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令和元年(2019年)5月20日(月) / 日医ニュース

地域医療の基盤である勤務医を支えるために~この10年~

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地域医療の基盤である勤務医を支えるために~この10年~

地域医療の基盤である勤務医を支えるために~この10年~

はじめに

 京都府医師会の理事になって10年、当時、勤務医であった筆者は2010年2月3日、京都府医師会ホームページブログにおいて「勤務医の労働環境問題」に関して「5分でわかる勤務医問題」(http://www.kyoto.med.or.jp/info2/index.php?e=6)と題して提言を行った。
 京都府医師会ではこの内容に基づき、勤務医を取り巻く諸問題や京都府医師会の勤務医を対象とした活動について、京都府医師会勤務医部会、医師のワークライフバランス委員会(前勤務医部会女性医師ワーキンググループ)、情報・企画・広報委員会等の各セクションの他、京都府地域医療支援センター(KMCC)運営委員会に参画し、行政とも検討・協議を続けてきた。
 本紙面ではこの10年を振り返り、未来に向けて勤務医に対する医師会の役割を改めて考えてみたい。

調査結果から求められた医師会の役割の変革

 京都府医師会勤務医部会では、2009年12月に「勤務医・女性医師の労働環境等に関する緊急意識調査」の結果をまとめた。
 医師会として何をしなければならないのかが明らかになり、勤務医を支えるための仕組みづくりを手探りで行ってきた経緯を紹介する。

医師のワークライフバランス委員会

 勤務医の労働環境は過酷を極め、有給休暇も半数が利用できない状況である上に、手当てについても半数がまともに受けられていない状況がうかがえた。
 「不安、不満、悩み」の訴えの中で多くを占めたのが、「医師の働き方改革」における「ワークシェアリング」「ワークシフティング」の議論で渦中の存在となっている「文書作成の多さ」といった事務的な仕事であり、女性医師からは「勤務と家事との両立」が挙げられた。
 更に、「女性医師が仕事を続ける条件」に、「家族や上司の協力」が70%を占めるとともに、60%以上が「保育所・託児所施設の不備」を訴えたことが挙げられ、休職・離職の原因は出産・育児であり、復職するには家族・病院の協力が不可欠であることが判明した。
 医師不足が叫ばれる中、女性医師が働きやすい環境をつくることが医療崩壊を防ぐ大きな手立てになることが明らかになった。
 このことから、京都府医師会では勤務医部会に付随していた「女性医師ワーキンググループ」を発展的に解消し、常任委員会として「医師のワークライフバランス委員会」を設置し、医師にとって働きやすい、子育てしやすい環境改善等の課題解決を図っている。

「臨床研修のあり方に関する検討委員会」と若手医師ワーキンググループの役割

 ①「新研修医総合オリエンテーション」の企画・運営
 これは、医師、社会人となって初めて受ける研修であり、京都府医師会ならではのオリエンテーションプログラムを提供することで、研修医が身に付けなければならない最低限の知識の均一化を図るとともに、研修医同士の横の連携を深めることを目的として開催している。
 ②「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」
 若手の先輩医師が作成した症例シナリオに、他の施設の臨床研修医がチームを組んで挑む取り組みである。
 医学的知識もさることながら、隣の病院の臨床研修医がどのような研修を行い、どのような実力を持っているのか感じ合える企画であり、「屋根瓦塾」の名の通り、"教わった者"が次は"教える側"に立つことが特徴的である。
 ③その他
 救急外来実技、災害医療シミュレーションに特化した「研修医ワークショップ in Kyoto」や研修医・若手勤務医向けの情報誌『ARZT』の発刊による啓発活動を行っている。

これからの「医師会」の役割と方向性

 調査の結果、「医師会」は「開業医のための営利団体で、勤務医のための組織であるとは思えない」との意見が散見されたこと、勤務医部会が「医師会」に存在することを認知されていなかったことが浮き彫りとなった。
 これは、現在でも医師会が抱える大きな問題である。
 勤務医が感じた問題を直属の上司である院長や自治体の首長が共有し、政府や地域行政に働き掛けるぐらいのエネルギーが無い限り労働環境は変わらない。
 病院内外の地域医療体制の改善策を勤務医のアイデアを基に具体化する取り組みが求められており、俯瞰(ふかん)してそれをコーディネートできるのは「医師会」のみである。
 そもそも「医師会」は、国・地域の医療を将来に向けて安心できる体制を維持できるように専門家としての立場で意見していく集団であるべきで、開業医だけの利益集団と思われることを恥じるべきである。
 一方、勤務医も受動的なサイレントマジョリティのままで現在の医療崩壊を嘆くだけでなく、地域の未来にまで視野を広げ診療活動に勤しんで頂きたい。

おわりに

 10年前の調査を基に、今までの京都府医師会の勤務医に対する支援事業を再検討した。
 勤務医の問題の根幹は変わっていないが、患者のために身を粉にして働く勤務医に対しての労働対価を常に考え、更に医療提供体制を維持するためにも行政、医師会、病院勤務医が連携、協働するための具体的な環境整備が医師会の新たな責務と言える。

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