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平成29年(2017年)2月20日(月) / 日医ニュース

中部医師会連合の勤務医特別委員会での議論から(第二報)―新たな専門医の仕組みと勤務医の医師会活動について―

勤務医のページ

 平成28年度中部医師会連合で設置された勤務医特別委員会で、「新たな専門医の仕組み」と「勤務医の医師会活動」について議論された。

(1)新たな専門医の仕組み

 新たな専門医の仕組みについては、中部7県中4県で議論がされていた。特別委員会では、中央における議論の内容が断片的に伝えられるのみであった。

①日本専門医機構の問題点について

  • 日本専門医機構(以下機構)の存在意義は専門医の質を担保することにあると理解するが、機構内部での議論の過程が明らかにされておらず、基本診療科決定の経緯を含めて、制度に対しての説明が丁寧にされていない。
  • 機構において専門医に対する定義を、「標準的な医療を行う医師」としているが、あまりに漠然とした定義であり、一般医の医療水準が「標準的」ではないという誤解を招くことからも、再検討すべきである。
  • 機構は専門医プログラムの策定をサイトビジットまでして専門医の質を担保するとしながら、これらの手順を放棄したのであれば、機構の存在価値はないのではないか。
  • 基本診療科の18+1が決定された過程が全く提示されていない上に、それぞれの学会の思惑で募集定員数が示されている。この状態で専門医全体の養成数を決めることは不可能であり、機構は早急に専門医の養成数と学会間の募集定員数の調整を図るべきである。
  • 専攻医の研修中の身分・給与に確かな保証がない状態は、保険医として活動する医師にとって問題ではないか。
  • 医療現場においては、診療報酬上も病院として、ダブルボードをもった医師の医療活動を余儀なくされており、この解決策が示されていない。
  • 日医は機構に対して、今以上に機構運営の関与の度合いを強め、勤務医会員の意見が反映されるようにして欲しい。
  • 若手医師、医学生に対しての機構からの情報開示、説明がマスコミ等の媒体を通してのみであり、理解が浸透していない。

②新たな専門医の仕組み自体の問題について

  • 総合診療専門医の位置づけが不明確であり、加えてサブスペシャリティを取得できるかどうかも不明である。家庭医としての総合診療専門医と病院内で活躍する総合診療専門医は同じものとは考えにくい。
  • 新たな専門医の仕組みの施行により、症例、指導医の都市部集中が顕在化し、専門医の地域偏在、診療科偏在が更に助長される。また、専攻医にも当然ながら同様の偏在が起こると考える。プログラムによっては、初期臨床研修にも影響を与えるのではないか。
  • 女性医師のライフイベント(妊娠・出産・育児)による研修中断についての配慮がない。
  • 基本診療科とサブスペシャリティとの連続性についての議論がない。
  • 国は県に対して、新専門医プログラムにより医師の偏在が起きないように調整するよう通知しているが、県(地域医療支援センター)に強制力、権限はなく、期待される調整機能は果たすことができない。また、「地域協議会」の設置が義務づけられているが、一部を除いてほとんど機能していない。
  • 作成されているプログラムは大学中心のものがほとんどであり、地方の、特に中小病院が見捨てられるのではないかという危機感を、出席者の大多数が共有している。県によっては、プログラムが一つしか存在しない状況は問題ではないか。
  • そもそも新たな専門医の仕組みは医師の偏在問題とは切り離して、専門医の水準を問題にすべきものである。

 以下、私見を述べる。
 新たな専門医の仕組み自体は、専門医の質の担保を目的として始まったが、これが医師の地域偏在、診療科偏在と同時に議論されるようになり、更に学会による医師の囲い込みの手段となる傾向に拍車をかけて、制度の主体者が一体誰なのかが分からなくなった。誰も国民を見ていないし、若手医師、医学生の将来を考えているようには感じられない。このような不完全な状態で、たった一年間の猶予期間内で新しい制度を実行に移すのは、あまりにも冒険である。制度の運用を始めれば、手直しはできないと断言する。学会がそれぞれ独自に過渡的な専門医をつくり出せば、質の担保ができないのは明白ではないか。
 プロフェッショナルオートノミーの確保にとらわれて、拙速に制度設計途中の新たな専門医の仕組みを不完全な形で立ち上げれば、若い医師達は自らの医師キャリアに明確な目標を持つことができない。日医は、組織として若い医師の立場に立った対応を考える必要がある。換言すれば、現日医執行部は、未来の日本の医療を支えるべき若手医師に対しての責任があると理解する。

(2)勤務医の医師会活動

 会議に先立って、中部医師会連合勤務医特別委員会にワーキンググループを置き、そこで取りまとめた内容に基づき、中部7県にアンケートを実施した。愛知県・岐阜県・静岡県では、郡市医師会、県医師会、日医それぞれの勤務医会員数に大きな差は見られなかったが、他県においては差が見られた。また、勤務医の医師会役員数及び日医代議員に占める割合についても、県によって差が見られた。勤務医の医師会活動を促す取り組みについては各県で工夫されているが、多くの勤務医が実務に追われて医師会活動をする時間がほとんどなく、この問題が解決される必要を感じた。
 中部医師会連合委員総会では、日医の勤務医担当の市川朝洋常任理事より、勤務医委員会に対する歴代の会長諮問が示されたが、昭和58年の第一回の諮問「勤務医の日本医師会入会促進の方策」と同様のテーマが現在に至るまで度々繰り返されており、日医における勤務医問題の難しさを如実に表しているように思われた。
 中部医師会連合勤務医特別委員会では、泉良平日医勤務医委員会委員長の声掛けで、モデルケースとして、昨年度より各県の勤務医からの意見を集約しやすくするシステムづくりを目指している。県下郡市医師会の勤務医が、その意見を県医師会、中部医師会連合(ブロック医師会)に挙げて、更に日医勤務医委員会に意見を述べ、日医執行部に具申することができるようなフレームワークを構築し、今年度もある程度の成果を得たと考えている。このような流れで勤務医の声を中央に届けることができれば、勤務医の医師会加入促進につなげることができるのではないかと思っている。

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