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平成30年(2018年)8月20日(月) / 南から北から / 日医ニュース

形成外科に魅せられて

 私がまだ医学部の学生で、ポリクリと呼ばれていた臨床実習の時のことである。将来の診療科を決めるに当たって、昔から工作など細かいことが大好きだった私は、ぼんやりと「形成外科」という科に興味があった。
 形成外科の実習が始まると、ほとんどは手術見学の日々。その中で私が衝撃を受けたのは赤ちゃんの口唇裂形成術であった。手術が始まると思いきや、まずはデザインするための竹串を削ることから始まるのである。十分細い竹串をつんつくになるまで削り、そして始まったデザイン描きに要した時間は30分! 「このデザインがこの子と親御さんのこれからを左右する。だから0・1ミリメートルのズレも許容してはいけない」と何度も計測し、点を打っていく。
 そして始まった手術のメスさばきも驚きである。デザインされた細かい三角の角、カーブにスースーっと奇麗にメスが入っていく。複雑に切り込まれ、パズルのような皮膚が入れ替わり、縫い目が分からないほどピタッと縫い合わせられ、終了した時には可愛らしい小さなお口ができ上がったのである。
 私は完全に形成外科に魅せられた。そして、当時は胸部外科と一、二を争うほど過酷との噂の形成外科に迷うことなく入局した。多忙を極める日々の中でも、私は、日々行われる先生方の美しい手術に魅了され続けていた。手術の助手に入ることがとても楽しかった。
 とうとう訪れた初執刀の日。私が初めて執刀した手術は子どもの母斑であった。ぜいたくなことに、前立ちは尊敬する助教授であった。助教授の手術はデザインや手の動き方、全てがとても美しく、まさにゴッドハンドであった。そんな先生の下、冷や汗で汗だくになり、私の初執刀を無事に終えた。その時に助教授が掛けてくださった言葉は、「お前はセンスがいい。これからも術野で起こっていること全てを見逃さないこと。これが一番肝心」。
 今から考えてみれば、当時のフレッシュマンを鼓舞するために、皆に掛けていた言葉かも知れない。でも、当時の私にとっては日々の疲れが吹っ飛ぶほど本当にうれしい言葉であり、いまだに心に焼きついている。
 その後、非人間的な生活を送っていた大学から外に出た時、私は「美容診療」と出会うのである。大学では大掛かりな美容外科手術は多かったが、いわゆる美容皮膚診療というのは行われていなかった。恥ずかしながら、形成外科の勉強をしていながら、シミが取れるとは思っていなかった。
 初診の時はシミだらけの顔でうつむき加減に先生の話を聞いていた患者さんが、どんどんキレイになり、診察室に入ってくる姿がまぶしく感じるほど、「先生、見て!」と言っているように変わっていく。毎日アイプチと戦っていたまぶたを二重にする。両手で一生懸命持ち上げていた頬を、少し持ち上げる。いつも怒っているような顔にさせているシワをなくす。
 そうすることで患者さんはとても穏やかで柔らかい表情になっていく。そんな姿を見て、私はこんな世界があるんだと感動した。そしてまた一段と形成外科に魅せられたのである。
 形成外科は、「必ずしも必要でない科」とくくられてしまうことも多く、実際に大きな大学病院や総合病院でも無いところはまだ多くある。しかし、私は、形成外科は本当に魅力あふれた科だと思っている。形成外科をできるだけ多くの方に知ってもらうよう、 1人1人、1針1針、丁寧に診療することからやっていきたいと思っている。

(一部省略)

富山県 富山市医師会報 No.559より

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