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平成29年(2017年)7月5日(水) / 日医ニュース / 解説コーナー

改正個人情報保護法の全面施行を受けた医療機関における留意点について

改正個人情報保護法の全面施行を受けた医療機関における留意点について

改正個人情報保護法の全面施行を受けた医療機関における留意点について

 本年5月30日から新しい個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律)が全面施行された。平成15年に同法が制定(全面施行は同17年)されて以来、初めての本格的な改正となる。
 医療機関では、患者の健康状態や治療内容、家族の病歴などに関する情報を日常的に扱うことから、立法当初から個人情報の取り扱いには細心の注意を払うことが求められていた。
 今号では、同法の改正に際して、特に医療機関として注意すべき点や、今後の日医における取り組みの予定などについて、今村定臣常任理事に説明してもらった。

Qまず、改正のポイントを教えて下さい

A今回の改正では、「個人識別符号」や「要配慮個人情報」などの新しい用語が加わり、少し分かりにくい法律になった印象を受けますが、これまで個人情報保護法に基づいて確実な対応をされてきた医療機関にとっては、大きな対応の変更を迫られるものではありません。
 改正の要点としては、今までは法律上の義務などが適用されるのは、5000件を超える個人情報を取り扱う事業者に限られていましたが、今回の改正でこの制限が撤廃されましたので、小規模の診療所なども含めて、全ての事業者が法律の適用対象になったということが挙げられます。
 また、不正な利益を得る目的で個人情報を盗むなどした者に対しては、従業者や元従業者も含めて刑事罰(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されるようになったことも重要な改正点です。
 なお、これまで個人情報保護に関する施策は、医療・介護分野は厚生労働省、金融分野は金融庁というように、事業分野ごとに担当する省庁が分かれていましたが、昨年、新たに個人情報保護委員会が設置されました。今後は、基本的には同委員会が全分野にわたる個人情報保護に関する施策を所管することになります。

Qなぜ今回の改正に至ったのですか

Aいろいろな背景がありますが、まず、顔認証のデータ等、これまでの「個人情報」の定義に当てはまるかどうか明らかではない形式のデータが出現してきたことや近年のビッグデータの利活用の進展によって、これまでの個人情報保護に係る制度では現代の社会環境に対応し切れなくなってしまったことが挙げられます。
 一方で、これまでの個人情報保護法については、大量の個人情報が故意に盗み取られる事件や名簿情報が不正に売買される行為などを防ぐための有効な手立てが用意されていなかったことも、問題点として指摘されていました。

Q医療機関として今回の改正で特に気をつけることは何ですか

A繰り返しになりますが、これまで個人情報保護法に従って取り組みをされてきた医療機関では、今回の法改正のために大きく対応を変える必要はないと考えています。
 日医では、個人情報保護法が最初に施行された当時、個人情報の利用目的などを記した院内掲示用のポスター(別掲)などを作成いたしましたが、今回の改正に際しても、従来の法律に則った取り組みをされてきた医療機関に、これを継続して頂くことを前提に、医療現場に無用な混乱を招かないよう、当局とも協議を重ねて参りました。
 先ほど申し上げた、5000件以下の個人情報を扱う医療機関についても、日医では、医療機関の規模を問わず、全て同様の取り組みをして頂くようこれまでお願いをして参りましたが、もし、これまで対応をされてこなかった場合には、今回の改正法の施行を機に、今すぐ取り組みを始めて頂くようお願いいたします。
 改正法の施行に併せて、さまざまなガイドラインや規則、通知などが示されていますが、医療・介護分野における取り組みを確認する際には、差し当たっては、個人情報保護委員会が公表した「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」と「同ガイダンスに関するQ&A(事例集)」の二つをご覧頂きたいと思います。
 なお、「同ガイダンス」は、従来、厚労省から「ガイドライン」として示されていたものと趣旨は同じですが、今改正から、法律に沿って現場の実務に当てはめた際の留意点や事例をまとめたものを「ガイダンス」と名付けるよう整理されています。

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Q本人に対する「開示」などについて変更点はありますか

A個人情報の保護においては、情報の主体である本人が自分に関する情報の内容を知りたい場合、情報の開示を受け、あるいはその内容が事実と異なる場合には、訂正を求める機会も保証されなくてはなりません。
 これまでの法律でも、それらの求めを受けた事業者は原則としてこれに応じる義務があると定められていましたが、今回の改正では、本人には、開示、訂正、削除などについて「請求することができる」という明確な規定が加えられています。
 もちろん、医療・介護関係事業者は、これらの請求を受けた場合には、個々の患者の置かれた状況を慎重に検討した上で、事例ごとに適切な対応をとるよう判断すべきであることは、これまでと変わりません。
 また、これも従来どおりですが、日常診療の場面での患者への情報提供については、日医の『診療情報の提供に関する指針(第2版)』も併せてご参照頂きたいと思います。

Q日医の今後の取り組みについて教えて下さい

A日医では、平成18年10月に『診療に関する個人情報の取扱い指針 第1版』を作成し、全会員に配布いたしました。この指針の中で述べられている考え方や留意点は、基本的に改正個人情報保護法の下でも通用する内容と言えますが、冒頭でお話ししたように、改正法で盛り込まれたいくつかの用語や概念については、新たな解説が必要な項目もあることから、できるだけ早く改訂版を提供したいと考えています。
 また、個人情報保護委員会、厚労省など関係当局とも連携を緊密にして、これまで以上に、診療情報の保護と円滑な利用が促進される環境づくりに努めて参ります。
 会員の先生方におかれましても、これまで講じられてきた個人情報保護対策を、いま一度、診療現場のスタッフと共に点検され、患者とその家族に安心して受診して頂けるよう、一層の取り組みをお願いいたします。

今回のインタビューのポイント
  • これまで、個人情報保護法に従って取り組みをしてきた医療機関では、今回の法改正のために大きく対応を変える必要はない。
  • 日医では、平成18年10月に作成した「診療に関する個人情報の取扱い指針 第1版」の改訂版をできるだけ早期に提供する予定としている。
  • これまで講じられてきた個人情報保護対策を、いま一度、診療現場のスタッフと共に点検し、一層の取り組みをお願いしたい。

※参考
 個人情報保護委員会 医療関連分野ガイダンスなど
 (https://www.ppc.go.jp/personal/legal/guidelines/

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