閉じる

平成30年(2018年)4月19日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

医師会将来ビジョン委員会答申「医療の今日的課題に対して医師会員は何をすべきか」について

 第三次医師会将来ビジョン委員会が会長諮問「医療の今日的課題に対して医師会員は何をすべきか」に対する検討結果を取りまとめ、4月10日に、横倉義武会長宛てに答申したことを踏まえて、佐原博之同委員会委員長(石川県医師会理事)は4月18日の定例記者会見で、その概要を説明した。

 同委員会は、全国8ブロックから推薦された15名と会長推薦2名の計17名の30~50代前半の医療現場の最前線にいる医師により構成されている。

 答申は、「はじめに」「I総論」「II各論」で構成され、「参考文献」と「あとがき」が添付されている。「I総論」「II各論」は共に、(1)医療の今日的課題と社会的共通資本、(2)社会的共通資本としての国民皆保険、(3)社会的共通資本としての医療からみた医師の在り方、(4)日本の医療を守るために、我々は理念をどう共有するか―の4章立てで、「I総論」には「(5)総論のまとめ」がついており、各項目について、総論では概要を、各論では詳細に述べる形となっている。

 「はじめに」では、会長諮問に対する答えを、「医師会員がすべきことは、日本の医療を守るために"理念を共有すること"」とし、理念を掲げるだけでなく、それを医師のみならず全ての国民に対して伝えていくという具体的な行動こそが「医師会員がすべきこと」としている。

 総論の(1)「②医師会の大義」では、現在医師会が行っているさまざまな活動は全て「国民の生命と健康を守る」という大義の下に集約されると指摘。その大義の下に全ての医師が結集する場が医師会であり、「医療は、国民の生命と健康を守るための社会的共通資本である」との理念を全ての国民と共有することが医療の今日的課題に立ち向かう重要な手段としている。「③社会的共通資本とは」では、医療は、利潤を目的とした市場原理の対象とすべきではなく、国家の統治機構の一部として官僚的に管理されてはならないとし、職業的専門家集団によって管理・維持されなくてはならないが、その前提として専門家集団には高い学問的知見と倫理性が求められるとしている。

 (2)「②社会的共通資本としての国民皆保険の課題」では、日本の医療制度の問題点についてまとめている。また、予防医療の推進や健康寿命の延伸などの取り組みを通して、医師が必要な医療を効率よく行うための知識と技術と倫理観を備えることの重要性と、国民に医療は社会的共通資本として皆で大切にするものと理解してもらう必要性を指摘。その上で、医療を経済に合わせるのではなく、経済を医療に合わせる必要があると強調している。「⑤国民皆保険を守るための将来ビジョン」では、健康アウトカムを下げることなく効率性の高い医療体制を目指すという科学的な議論のためには、従来の取り組みを再検証し、持続性ある強い制度にするための視点が必要だとして、具体的に10項目を挙げている。

 (3)では、社会的共通資本の視点から医師はどうあるべきかを論じており、「①医師の偏在対策と働き方改革」では、医師も社会的共通資本である医療の構成要素の一つとして捉え、医療現場と地域社会が共に支えるという意識が、医師自身にも一般市民にも必要であると指摘。「③女性医師の支援」では、出産・育児世代の女性医師を社会的共通資本としてどのように生かしていくかは、女性医師個人の問題ではなく社会として支える仕組みの問題であるとしている。

 (4)では、「①郡市区医師会の役員会で理念を共有」「②非会員を含めたすべての医師で理念を共有」「③地域住民・国民と理念を共有」という3つのステップでの取り組みについて述べており、①では"全国郡市区医師会長協議会"の創設や"医師会ビジョン委員会"の設置等が提言されている。

 (5)では、医療の今日的課題に立ち向かうために、「医師会の大義は、国民の生命と健康を守ること」にあり、「医療は、国民の生命と健康を守るための社会的共通資本である」との理念を、地域医師会というインフラを通じて、医師のみならず、全ての国民に対して語り掛けることが、「医師会員がすべきこと」であるとし、その前提として、医師と医師会には高い学問的知見と倫理性が求められることが、社会的共通資本としての医療の原点であることを忘れてはならないと改めて強調している。

 会見に同席した横倉会長は、本委員会の前身である「未来医師会ビジョン委員会(平成10~16年)」から多くの日医役員や都道府県医師会長等が輩出していることに触れ、本委員会からも将来の医師会組織を担う人材が育ってくれることに期待を寄せた。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる