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平成30年(2018年)3月20日(火) / 日医ニュース

新専門医制度と医師の働き方改革

勤務医のページ

 本年4月から新専門医制度が開始されることになっている。既に一次登録は終了し、二次登録を待つばかりであるが、おおむね8300名程度が新専門医制度の「専攻医」となると想定されている。
 新専門医制度については、専攻医の都市部への集中によって、地域医療への影響が懸念されたため、5都府県の14の基本領域については、過去5年間の採用実績を超えないことが条件とされた。現時点では正確な数字が公表されていないものの、ある程度予想された結果となった。
 新専門医制度では、地域偏在を解消する対策を講じたにもかかわらず、都道府県格差あるいは診療科間の格差はむしろ広がっており、地域偏在の流れを食い止めるどころか更に加速させるような勢いであると指摘する声も聞かれる。
 一次の登録数で言えば、あくまでも基幹施設への登録数であるが、内科においては東京が520名であるのに対して、高知県5名、宮崎県9名、福井県11名、島根県12名であったという。
 小児科では徳島県、佐賀県において希望者がなく、岩手県、山形県、富山県、山梨県も希望者が1名しかいないという。産婦人科においても、たった1名しか希望者がいない県が、7県もある(岩手県、福井県、鳥取県、徳島県、香川県、大分県、宮崎県)。
 いずれにしても重要なことは、現在に至るまで、地域において使命感を持って、地域医療を担いながら研修医教育に情熱を傾けてくれた指導医達の士気を奪ってはならないことである。
 今回の新専門医制度では、施設基準のハードルが上がり、初期臨床研修病院であっても基幹病院とはなれず、後期研修医を採用できなくなる医療機関が思いの外多いことも問題点として挙げられている。後期研修医を採用できなかった病院では有能な「指導医」のモチベーションが低下することは、想像に難くないからである。
 地域の中小病院が都会の基幹施設の連携施設となっても、常時専攻医の派遣を受けられる担保がなく、このことは地域医療を支える医師の確保に多大な影響が生じることを意味している。
 加えて、専門医の資格取得を念頭に初期臨床研修病院を選ぶことが想定されるため、基幹施設になれない地方の病院は、これまで研修医を十分に育成していた病院であったとしても、研修医が確保できないといった事態も十分に考えられるのである。
 専攻医数が極めて少なくなった県における地域偏在の解消策として、厚生労働省が検討しているのが医師少数区域への医師派遣制度である。
 この施策に対しては、当然、医療界から「医師の自由を損なう」といった異論が噴出しているが、地域医療をいかにして守るのか、国民的な議論の必要性が叫ばれていることは間違いないだろう。
 また、厚労省からは、「医師少数区域」での一定期間以上の勤務経験を有する医師を同省が認定し、認定医師であることを広告可能とすることや、地域医療支援病院などの病院の管理者になる際に評価することなどが提案されているという。
 この問題に関して日医では、医師の地域偏在など、地域医療への影響が明らかになった場合、都道府県協議会の議論を踏まえて対応していく必要性を強調するとともに、日本専門医機構との連携を一層強化し、対応する方針を掲げ、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」の「医師需給分科会」において、実効性のある具体策が検討されるよう主張していくとしている。
 一方、ここにきて全国の基幹病院への労働基準監督署の立ち入り調査が増えているとの指摘もあり、「医師の働き方改革」が話題になっている。医師も労働者として捉える風潮が一般的になり、多くの病院で「工夫を凝らしながら」これらを実践している現状がある。
 研修医の労働上の身分は各病院によってさまざまであるが、2年の有期契約職員としている例が多く、当然のことながら、労働者としての勤務体制が順守されている場合が多い。
 午後5時以降はカンファレンスや抄読会を行わなくなったり、患者さんへの病状説明も日中に行うなど、勤務時間外の研修医の業務は以前に比べ格段に軽減している。
 一方、指導医であっても、勤務時間の制限については当然配慮されるべきではあるものの、指導医クラスの医師が育ってきた文化的な背景から、研修医や専攻医のやり残した業務を肩代わりするといった風潮が常態化しているとの指摘もある。
 近年、「医師でなくてもできる仕事は、医師以外に移譲するタスクシフト」の実践が叫ばれてはいるものの、要員、経費、質の担保などの課題が多いことも事実である。
 まして研修医、専攻医共に減少した地方の中小病院における「働き方改革」は、タスクシフトするべき人材もいなければ、手当てする財源もなく、殊の外深刻である。
 機構側では、たとえ大学病院が基幹施設の場合でも、基本領域の研修期間である3年間全てを大学病院で研修するわけではなく、地方の症例数が豊富な連携施設に行くことも全く問題ないとしているが、それが医局人事になり、いわゆる「先祖返り」してしまい、地域ニーズと外れることになるのではないかとの懸念があることも事実である。
 全国の地域医療支援センターの実効性を高めることや、地域枠・地元出身枠の拡充、医師需給の「見える化」などは、長期的には医師の地域偏在の解消に貢献するものと思われるが、喫緊の課題としての地域医療体制の維持という面において、「新専門医制度」に加えて「医師の働き方改革」も含めて、国民的な議論を深めてもらいたいと痛感している。

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