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平成29年(2017年)11月5日(日) / 日医ニュース

パラサイト(parasite)

 海外に行くと、「勝手に病院見学」を行うことがある。正式な視察見学と異なり、その地域の医療事情が有りのままに見えて面白く、幸い咎(とが)められることもなかった。
 今回のターゲットは、ポルトガルのリスボンで見つけた少々古いが、ほぼ全科を有する中規模病院。
 まずは、何食わぬ顔で玄関ホールへ。朝から満員だが、酸素ボンベを背負い、車椅子でも陽気な雰囲気に満ちているのはお国柄か。
 次に環境チェック。受診者の動線は難解だが案内人が付く。清掃の行き届いた共有部分は素晴らしいが、なぜか、あちこちに血の付いた酒精綿のくず入れ、開け放した診察室や処置室。うーむ、なるほど......。
 歩き回るだけでは怪しまれるので椅子に座ると、隣の老婦人が英語で話しかけてきた。「あなた、どこから来たの?」から始まり、次に「で、何の病気?」と聞かれて一瞬、言葉に窮したら、突然「分かった! あなた、パラサイトでしょ!」と言うや否や、腕を摑(つか)んで病院職員のところに引っ張って行く。
 あ〜困った。初めて、捕まった。でも「寄生虫!?」って、何だろう? ちょっとヒドくない? と、しょげていたら職員は、「あら、迷子の日本人ね」と優しく出口に導いた。
 現地ガイド氏によると、かの地ではパラサイトを寄生生物だけでなく、迷入/迷子などの意味に転用することがあると言う。
 もちろん日本の英和辞典にはない用法。しかしガイド氏は、小さな声で付け加えた。「最近では失業中の若者が、手厚い年金で生活する高齢者に対して陰で使うこともあります。穏やかなポルトガル社会にも年代の収入格差が広がってきました」と。

(美)

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