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平成30年(2018年)4月5日(木) / 日医ニュース

平成30年度診療報酬改定の概要を説明

平成30年度診療報酬改定の概要を説明

平成30年度診療報酬改定の概要を説明

 都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会が、本年4月からの診療報酬の改定概要の説明と、その内容を伝達することを目的として、3月5日、日医会館大講堂で開催された。
 当日は、中川俊男副会長、中医協委員である今村聡副会長、松本純一・松本吉郎両常任理事から、資料を基に改定内容のポイント等について詳細な説明が行われた。

 冒頭のあいさつで横倉義武会長は、今回の改定について、「6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定であり、医療と介護の連携をしっかりつくっていくことを目指した改定であった」とした上で、改定の主なポイントとして、①外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の一層の評価②医療従事者の負担軽減と働き方改革の推進③医療と介護の同時改定④薬価制度の抜本改革⑤医療技術の適正評価⑥入院評価体系の見直し―の6点を明示。これらについて重要な対応が行われたとの見方を示すとともに、「2025年に向けて大きく人口構成が変わっていく中、必要な医療を提供していけるように引き続き取り組んでいきたい」と述べた。
 続いて、医療保険担当の松本(純)常任理事が、新規項目や点数要件が変更になった項目を中心に、改定概要を日医の動きも交えて説明した。
 同常任理事はまず、今回の改定は、「人生100年時代を見据えた社会の実現」「どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現(地域包括ケアシステムの構築)」「制度の安定性・持続可能性の確保と医療・介護現場の新たな働き方の推進」という基本認識の下、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」「新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実」「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」という基本的視点と具体的方向性に基づいて行われたとした。
 主な改定項目28項目(別表参照)については、中川・今村両副会長、松本(吉)常任理事が補足説明を交えながら解説した。
 (1)「外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の一層の推進」では、①地域包括診療加算・診療料、認知症地域包括診療加算・診療料(要件緩和・明確化・手続き簡略化・加算の新設)②小児かかりつけ診療料(要件緩和)③かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価④医師の基礎的な技術の再評価⑤大病院の外来機能分化の推進―等について説明。
 ①では、「改定ごとに評価の拡大や緩和を行ってきたが、今回は、日医の調査でも負担が大きいとされた『24時間対応』と『在宅医療の提供』について見直しを行うなど、更なる要件緩和を講じた上で、かかりつけ医機能を有する医療機関の初診の評価を行うことができた」とした。
 また、⑤では、「各種減額措置や加算により大病院から診療所、中小病院への外来患者の誘導策の実効性の向上を図るとともに、紹介状なしで受診した場合の定額負担の対象病院が拡大された。こうした外来機能分化の中で、かかりつけ医機能の普及に向けて今後の改定で更なる評価を求めていく」と述べた。
 (3)「情報通信機器を活用した診療」では、①オンライン診療料・オンライン医学管理料・オンライン在宅管理料の新設②ICTを利用した死亡診断における連携③遠隔モニタリング加算の新設等―などについて解説。今村副会長は、「へき地等の医療資源の乏しい地域のニーズに対応していく必要はあるが、オンライン診療が誤った形で拡大しないよう、緊急時におおむね30分以内に当該医療機関で診療可能な体制を有するなど、非常に厳しい要件とした上で保険適用された」として理解を求めた。
 (5)「医療と介護の同時改定」では、①介護医療院の創設への対応②国民の希望に応じた看取りの推進③特別養護老人ホーム等におけるターミナルケアの評価④訪問診療の主治医とケアマネジャーの連携強化⑤リハビリにおける医療・介護連携の推進⑥有床診療所の地域包括ケアモデル(医療・介護併用モデル)での運用の支援―等について説明。2025年に向けた道筋を示す、実質的に最後の同時改定である本改定の重要性を改めて強調した上で、①では、「平成29年度末で設置期限を迎える介護療養病床の経過措置が6年間延期されるのに合わせ、要介護者に長期療養のための医療と、日常生活上の支援を一体的に提供する介護医療院が創設され、本年4月から順次転換をしていけるようになり、これに合わせた診療報酬上の取り扱いが機能に応じて整理された」と述べた。
 また、退院時の医師と介護職の連携促進等が盛り込まれたことについては、「地域包括ケアシステム構築に向けて、きめ細やかな配慮がなされた」と評価した。
 (6)「医療従事者の負担軽減・働き方改革の推進」では、①医師等の従事者の常勤配置に関する要件緩和②専従要件の緩和③医療従事者の勤務環境改善の取り組みの推進④医師事務作業補助体制加算の見直し⑤看護職員と看護補助者との業務分担・共同の推進―等の内容を概説。松本(吉)常任理事は、「時短勤務の推進や、医師でなくてもできることは医師事務作業補助者等が行う必要があるということから、要件緩和や評価の引き上げが行われた」と述べた。
 (7)「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」では、①入院医療の評価体系の見直し②重症度、医療・看護必要度の判定基準の見直し③医療資源の乏しい地域に配慮した病床数要件の緩和④診療実績データの提出対象の拡大⑤DPC制度の見直し―等の内容を説明。中川副会長は、「病床機能報告制度における4区分のいずれでも経営が成り立つという方向性と大きな齟齬(そご)はなく、良い方向に進んだのではないか」と評価するとともに、入院医療の評価体系の見直しや地域包括ケア病棟の評価については、その変更点の考え方等を解説した。
 (12)「緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価」のうち、がん患者の治療と仕事の両立に向けた支援の充実について、松本(吉)常任理事は、「日医として長く要望していた産業保健関係での新たな評価が導入された。今後、現在改訂中の『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』で、主治医の意見書等の作成例を提示していきたい」との方針を示した。
 最後に、中川副会長が、「3月に告示が行われ、4月の施行まで1カ月を切った段階で改定内容の周知が始まるというタイトなスケジュールの中、できる限りの対応を行ってきた。改定内容は多岐にわたるが、社会保険担当の先生方には地元での改定内容の周知にご協力頂きたい」と総括し、協議会は終了となった。
 なお、当日の資料は日医ホームページのメンバーズルームに掲載した他、診療報酬点数表の参考資料等については都道府県で開催される説明会等で配布されることになっている。

別表 主な改定項目
(1)外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の一層の推進
(2)医療技術の適正な評価(モノから人へ)
(3)情報通信機器を活用した診療
(4)質の高い在宅医療・訪問看護の確保
(5)医療と介護の同時改定
(6)医療従事者の負担軽減・働き方改革の推進
(7)医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
(8)地域包括ケアシステム構築のための取組の強化
(9)医薬品の適正使用の推進
(10)後発医薬品の使用促進
(11)リハビリテーション
(12)緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
(13)認知症の者に対する適切な医療の評価
(14)地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価
(15)難病患者に対する適切な医療の評価
(16)小児医療の充実
(17)周産期医療の充実
(18)救急医療の充実
(19)感染症対策や薬剤耐性対策、医療安全対策の推進
(20)イノベーションや医療技術の適切な評価と着実な導入
(21)重症化予防の取組
(22)医薬品等の適正評価
(23)透析医療に係る診療報酬の見直し
(24)業務の効率化・合理化
(25)明細書無料発行の推進
(26)薬価制度の抜本改革
(27)経過措置
(28)届出

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