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令和元年(2019年)11月5日(火) / 日医ニュース

多様な働き方の社会の実現に向けた産業医活動に対する支援体制の強化に向けて

多様な働き方の社会の実現に向けた産業医活動に対する支援体制の強化に向けて

多様な働き方の社会の実現に向けた産業医活動に対する支援体制の強化に向けて

 第41回産業保健活動推進全国会議が10月10日、日医会館大講堂で開催された。
 加藤勝信厚生労働大臣(村山誠厚労省労働基準局安全衛生部長代読)に続いて、あいさつに立った横倉義武会長は、「人生100年時代を見据える中で、社会の活力の基盤である労働者の健康を管理することは重要な課題である」と述べるとともに、日頃の各地域における産業保健活動推進への協力に対して謝意を示した。
 その上で、働き方改革関連法施行を機に、産業医や産業保健活動総合支援事業に期待される役割がますます増大した反面、職務の多様化と負担増などの課題も挙げられていると指摘。「産業医活動の支援体制の整備が急務であり、産業保健活動に取り組むさまざまな組織が一致団結して活動を進めるだけでなく、かかりつけ医との連携も重要になる」との考えを示した。
 その後、西尾泉神奈川産業保健総合支援センター産業保健専門職、三谷梨紗福岡産業保健総合支援センター労働衛生専門職から「両立支援に係る取組」、二宮利春西脇地域産業保健センターコーディネーターが「個別訪問支援に係る活動実績及び活動計画」、岸野朝子山口産業保健総合支援センター産業保健専門職が「保健師の活動状況」について、それぞれ活動事例を紹介した。
 次に、「産業医が安心して活動に取り組める環境の整備」をテーマにシンポジウムが行われた。
 井内努厚労省労働基準局安全衛生部労働衛生課長は、労働災害による死亡者数や業務上疾病者数は一定程度減少したものの、近年は横ばいとなっていることを問題視。「今後は、一億総活躍を前提とした社会全体の動きの中で、産業医を中心とした産業保健関係者の能力が一層問われている」との見解を示し、産業保健の強化に向けた実効性のある研修や切磋琢磨(せっさたくま)する場の充実を求めるとともに、日医を中心とした産業医の組織化に期待を寄せた。

日医が中心となり産業医の組織化に取り組む―松本常任理事

 続いて、松本吉郎常任理事は、都道府県医師会を対象に実施した「産業医に関する組織活動実態調査結果」では、組織化に向けて「産業医経験のない産業医を対象にした実践研修」「産業医からの相談対応」に対する施策の必要性が求められている他、課題として「産業医活動を支援する体制整備」「産業医の不足」などが挙げられていることを報告。
 「産業医を守る体制づくりが重要になることから、多職種との連携や情報交換の場など『組織』としての対応が急務である」と述べ、都道府県医師会に対して、産業医に対する支援事業への協力を求めるとともに、今後は、産業保健担当理事連絡協議会を発展解消し、新たに、日医が中心となって全国の産業医部会等のネットワーク化と産業医支援事業の充実・強化を図ることを目的とした「全国医師会産業医部会連絡協議会(仮称)」を設置し、さまざまな関係機関と手を組み、全国的な組織づくりを目指していく意向を示した。
 有賀徹労働者健康安全機構理事長は、現在、労働者の6割が労働者数50人未満の小規模事業場に就業している状況の中、法制度の改正により、産業医に課せられる職務が更に増加したことで、小規模事業場と大規模事業場の産業保健レベルの格差が拡大するとの危惧を示し、「今後、地域産業保健センターへの郡市区医師会の関与が重要になる」と指摘。
 また、「登録産業医の活性化も必要だ」として、事業者向けの産業医の活用に関するセミナーの開催や治療と就労の両立支援に携わる医療従事者等を対象とした両立支援コーディネーター養成研修の実施を強化していくとした。
 東敏昭産業医科大学長は、産業保健専門職の育成に向けて、学外や卒業生以外も対象とした講義・実習の講座を開設するなど、さまざまな産業医学・産業保健教育を実施していることを紹介。「専門職を輩出することで、社会に貢献していきたい」とするとともに、日医生涯教育制度の単位が取得できることが研修を受ける大きな誘因になるとした。
 森晃爾日本産業衛生学会副理事長は、学会が行う専門医制度を概説。今後、社会の変化による産業保健ニーズを捉えた学術的な人材養成をどう行うかが課題であるとするとともに、産業医の全国組織化に向けて、学会の八つの地方会に都道府県単位の窓口を設置し、都道府県医師会との連携をより深めていくことで、社会に対応できる高度専門職の育成に貢献していきたいとした。
 協議では、相澤好治日医産業保健委員会委員長の司会の下、井内労働衛生課長、大西洋英労働者健康安全機構理事、松本常任理事、及川桂産業医学振興財団事務局長の4氏が、茨城県・栃木県・埼玉県・滋賀県・京都府・岡山県の各医師会から事前に寄せられていた、(1)事業者を通さない労働者の意向だけで面接指導を受けられるシステムの構築、(2)事業者が労働基準監督署へ提出する産業医選任報告の添付書類、(3)治療と仕事の両立支援、(4)産業医の能力向上に向けた取り組み、(5)産業医の選任の必要のない職員50人以下の学校における教職員の健康管理―等に関する質問・要望に対して、それぞれ回答を行った。

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