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平成31年(2019年)2月20日(水) / 南から北から / 日医ニュース

坐(すわ)ること

 最近、飲食店や飲み屋に出掛けて、固い床に坐るのがつらくなった。
 自分では毎日歩いているし、登山もしていて鍛えているつもりだが、どうも右膝が坐ると苦しくなり、腰が痛くなる。
 学生時代、6年間ボート部で競技用ボートを漕いできたが、rowing(漕艇(そうてい))は両膝の曲げ伸ばしの繰り返しであった。大学3年生の時に右足関節、右膝関節を痛めて、2カ月ほど漕艇を休んだ過去があるが、それが今になって出てきたのか?などとも考えた。
 そんな事を考えていたら、ふと高校時代に約2年間、クラスメート3人と坐禅(ざぜん)をしていた事を思い出した。
 坐禅の時には、結跏趺坐(けっかふざ)という胡坐(あぐら)より更につらい足の組み方で坐る。この姿勢で30分、1時間と坐禅しているとふらついたり、痛みで頭が揺れてくる。そうすると和尚(おしょう)に警策(きょうさく)という長い木の棒で、背中を打たれるのである。
 なぜ、高校時代に坐禅道場に通ったかというと、訳があった。
 県立高校受験に失敗し、私立高校の特別進学クラスに在籍していた、我々坐禅4人組は、性格は全く異なるのだが、なぜかウマが合い、下校時などよく一緒に帰ったのだった。試験のことや、将来のことなどを語り合ったり、自分が読んだ本の内容を、仲間に話したりしていた。
 高校1年も終わる頃は、大学進学への夢はあるのに、現実的に厳しい状況もあり、精神的にも不安定だったように思う。
 4人組の一人から、ある日、「知り合いに、坐禅の和尚さんがいるけど、精神を鍛えるために、4人でその和尚の坐禅道場に通わないか? このままじゃ、将来が危うい」と誘われた。自分は小学校4年から剣道を、他の仲間には柔道をやっていたり、坐禅に憧れる仲間もいて、「よし、坐禅道場に行こう!」ということになった。
 毎週土曜朝6時半、山形市内の寺に集合し、1時間程道場で坐禅。
 夏の暑い時も、冬の雪の季節も、寺の固い床の上で、道場の扉を開けての坐禅だった。汗がこぼれ落ちたり、肩に雪が積もった時もあった。初めのうちは、5分も坐れなかった。
 坐禅が終わると、和尚が熱いお茶を出してくれて、講話を聞かせてくれた。坐禅の後に高校に行ったのだった。
 坐禅の効果か、2年後、我ら4人全員、無事希望の大学、学部に現役で合格できた。
 卒業式の帰りに和尚に報告に行ったら、普段は怖い表情しか見せなかった方だったが、ニコニコしながら、「お前ら、よく坐禅を続けたな。少しは将来の役に立つだろう。今日は御馳走してやるからな」と言われ、夜遅くまで寺で馳走になった。懐かしい思い出である。
 僕らを導いてくれた和尚さんも、先日亡くなられた。
 今でも僕ら坐禅4人組は、時々会って、酒を酌み交わし、現在の状況報告をしている。時々、「あの時は、よく坐禅に通ったなあ。何で続けられたか、今でも信じられないよ」という話になる。
 一緒に坐り、棒で叩かれ、説教を聞いてから、約43年経った。あの時の真摯(しんし)な気持ちに戻りたいと思い、最近、また頑張って坐ってみようと思う、今日この頃である。

山形県 山形市医師会たより 第586号より

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