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令和2年(2020年)1月20日(月) / 南から北から / 日医ニュース

リュックおじさん

 昨年1月から月1~2回程度、東京・大阪方面の会議に出席するようになりました。最初は肩掛けバッグでの移動でしたが、会議の資料がやたらに多くて重たく閉口していました。遠方からの出席者を見渡すと、多くがリュックサックを背負い、全国から参加していました。
 リュックは学生と登山者が使うものという勝手な偏見を捨て、早速ホームセンターで購入し、多少の気恥ずかしさに耐え、3月に無事リュックデビューを果たしました。
 これがとても素晴らしい。荷物がとても軽く感じるし、両手が使えるのでトイレも楽に済ますことができます。まさにリュック"様様"でした。
 しかし事件(?)は5月、大阪に出張した地下鉄ホームで起きました。いい歳のおっさんがリュックを前に掛けている光景を初めて目撃しました。「何だコイツは?」。初めての体験に私の頭は混乱しました。この姿は、抱っこひもで赤ちゃんを抱くママの姿ではないのか?(たまにパパも見ますが)。初老おじさんの勝手な偏見は、事実を理解できないまま札幌に帰ってきました。
 その後、何度も札幌の地下鉄に乗りましたが、同じ光景に出合うことはありませんでした。しかしその後、東京出張の際に、リュック前抱えおじさんを見掛ける機会が増えてきました。ひょっとして、自分の知らないうちに「リュックは前に抱えるもの」文化が当たり前になったのかと、疑心暗鬼(ぎしんあんき)の日々が続いていました。
 そしてある日、地下鉄の張り紙に愕然(がくぜん)としました。「地下鉄・バスに乗ったら、リュックは手で持つか、前に抱えてください」とのことでした。"ガーン"。公共交通機関ではリュックを背負っていれば、マナー違反だったのだ。これからもリュックのお世話になるには、「背負うもの」から「前に抱える」ものという現実を受け入れなければならないのか。
 悩んだ末、意を決して三十路の娘に聞いてみました。「リュックを前に抱えるってどう思う?」。答えは明快でした。「いいんじゃない。でもお父さんは似合わないよ。腹は出てるし、首はないし、ダメじゃねー」。
 そんなことはないのではと、一縷(いちる)の望みを抱き、リュックを前に抱えて鏡の前に立ってみました。似合わない、というよりキモい。娘の観察眼は100%正しかったのであります。
 今年はどうやってリュックと付き合おうかと、悩む日々が続いています。

(一部省略)

北海道 北海道医報 第1204号より

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