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平成29年(2017年)6月20日(火) / 日医ニュース

かかりつけ医機能の更なる充実・強化を目指して

かかりつけ医機能の更なる充実・強化を目指して

かかりつけ医機能の更なる充実・強化を目指して

 「日医かかりつけ医機能研修制度平成29年度応用研修会」が5月28日、日医会館大講堂で開催された。
 日医では、今後の更なる少子高齢社会を見据え、地域住民から信頼される「かかりつけ医機能」のあるべき姿を評価し、その能力を維持・向上するために、昨年4月より、都道府県医師会を実施主体とした「日医かかりつけ医機能研修制度」を開始している。
 当日は、日医会館で239名が受講。44都道府県が接続したテレビ会議システムでの受講には、事前に約6,900名の申し込みがあった。

 研修会は鈴木邦彦常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、昨年度の本研修制度応用研修会の受講者数は全国で延べ9391名となり、そのうち1195名が修了要件を満たし、各都道府県医師会の認定かかりつけ医として認定証並びに修了証書を取得したことを報告。「制度開始初年度であったにもかかわらず大変多くの先生方に本研修制度を受講して頂いた。かかりつけ医こそがわが国の超高齢社会を支えていくという使命感に基づき、行動されているものと考えている」と述べるとともに、日医としても、かかりつけ医機能の評価を高め、更なる普及と定着を図っていくとの姿勢を示した。
 横倉会長のあいさつに引き続き、6題の講義が行われた。
 講義1「かかりつけ医の質・医療安全」では、新田國夫医療法人社団つくし会理事長が、カナダで行われている家庭医の自発的な自己省察の例として、①患者中心性②公平・公正性③適時性と近接性④安全性⑤効果的な診療⑥効率性⑦統合ケアと継続性⑧適切な診療所リソース―の観点から、質の改善のための計画を立て、小さな規模から実施し、フィードバックを得て評価、改善するPDSA(Plan-Do-Study-Act)サイクルを紹介。患者や利用者を巻き込み、多職種でチームを構成させることで、継続的な質改善の文化が醸成されているとするとともに、「日本のかかりつけ医の質を考える上でも共通事項が多く、参考になる」と述べた。
 また、川﨑志保理順天堂大学医学部心臓血管外科学・病院管理学先任准教授は、大学病院における経験を踏まえて、医療安全は、「医療安全管理」「感染対策」「職員の健康管理」の3要素が全て充実して初めて成り立つものであり、これらの部署を取りまとめる上部組織として「医療安全推進部」を設置して一元的管理を図ることが有効だと解説。
 医師1人、看護師1人など少人数の診療所であっても、部門と部署の省略はせず、兼任という形でそれぞれの要素を残しての対応が医療安全につながるとし、「管理者からの一方的な通達にならないよう、多職種にわたりリスクマネジャーを置き、現場からの意見を吸い上げて欲しい」と述べた。
 講義2「認知症」では、粟田主一地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム研究部長が、認知症の一般的特徴として、「脳の病的変化―認知機能障害―生活障害」の連結によって、さまざまな精神的・身体的・社会的な健康問題が現れ、それらが悪循環を形成して臨床像の全体を複雑化させることに留意が必要であると指摘。
 認知症とせん妄・うつ病との違いを説明した上で、「かかりつけ医には日常診療において早期に認知症に気づき、認知症疾患医療センターや地域包括支援センター等と連携しながら、家族や地域とのつながりの中で長期にわたるパートナーシップを築くことが求められる」とした。
 講義3「フレイル予防、高齢者総合的機能評価(CGA)・老年症候群」では、飯島勝矢東京大学高齢社会総合研究機構教授が、「フレイル」(虚弱)という概念には、適切な介入によって再び健康な状態に戻り得る可逆性が含まれている点を強調した。
 フレイルの最大の要因であるサルコペニア(筋肉減少症)を予防する大切さを訴えるとともに、「身体的フレイル」だけでなく、うつや認知機能低下などの「心理的/認知的フレイル」、閉じこもりや独居、経済的困窮などの「社会的フレイル」など、多面的なフレイルに対し、医学的視点とケア的視点から、早期のマネジメントを行うべきであるとした。
 講義4「かかりつけ医のリハビリテーション」では、堀田富士子東京都リハビリテーション病院医療福祉連携室長が、かかりつけ医のリハビリテーション(以下、リハビリ)の目標は、新たな障害の発生予防とQOL向上であり、実際の生活機能を確認し、介護予防事業を利用するよう働き掛けることや、リハビリ専門職と連携して地域でリハビリを実践することが重要とした。
 また、かかりつけ医には、身体機能障害や生活機能障害の有無に関する医療的判断の整理と、患者の意欲をサポートすることが求められるとして、予防、回復期、終末期のリハビリなどを紹介。リハビリ専門職の活用とともに、かかりつけ医には、リハビリを推進できる介護福祉の人材育成も担い、障害者・高齢者の健康を支えて欲しいと要望した。
 講義5「かかりつけ医の在宅医療・緩和医療」では、和田忠志医療法人社団実幸会いらはら診療所在宅医療部長が、在宅医療は身体診察で多くのことを判断するため、家族からの情報聴取が鍵になると指摘。急性期医療の代表的疾患として、①肺炎を含む感染症②褥瘡(じょくそう)③転倒と骨折―への対応について解説し、「骨折において、侵襲的治療実施の是非に関しては、患者の年齢、活動性、認知症の有無、患者や家族の価値観などを総合的に勘案し、かかりつけ医が判断することが望ましい」と述べた。
 また、木村琢磨北里大学医学部総合診療医学・地域総合医療学准教授が、慢性期のケアでは、まず、患者の生活環境を認識し、次に、家族・介護者との関係を構築することが基盤になると強調。在宅緩和ケアに関しては、疼痛はtotal pain(身体的・社会的・精神的・霊的な痛み)としてとらえ、グリーフケアを含む家族ケアを行うべきであるとし、「病院医療を持ち込むことではない点を踏まえつつ、多職種と協働して、在宅看取りも念頭においたケアを提供すべきである」と述べた。
 更に、がん患者と非がん患者の予後予測に触れ、緩和ケアに当たり、終末期における各疾患の経過の大まかな理解が有用であるとした。
 講義6「症例検討」では、草場鉄周医療法人北海道家庭医療学センター理事長が、外来診療に通院している患者の身体あるいは認知面での虚弱性が増大したケースを紹介。医学的介入だけではなく、生活環境・生活機能へも介入するためには介護サービスを導入し、主治医意見書の作成においては現状の課題と必要な介護サービスを具体的に記載することが大切だとした。
 また、サービス担当者会議に積極的に参加して、介護必要度の増加に直結する患者の病態の変化について情報提供することも重要であるとし、医療・介護連携のハブ機能を果たすことが、かかりつけ医に求められるとした。
 一方、鈴木陽一板橋区役所前診療所副院長は、急な入院で重大な疾病を告知されたものの、介護保険の認定も受けておらず、老老世帯で介護力が不足する状況において在宅医療を始めることとなった後期高齢者のケースを紹介。事前の準備として、①病院医師より現在の病状に関する情報を得る②退院後の医療方針について病院医師と相談する③本人と家族の考えを知る④住居、食事、入浴など、退院までに解決しておくべき事柄について対策を立てる―ことなどを挙げ、訪問看護、訪問リハビリの他、薬剤師の訪問による薬学的管理指導、管理栄養士の訪問による栄養指導なども活用したことを説明した。
 最後に閉会のあいさつを行った中川俊男副会長は、長時間にわたる本研修会への参加に謝意を示すとともに、「かかりつけ医については、国の審議会を始め、さまざまなところで議論されているが、日医としては、現場の先生方が地域においてかかりつけ医機能を存分に発揮できるよう、対応していきたい」と総括した。

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