録・派遣。
    主領域・副領域の専門医を選出し、院内調査委員会に派遣する。
  3. 初期対応委員の選出(県医師会担当役員)。
  4. 医療事故調査等支援団体連絡協議会を設置し、支援団体間の総合的な連絡調整を行う。

 第1回埼玉県医療事故調査等支援団体連絡協議会は、県内27支援団体が集まり、10月8日に開催された。支援団体間相互の連絡協調を行うこととし、会長には金井忠男埼玉県医師会長が就任した。

埼玉県における医療事故調査制度の初期対応について

 受付窓口を一本化し、まず、届け出が必要な事例が発生した際、または、届け出が必要かどうかの判断に困った場合は、埼玉県医師会医療事故調査制度支援団体受付窓口へ連絡する(TEL:048-824-4199 埼玉県救急医療情報センター・大人の救急相談と兼用。24時間受付対応)。
 受付終了後、担当者から、施設宛てにFAXにより初期対応指針一式を送付。
 午前7時から午後9時までの間は、初期対応役員より折り返し直接連絡し、午後9時から翌朝午前7時までは、FAXのみで対応する。
 対応指針に従い、制度の概要や院内事故調査の実施計画などを遺族に説明してもらい、解剖・Aiの承諾を得てもらう(自院で対応できない場合は、支援団体が手配する仕組みになっている)。
 その後、初期対応役員が聞き取りを行い、他の役員と協議をし、該当事案と判断した場合、医療機関からセンターへ報告をする。更に、支援団体にも相談票を送り、院外調査委員長となり得る医師、院外調査委員になる医師や、必要に応じて看護師、弁護士等の手配を行う仕組みとなっている。
 なお、医療事故調査委員長は、院内・院外委員より互選によって選出されるが、院外委員がなるのが望ましい。
 6月までに11件のセンター報告事例があるが、解剖またはAiを実施したことにより、死因が明らかになった事例が含まれている(表2)

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 なお、埼玉県医師会の医療事故調査支援委員会(会長・副会長2名・常任理事で構成)は、現在までに計24回開催された。

現在までの問題点

(1)全医療機関に対し、医療事故調査制度の理解が十分に得られていない。
(2)遺族にも悪いイメージが持たれる"医療事故調査制度"というネーミングに対する問題。
(3)死亡事故が発生した時の院内報告体制ができていない。
(4)遺族の解剖・Aiに対する理解が得られず、承諾を得るのが難しい(医療側にも問題がある)。
(5)支援団体に相談するまでに、院内での検討が十分に行われていない。
(6)患者・家族に対する手術前のインフォームド・コンセントが十分になされていない。
 以上が埼玉県における医療事故調査制度の取り組みと問題点である。
 最後に、平成28年6月24日に医療法施行規則を一部改正する省令が公布されたことに触れておきたい。その中で、特に重要な点は、病院等の管理者は、病院等における死亡事例が発生したことが、病院等の管理者に速やかに報告される体制を確保するということが明記されたことである。
 今後は、遺族からの申し出も増加すると思われ、各都道府県医師会においても、今まで以上に支援団体としての体制の整備が望まれる。

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