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令和2年(2020年)2月20日(木) / 日医ニュース

時間外労働時間を決める無作為試験の必要性

勤務医のひろば

時間外労働時間を決める無作為試験の必要性

時間外労働時間を決める無作為試験の必要性

 国は、2019年4月1日から働き方改革関連法案の施行を順次開始した。その中で、時間外労働の上限について医師を含む複数の職種で現実的に直ちに規制を掛けることが困難との判断から、猶予期間を設けた。
 令和元年6月の厚生労働省の発表では、医師の時間外労働の上限規制について3パターンが示された。一定の進歩と評価できる。しかし、これには暫定特例水準という条件が付いており、2035年には研修医や高度特定技能を習得するために働く場合を除き、一律に960時間に統一する考えのようだ。
 過労死がきっかけとなった働き方改革は、長時間労働を諸悪の根源とし、時間の長さの議論に終始しているように思うのは、私だけであろうか。多くの医師は、患者の命を助けるという使命感から時間に無頓着で診療に当たってきたことも事実である。しかし、多くの医師が過労死という最悪な事態を避け得た理由は先輩、同僚、コメディカル、家族といった支援があったからではないだろうか。医療は、チームで当たらなければ、患者の命を救うことはできない。個人主義がはびこり、周囲の人への関心、気配りが希薄な働く環境が過労自殺を招く要因もある。過労死を時間の長さだけで規定するのは問題である。
 米国では、レジデントの勤務時間を週80時間以内とする法律ができた。しかし、研修医からは研修の質を維持するには、時間制約ルールは望ましくないとの意見が出始め、これに対して米国卒後医学教育認定評議会は、外科研修における勤務時間の柔軟性に関する全米クラスター無作為化試験を施行した。その結果、術後合併症、及びレジデントの健康と教育等に何ら問題ないと判断し、連続勤務時間を見直した。
 わが国の医師の時間外労働規制はエビデンスに基づくものではなく、米国のような大規模試験も考慮すべきではないだろうか。

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