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平成30年(2018年)10月20日(土) / 南から北から / 日医ニュース

Calling、天職、神の思し召し

 数年前のNHKの朝の連続テレビ小説の中で、「Calling」という言葉を耳にした時、その言葉の響きの美しさに胸を打たれました。天が、神が、その職に就くことがふさわしいものとして呼んでいる、そうしなさいと呼び掛けている職業=天職。小生はキリスト教信者ではないものの、この言葉が気になって仕方ありませんでした。
 以前、娘の高校の進路相談会に参加した際、「好きなことをして、それが人から尊敬される職業であり、それなりの報酬が得られる。それが理想的な職業である」というような講師のお話がありました。まさしく今の小生の状況にぴったり当てはまります。天職なのです。好きなことをしていてお金を貰(もら)えるのですから、これに越したことはありません。
 こんな事もありました。入局2年目で関連病院に赴任した時、病院紙のインタビューで「先生の名前の上と下をつなげると『小児』になるんですね」と言われました。それまで考えてもいなかった事なので、その時はただびっくりしただけだったのですが、これも後で考えてみると、Callingなのかと(ただのこじつけにも思えますが、こんな名前をつけてくれた両親に感謝です)。
 小児科医を選んだ理由は、ふざけたものでした。「大学での先生の授業に感動して」とか、「教室の研究業績が素晴らしく、少しでもそれに貢献したい」とかいう気持ちは全く無くて、ただ単に子ども達に接することのできる診療科だったから、小児科学教室に入局しました。小児科医になることは、医学部に入学した時点でもう決めていたことなのです。
 現在の毎日の生活を見てみると、どうでしょうか? 子ども達に毎日接していて、楽しくて仕方ありません。子ども達を「診察して、治療して」という意識は極めて薄く、遊んでもらっているという感覚の方が強いかも知れません。Workaholicのように思われるかも知れませんが、日曜日には何をして良いのやら分からず手持ち無沙汰でも、月曜日が始まると生き生きしてくる自分を自覚することがあります。
 毎日の診療の99%(ちょっと大袈裟(げさ)か......)は、いわゆる「かぜ」で、ちょっと手の込んだものは、県立病院や市民病院にお任せしているのが現状ですから、公立病院の勤務医の先生方にしてみれば、「お気楽なことを言いやがって。そっちの尻ぬぐいで、こっちはてんてこ舞いの毎日なんだよ!」とお思いになっているかも知れません。もっともなことです。足を向けて寝られません。罪滅ぼしのつもりで、夜間急病センターの当直や年末年始とGWの休日在宅当番に参加しています。
 もとより浅学非才の身ですから、社会に貢献するという大それた考えは持ち合わせてはいません。細々と自分にできることを、力の続く限り、「天職である小児科医」を全うしたいと思っています。大還暦まで、後たったの60年だ! どこまで子ども達に遊び相手として見てもらえるか、一抹の不安はありますが......。

(一部省略)

青森県 青森市医師会報 第577号より

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