閉じる

平成29年(2017年)8月5日(土) / 日医ニュース / 解説コーナー

平成29年医療法改正における五つのポイント

平成29年医療法改正における五つのポイント

平成29年医療法改正における五つのポイント

 「医療法等の一部を改正する法律」が、先の通常国会で成立した。
 今号では、地域医療担当として社会保障審議会医療部会での審議にも参加している釜萢敏常任理事に、改正のポイント等について解説してもらった。

 今回の主な改正のポイントとしては、(1)特定機能病院のガバナンス改革に関する規定が創設された、(2)「持分なし医療法人」への移行計画の認定制度の延長及び認定医療法人への贈与税非課税要件が大幅に緩和された、(3)医療機関開設者に対する監督規定が整備された、(4)検体検査の品質・精度管理に関する規定が創設された、(5)医療機関のウェブサイトなどにおける虚偽・誇大などの表示規制が創設された―ことなどが挙げられます。
 そこで、各項目の概要を説明したいと思います。

各医療機関の現在のウェブサイトへの影響は少ない

 (1)が創設された背景としては、複数の特定機能病院である大学病院本院において、残念なことに重大な死亡事故が発生し、その事故の要因として、医療安全に関する病院のガバナンス不足が挙げられたことがあります。
 そのため、今回の改正では、特定機能病院の組織運営体制を決定するプロセスの見直しが行われました。
 具体的には、特定機能病院においては、より一層高度な医療安全管理体制の確保が必要であることを明確に示すため、その承認要件に「医療の高度の安全を確保する能力を有すること」を追加することとしました。
 また、特定機能病院の開設者に対しては、①医療安全管理体制の確保その他の特定機能病院の管理運営業務の遂行に必要な能力及び経験を有する者を管理者に就任させるよう、その選任に当たっては、外部の者を含めた選考のための合議体を設置して審査を行い、その結果を踏まえて行う②管理者が病院の管理運営業務を遂行するために必要な権限を明確化し、医療安全に関する監査委員会を設置する―ことなどを、一方、管理者に対しては、管理運営業務のうち重要な事項については、合議体(病院に勤務する医師、歯科医師、薬剤師、看護師などで構成)の決議に基づき遂行することなどを、それぞれ義務づけることにしました。
 (2)についてですが、厚生労働省は現在、期限付きで「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への移行の促進措置(認定医療法人制度)を設けています。
 しかし、同族要件(役員のうち同族が3分の1以下)や理事・監事の人数等の厳格な要件を満たさなければ、医療法人に贈与税がかかる可能性があり、あまり利用されてきませんでした。
 そのため、日医からその点を指摘し働き掛けた結果、今回、認定期間を3年間延長するとともに、移行計画の認定要件に「運営の適正性要件」を加えることで、これまで高いハードルだった贈与税非課税の要件が大幅に緩和されることになりました。「運営の適正性要件」は、今後、厚労省令で示される見込みです。
 ただし、贈与税を非課税とするためには、移行後6年間認定要件を維持していることを確認する必要があります。
 (3)についてですが、現在、医療法には、病院や診療所の施設自体への立入検査や開設許可取り消し等に関する規定はありますが、その開設者の事務所等に対する立入検査、開設者への業務改善命令やそれに従わない場合の業務停止命令などの規定は、医療法人を除いてありませんでした。
 そのため、一般社団法人、一般財団法人など医療法人以外の病院診療所の開設者に対しても、医療法人と同様の監督規定を設けることにしたものです。
 次に、(4)ですが、これは医療機関が外部委託ではなく、自ら行う検体検査について、品質・精度管理に係る基準を定めるための根拠規定を設けるためなどに行われたものです。
 今後は、医療機関の現状を踏まえた基準とするため、厚労省内に別途設けた検討会において、厚生労働科学研究の研究班が取りまとめた基準案を基に議論が行われることになっています。
 最後に、(5)ですが、医療機関の広告規制の考え方を見直し、医療機関のウェブサイトなども広告規制の対象に含めた上で、虚偽・誇大などの表示をした場合については、是正命令や罰則付与を行うことを可能とするものです。
 ウェブサイトを広告規制の対象とするに当たっては、現行の規制(定められた事項のみ広告可能)を適用した場合には必要な情報が得られなくなることが懸念されたことから、この広告可能事項の限定を解除する仕組みも合わせて盛り込まれています。
 大変残念なことですが、今回の改正は、一部の医療機関で行き過ぎた広告が作成され、消費者トラブルが増加し、国の消費者委員会から建議が出される事態にまで至ったことを踏まえて行うこととなりました。
 具体的には、他の医療機関より優れていることをアピールするような比較広告、誇大広告、公序良俗に反するような広告は禁止されます。広告可能事項の限定規制を解除するための要件などは、別途検討会での議論を踏まえ、省令で定められることになっています。
 わずかな悪質事例を除き、各医療機関の現在のウェブサイトが、法改正の影響を受けることは少ないと考えています。

特定機能病院には法令順守と安全管理体制の強化を望む

 これらの改正内容は、関係検討会等での検討を踏まえて、中川俊男副会長と共に委員として出席している厚労省の社会保障審議会医療部会で議論が行われました。
 議論の中では、とりわけ特定機能病院における医療安全の確保に力が注がれました。今回の法改正に先立って見直された医療法施行規則では、医療安全管理部門に専従の医師等を配置することなども定められました。
 厳しい制度改正ですが、国民の医療への信用がかかっていますので、特定機能病院におかれましては、法令順守と安全管理体制の強化に努めて頂きたいと思います。
 また、医療機関のウェブサイトへの規制強化につきましては、医療の信用に関わる問題でありますので、適切に運用される必要があると考えています。
 認定医療法人制度の期限延長等については、日医としても政府に要望してきたことであり、それが実現したことは大変評価しています。
 今回改正された医療法は、公布日施行の認定医療法人制度の期限延長を始め、これから順次施行されていきます。また、5年後の見直しが明記されています。
 改正によって、医療現場に問題が起きた場合には、ぜひ、日医に情報をお寄せ頂ければと思います。
 今後も、会員の先生方からの医療現場の声を基に日医の政策を進めて参る所存でおりますので、引き続きのご支援・ご協力をお願い申し上げます。

今回のインタビューのポイント
  • 今回の改正のポイントは5つあり、改正に当たっては、主に特定機能病院における医療安全の確保について議論が行われた。
  • ウェブサイトの広告規制が行われたが、わずかな悪質事例を除き、各医療機関の現在のウェブサイトが、法改正の影響を受けることは少ないと考えている。
  • 認定医療法人制度の期限延長及び贈与税非課税要件の緩和については、日医としても政府に要望してきたことであり、それが実現したことは大変評価している。
  • 5年後の見直しが明記されており、改正によって、医療現場に問題が起きた場合には、日医に情報を提供して欲しい。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる