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平成29年(2017年)12月5日(火) / 南から北から / 日医ニュース

Dr(ドクター)からDcr(ダンサー)ヘ

 今から、ちょうど7年前のことである。たまたま腹部CT撮影を受ける機会があって、結果は悪性腫瘍を疑うようなものは無かったのだが、内臓脂肪が、自分の予想を超えて蓄積していた。
 自分でも少しは腹黒さを自覚してはいるが、CTでも内臓は黒い脂肪組織で覆われて、腹の中真っ黒だったのである。
 そこで、スポーツジムに通うことにした。筋トレより、有酸素運動。ということで、エアロビクスのスタジオレッスンを受けることになった。
 初回は、いきなり肉離れを起こしたが、1年も続けたら徐々に慣れてきて、いろいろなステップができるようになってきた。でも何かエアロビクスは、動きが体操っぽくて、あまりかっこよくない。思えば、ダンスというのは20代のディスコ以来だ(そう、私はジュリアナでもマハラジャでもなく、ジョン・トラボルタのサタデーナイト・フィーバーの世代なのである)。
 次に、ZUMBAという名のラテンダンスエクササイズのクラスに入った。サルサだのサンバだののリズムで楽しく踊りながら、脂肪を燃焼させるエクササイズだ。
 これは本当に楽しくて、ストレス解消にもなるし、お腹も本当に引っ込む。そんなこんなで3年くらいZUMBAを続けた。
 でも何か違う。健康のためのダンスじゃなくて、人に見せられるような踊りがしたい。そんな野望を抱き、3年前からジャズダンスの教室で、ダンサーの先生より基礎の基礎から、レッスンを受けるようになった。
 体が固いだの、リズム感が悪いだの、バランスが悪いだの、いっぱいダメ出しを受けながら、ストレッチ、アイソレーション(個々の関節だけを動かすトレーニング)、バレエのプリエなどの地味な基本練習を繰り返している。
 長い振り付けを覚えられなくて、鏡で先生の動きをまねると、必ずワンテンポ遅れる。それにしても、女性の方は、かなりご年配でも、それなりに奇麗に踊られる。やっぱり中年のおじさんは、あきません。
 でも、ダンスを通じて、目と耳からの入力を視床を経由して大脳皮質で統合して、大脳基底核と小脳の調整を受けつつ、錐体路を下行しながら脊髄前角細胞から下位運動ニューロンを経て体幹、手足の筋肉に出力する過程(間違っていたらごめんなさい)が、脳の活性にいいかもなんて言い訳を考えてもいる(健康のためのダンスに戻っているじゃないか)。
 いよいよ今年は還暦を迎える。「どうせ死ぬ身の一踊り」という言葉があるが、残りの人生、あと、一踊りも二踊りもしたいともくろんでいる。
 自分は、開業医の三代目で、兄と一緒に長く仕事をしている。おまけに日本人の魂も持ち合わせている。だからと言って三代目 J Soul Brothersを名乗るのは、少し無理がありそうだ。

滋賀県 滋賀県医師会報 第826号より

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