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平成29年(2017年)11月20日(月) / 日医ニュース

医療的ケア児を支援するため初開催~福祉関係者も交えて~

医療的ケア児を支援するため初開催~福祉関係者も交えて~

医療的ケア児を支援するため初開催~福祉関係者も交えて~

 平成29年度都道府県医師会小児在宅ケア担当理事連絡協議会が10月18日、日医会館大講堂で開催された。
 松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、「現在、全国には在宅で医療的ケアを受けながら療養している子ども達が約1万7000人いる。これまでの在宅ケアは高齢者が中心であったが、地域包括ケアシステムの一環として、小児にも対応すべきである」と述べ、初開催となる本連絡協議会の趣旨を説明。昨年度には会内に小児在宅ケア検討委員会を設置して検討を進めていることに触れ、「小児の在宅ケアに関しては、医療だけでなく、福祉、保育・教育などさまざまな関係者が連携して支援していくことが重要であり、医師会と行政との連携も欠かせない」として協力を求めた。

小児在宅ケアを巡る現状と課題

 田村正徳埼玉医科大学総合医療センター小児医療センター長は「総論」として、出生数が減少傾向にある中で、1500グラム未満の極低出生体重児が増加しており、特に1000グラム未満の超低出生体重児は35年間で約2倍に増加したことを解説。NICUに1年以上の長期入院をしたり、入院1年未満に人工呼吸管理のまま退院する子どもが右肩上がりであるとした。
 また、小児在宅医療の患者の多くは、病院主治医がケアマネジメントしており、緊急時の安全弁になっているものの、患者家族の生活や福祉制度に疎い面があると述べた。
 前田浩利医療法人財団はるたか会理事長は「在宅医の立場から」として、数分間も目を離せない医療依存度の高い子どものケアで疲弊している親の状態に触れた上で、地域における医療・生活支援につなげるためのケアマネジャー的存在が不足していると強調。また、重度の肢体不自由・知的障害を前提とした「重症心身障害児」に当てはまらない、"歩けて話せるが、日常的に医療機器と医療的ケアが必要な子ども"が増えているとし、障害福祉制度の支援からもれていることを指摘した。
 福岡寿日本相談支援専門員協会顧問は「相談支援専門員の立場から」として、相談支援専門員の活動の様子を動画で紹介した上で、サービスの支給決定に当たり、特定相談支援事業者に作成が義務づけられた「サービス等利用計画(障害児支援利用計画)」について、対応に地域格差があることに言及。支給決定後の計画のモニタリングが十分でない地域があることや、医療的ケア児の計画作成を担える相談支援専門員が十分に育っていないことなどを課題に挙げた。

厚生労働省の対応

 三好圭厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室長は「児童福祉法の改正、障害児福祉計画等について」と題して講演。平成28年の児童福祉法等の改正により、障害児のサービス提供体制の計画的な構築のため、市町村と都道府県に「障害児福祉計画」の策定が義務づけられたことを概説した。
 人工呼吸器や胃ろうを使用する医療的ケア児の支援としては、「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」に、①平成32年度末までに、主に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所及び放課後等デイサービス事業所を各市町村に1カ所以上確保②平成30年度末までに、各都道府県・圏域・市町村に保健、医療、障害福祉、保育・教育等の関係機関等が連携するための協議の場を設置―することが盛り込まれているとした。
 松岡輝昌同医政局地域医療計画課在宅医療推進室長は「医療計画上の取り扱い、小児在宅医療人材養成事業等について」と題して講演。第7次医療計画の策定において、在宅医療提供体制の現状把握のため国が示している指標例の中に、「小児の訪問看護を実施している訪問看護事業所数」「小児の訪問看護利用者数」があるとして、都道府県での活用に期待を寄せた。
 また、在宅医療関連講師人材養成事業の中で、医師を対象とした小児向け在宅医療の人材育成プログラムの開発や中央研修を実施していると述べた。

医師会の取組み

 松本(吉)常任理事は「日本医師会の小児在宅ケアに関する取組みについて」として、小児在宅ケア検討委員会が本年4月に都道府県医師会に対して行った「小児在宅ケア提供体制に関する調査」の結果を紹介。①医師、訪問看護師等を対象とした小児在宅医療研修会が一部で開催されているが、全体として医師会の関与が少ない②医療的ケア児の支援のための関係者協議の場は半数以上の都道府県で設置されているが、構成メンバーに医師会が入っていないところもある―などの状況が明らかになったとした。
 今後の方向性については、小児科医は在宅医療に慣れていないことから、在宅医とペアを組むことや、地域の医師会がNICUから退院する小児と在宅医のマッチングを行うことなども考えられるとし、地域医師会にも積極的な参画を求めた。
 また、平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する厚労省のヒアリングで、重症心身障害児に当てはまらない医療的ケア児への支援の充実等を要望したことを報告した。
 中尾正俊大阪府医師会副会長は、府医師会として1992年から委員会を設置し、実態調査や小児在宅医療研修会の実施、医療的ケアマニュアルの発刊など、先駆的に取り組んでいることを紹介。今年の10月からは、地域医療介護総合確保基金を活用し、成人移行が近い患者を対象に、内科医等と小児科医による「同行訪問研修」をモデル的に実施していることを報告した。府医師会としては、引き続き専門医療機関や大学、小児科医会・内科医会との連携に努めるとともに、行政に対しては、重症心身障害児等の医療的ケア及び福祉の充実のため、縦割り行政に我々医師会が横串を刺すような役割を果たしていきたいとした。
 野田正治愛知県医師会理事は「愛知県における医療的ケアの必要な子どもたち 特に超重症児を外に連れ出す試みについて」と題し、屋外に出たことがない人工呼吸器をつけた子ども達などに大きなスクリーンで映画を見せる企画を実施していることを紹介。医師・看護師・理学療法士等からなる実行委員会の下、医学生も含め多数のボランティアが移動支援や付き添いを行い、ボランティアには医療的ケアも学んでもらうというもので、保護者には別室で交流する「パパママカフェ」を、その兄弟には思い切り遊べる場を、それぞれ提供しているとした。
 協議では、事前に寄せられた質問・要望や関連質問に厚労省の担当者や日医から回答するとともに、フロアを交えて質疑応答を行った。
 その中で、矢嶋茂裕岐阜県医師会常務理事が指定発言として、レスパイト支援や多職種にわたる人材育成など、岐阜県における小児在宅医療の取り組みを紹介した。
 最後に、中川俊男副会長が、「今後、保育・教育の現場で医療的ケア児の受け入れが進んでいく中で、園医や学校医としても、そうした子ども達への対応についてアドバイスを求められることになる。本日の連絡協議会を契機に、各地域でぜひ取り組みを進めて頂きたい」と総括した。参加者は152名。

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