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平成29年(2017年)6月5日(月) / 日医ニュース

ヘルスデータベースの利活用に向けた課題等について議論

ヘルスデータベースの利活用に向けた課題等について議論

ヘルスデータベースの利活用に向けた課題等について議論

 「各国におけるヘルスデータベースの現状と課題に関する国際会議―セキュリティ・個人情報保護・データ利活用―」が5月13日、日医会館大講堂で開催された。
 本会議は、昨年10月に開催された世界医師会(WMA)台北総会において、「ヘルスデータベースとバイオバンクにおける倫理的考察に関するWMA宣言」が「台北宣言」として採択されたことを受けて行われたものであり、約230名が参加した。
 道永麻里常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、「近年医療を取り巻く環境が変化する中で、医師を始めとする医療従事者がどのような倫理・責任を持ち、患者と向き合う必要があるのか、今までにない諸問題をどのように克服すべきか、真剣に議論する時期にきている。今回はそれらの状況を踏まえ、アメリカ、韓国、台湾及び日本から専門家を招き、各国におけるヘルスデータに関する現状と課題を取り上げて検討する場を提供することにした」と開催の趣旨を説明。その成果に期待感を示すとともに、次期世界医師会長として、今後の議論に資するため、WMAに会議の成果を報告する考えを示した。
 引き続き、情報担当の石川広己常任理事並びに自見はなこ参議院議員を共同座長として、基調講演と四つの講演が行われた。

170605h2.jpg 「日本におけるヘルスデータベース利用の現状と関連法制度」と題する基調講演を行った山本隆一医療情報システム開発センター理事長/自治医科大学客員教授は、ナショナルデータベースや医療情報データベース、バイオバンクの構築など、昨今の日本におけるヘルスデータを巡る動きを紹介。その運用に当たっては、プライバシーを守ることが最重要課題であるが、そのためには法整備、倫理綱領が必要になるとした。
 また、関連する法制度として、本年5月に施行された改正個人情報保護法について言及。改正前は、「罰則が軽い」「個人情報の定義が不明確」などの問題があったが、改正により、国民が安心できるものとなる一方、将来の医療のために個人の健康情報を使うことができなくなる恐れがあったことから、公益利用を促進するために次世代医療基盤法が制定されることになったと説明した。

170605h3.jpg 講演1「データベースとバイオバンクがもたらす健康改善:期待と落とし穴」では、ロバート・ワー元アメリカ医師会長が、アメリカで行われている100万人の市民並びに退役軍人から、個人情報、血液及び体液を集める二つのプログラムを紹介。その成果に期待を寄せるとともに、医療データが盗まれるなどの危険性もあり、患者により良いケアを提供していくためにも、セキュリティを高めることがますます重要になっているとした。

170605h4.jpg 講演2「個人ビックデータ:ゲノムと医療記録」では、ジュ・ハン・キム ソウル国立大学医学部教授が、多くの情報が含まれているゲノム情報は分散して管理すべきとした上で、自身が作成した情報管理システム「Health Avatar」を紹介。患者に情報を送ることも可能であるため、治療方針を患者と共に決定することができるなどのメリットがあるとした。

170605h5.jpg 講演3「台湾健康情報ネットワークと健康クラウドの発展」では、ヘン・シュエン・チェン国立台湾大学医学部准教授が、台湾における国民健康情報ネットワーク構築の進捗状況を報告。「高齢化の進展が深刻な問題となる中で、将来的には普遍的な保健医療を提供できるよう、家庭医を中心とした包括的なシステムの構築を進めていきたい」と述べた。

170605h6.jpg 講演4「ヘルス・データの活用と保護:今何をなすべきか」では、樋口範雄武蔵野大学法学部特任教授が、改正個人情報保護法について、個人情報の保護に重点が置かれ過ぎていることを憂慮。次世代医療基盤法も成立したが、それだけでは不十分だとして、公衆衛生、医療研究のための個人情報の利用は、改正法の適用とはならないことを明確にすべきとした。
 また、日医の主導により、これらの課題に対するガイドラインを作成するとともに、研修会を開催する必要があるとの考えを示した。

170605h7.jpg 指定発言を行ったドン・チュン・シン延世大学医学部教授は、当日行われた5つの講演を振り返った上で、日本の現状について、「個人情報保護法と次世代医療基盤法という相反する二つの法律があるからこそ、日本では法による個人情報の保護ができていると言え、そういった意味において、日本はヘルスデータベースを推進する準備ができている」と指摘した。
 最後に、松原謙二副会長が、「ビックデータをうまく利用することができれば大きな成果を生み出すことができる。今回の議論を踏まえ、個人情報を守りながら、その活用を進めていきたい」と閉会の辞を述べ、会議は終了となった。

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