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平成29年(2017年)7月5日(水) / プレスリリース / 日医ニュース

「経済財政運営と改革の基本方針2017」「未来投資戦略2017」の閣議決定を受けて日医の見解を公表

 日医は6月9日、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる「骨太の方針2017」)、「未来投資戦略2017」が閣議決定されたことを受けて、同日付で横倉義武会長名による見解を公表した。
 見解の中では、国民が必要とする医療・介護を中心とした社会保障について、国はしっかりと適切な財源を確保すべきと指摘した上で、「いわゆる参照価格制度」「タスクシフティング、タスクシェアリング」「受動喫煙」「遠隔診療」などについて日医の考えを説明。その上で、今後については、「国民の安全な医療に資する政策か」「公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か」という判断基準の下に、日医としての考えを毅然と主張し、国民が必要とする医療を安心して受けられるよう、最善を尽くすとの考えを示した(以下、全文)。

日医の見解

 2017年6月9日、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる「骨太の方針2017」)、「未来投資戦略2017」が閣議決定されました。
 日本国憲法第25条では、
 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
と定めています。
 現在、わが国では厳しい財政状況を是正するために、「骨太の方針」などに基づいた予算編成が行われていますが、憲法に基づき、国民が必要とする医療・介護を中心とした社会保障について、国はしっかりと適切な財源を確保すべきです。
 まず、「骨太の方針2017」についてですが、第1に、6月2日に示された素案では、いわゆる参照価格制度の記述がありました。
 いわゆる参照価格制度の導入につきましては、社会保障審議会医療保険部会や中医協を始めとする関係審議会で慎重に議論を行う必要があり、併せて政府の成長戦略も勘案することが重要であることから、自由民主党厚生労働部会を始めとする自民党内の良識ある判断等によって最終的に削除されたことは、高く評価したいと思います。
 日医は、今後もこうした提言がなされることがないよう、強く求めて参ります。
 第2に、素案では「看護師の行う特定行為の範囲の拡大などタスクシフティング、タスクシェアリングを推進する」とありましたが、この点についても、自民党内の良識ある判断等によって、最終的には「看護師の行う特定行為の範囲の拡大など十分な議論を行った上で、タスクシフティング(業務の移管)、タスクシェアリング(業務の共同化)を推進する」と、「十分な議論を行った上で」が加筆されました。
 看護師の行う特定行為の範囲の拡大などについては、医療安全や医療の質の向上の視点に立ち十分かつ慎重に議論することが必要と考えます。
 第3に、今回の「骨太の方針2017」に記載はありませんが、経済財政諮問会議における議論では、民間議員から「かかりつけ医の普及が課題となっており、総合診療専門医との関係も含め、定義を明確にしていく必要がある」という資料の提出もあったようですが、日医では、かかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義しています。
 日医は、わが国の特徴であるフリーアクセスを守りつつ、大病院と中小病院・診療所の外来機能の分化・連携の推進について、引き続き検討を進めるとともに、かかりつけ医機能の評価を高め、更なる普及と定着を図って参ります。
 第4に、「健康増進の観点から受動喫煙対策を徹底する」とされました。現在、日医では、非喫煙者、特に働く若い人を受動喫煙による健康被害から完全に守るために、「国民の健康を守る専門家集団」として、国民の健康を第一に考え、例外規定や特例を設けることなく受動喫煙の防止対策を強化・実現するための署名活動を行っておりますが、今後も受動喫煙の防止に向けた活動を更に進めて参ります。
 今回、「未来投資戦略2017」も閣議決定されましたが、未来投資会議に出席し、日医の考え方を度々説明するとともに、未来投資会議の下に設置された構造改革徹底推進会合における議論では、日医から今村聡副会長、石川広己・鈴木邦彦両常任理事も出席し、会議の場で積極的に意見を述べて参りました。
 「未来投資戦略2017」等において、遠隔診療について触れられています。
 診療は対面が原則であり、遠隔診療はあくまで補完的な役割であることから、初診は必ず対面診療とすべきです。
 一方、長期処方の問題として、患者が自己判断で服薬を中止するなどして容態の変化に気づくのが遅れたことや、薬剤による健康障害などのケースもあることから、そのような問題の解決策として、かかりつけ医がICTを活用して経過観察や指導を行う遠隔診療は有効であると考えます。
 診療報酬上の評価については、現在、「電話・テレビ画像等による再診」が認められており、その評価を参考にし、中医協で議論すべきです。
 その際、遠隔診療充実のための財源は、財政中立ではなく、政府の成長戦略として別途手当てが必要です。
 今後は今回の閣議決定を受けて、各省庁で概算要求要望に向けた議論が本格化しますが、「国民の安全な医療に資する政策か」「公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か」という判断基準の下に、日医としての考えを毅然と主張し、国民が必要とする医療を安心して受けられるよう、最善を尽くして参ります。

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