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令和2年(2020年)2月20日(木) / 日医ニュース

「かかりつけ医機能の定着」「オリンピックへの医療面からのサポート体制整備」等に取り組む考え示す

「かかりつけ医機能の定着」「オリンピックへの医療面からのサポート体制整備」等に取り組む考え示す

「かかりつけ医機能の定着」「オリンピックへの医療面からのサポート体制整備」等に取り組む考え示す

 令和元年度第3回都道府県医師会長協議会が1月21日、日医会館大講堂で開催された。
 当日は、都府県医師会から提出された「医師の偏在対策」「専門医制度」等に関する9つの質問・要望に対して、担当役員から回答を行った他、日医から「医師の副業・兼業と地域医療に関する日本医師会緊急調査」の結果や国の検討状況について、説明を行った。

 協議会は小玉弘之常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、まず、新年に際して、天皇陛下が昨年の自然災害で被災された方々に思いを寄せられたお言葉を述べられたことに触れ、日医としても、今後、被災地で迅速な災害支援対応ができるよう、BCP(事業継続計画)、BCM(事業継続管理)の整備を始め、「防災業務計画」及び「JMAT要綱」の見直し等に適宜、取り組んでいく考えを示した。
 また、安倍晋三内閣総理大臣が昨年、出生数が初めて90万人を下回った事態を「国難とも言える状況」と表したことに関しては、「昨年施行した成育基本法の理念に則り、安心して産み育てられる社会の実現を目指し、今後も必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策を総合的に推進していく」とした。
 昨年末に決定した診療報酬の改定率がプラス0・55%(そのうち働き方改革への対応分プラス0・08%)に決定したことについては、改定率決定までの日医の活動を説明した上で、都道府県医師会の協力に対して、感謝の意を示した。
 政府の全世代型社会保障検討会議が取りまとめた「中間報告」については、自民党や公明党の提言よりも少し踏み込んでいる点に懸念を示しつつ、一定の評価をしたいとした上で、「最終報告に向け、政府・与党や厚生労働省の会議、更には記者会見などを通じて、国民の安心につながる社会保障制度が構築されるよう、引き続き日医の考えを主張していきたい」と述べた。
 更に、今年はかかりつけ医機能の定着に、より一層力を入れていく意向を表明。地域の身近なかかりつけ医を、入院機能を持つ地域密着型の有床診療所・中小病院がバックアップし、それを後方支援する特定機能病院を始めとした大病院が高度急性期や専門的な医療機能を担う体制を全国で確立できるよう、必要な検討と取り組みを行っていくとした。
 最後に、今夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催にも触れ、「東京都医師会を始め、競技会場やホストタウンを管内にもつ都道府県・郡市区等医師会などと密接に連携しながら、医療面からのサポート体制の準備をより一層推進していく」とするとともに、「その成果を、医療界におけるレガシーとして継承していく中で、2025年の大阪万博はもとより、今後わが国で開催される国際会議やイベント等での医療面からの確かな支援につなげていきたい」と述べ、その理解と支援を求めた。

(1)本格稼働が迫る国家的Electronic Health Record(EHR)とPersonal Health Record(PHR)について

 EHR(国民一人ひとりの生涯にわたる健康や医療の記録を電子的に集積したもの)とPHR(個人の健診・医療・健康情報などを電子記録として本人が把握・閲覧・蓄積するための仕組み)の本格稼働時期並びに接続時における指針などの提示を日医に求める奈良県医師会の質問には、長島公之常任理事が回答。
 まず、EHRの基盤となる全国保健医療情報ネットワークとPHRについては、共に解決すべき課題が多く、2020年度の稼働は大幅に遅れることが想定されるとの見解を示した上で、日医として各検討会や関係省庁に対し、問題解決と現実的な工程表の策定に加えて、今後の議論結果についても情報提供を求め、都道府県医師会へもその進捗状況を報告するとした。
 また、全国保健医療情報ネットワークに関しては、その稼働後にも各地域で円滑な情報連携を行っていくためには解決すべき課題があるとするとともに、全国規模のネットワーク稼働後も既存の地域医療連携ネットワーク自体は、これまでどおりに運用されるものとの考えを示した。
 更に、「財政負担については、国や自治体等の公的負担で運営されることが原則と考えており、引き続き国に対して働き掛けを行うとともに、自治体による費用負担に関して参考となる情報を提供していく」と述べ、変わらぬ支援と協力を求めた。

(2)厚生労働省の算出した医師偏在指標は、政策に用いるデータとして妥当であるのか?

 医師偏在指標の問題点を指摘する沖縄県医師会の質問には、釜萢敏常任理事が、まず、「医師偏在指標は、一定の仮定をおいて算出した"相対的"なものであり、医師の絶対的な過不足を示すものではない」と回答。「医師確保計画策定においては、あくまで参考として取り扱い、各地域の実情を加味していくことが極めて重要である」と述べ、改めて理解を求めた。
 また、専攻医採用に関するシーリングについては、何らかの数字を示す必要性には理解を示す一方、「その運用は著しく柔軟性を欠き、地域の実情とシーリング数の乖離(かいり)により、日本専門医機構に対して加藤勝信厚労大臣から緩和策が要請されたことは、地域医療対策協議会(以下、地対協)での議論、要請が極めて重要であることの証左である」とし、沖縄県における医師の流出分と将来医師数の算出についても、地対協で議論することを求めた。
 その上で、同常任理事は、偏在対策は全ての医師養成過程を通じて行われるべきとし、「地域医療において実践的な医師が、いかに適切に分布されるかが本来求められている偏在対策である」と強調。地域の実情を反映し得るシーリング等の提示に向けて引き続き努力していく姿勢を示した。

(3)医師の人生設計に着目した医師の偏在対策を行うべき

 東京都医師会の「医師偏在問題、働き方問題の解決策はどの地域、どの職場にいても、医師として働きがいを持ち、豊かな人生を送れるように環境を整えることである」との提言に対して、釜萢常任理事は賛意を示した上で、セカンドキャリアとしての医師少数区域での活躍を進めていく意向を表明。具体的には、日医の女性医師バンクの対象医師を拡大するとともに、各都道府県医師会ドクターバンクのハブ機能の役割を担うようにする考えを示した。
 同常任理事はまた、「医療提供体制においてはさまざまな改革が同時進行しており、予測困難な状況の中で、医師の働き方改革を進めていくためには医師の人生設計に配慮した取り組みと、あらゆる事象のバランスを見ていく必要がある」と指摘。今後も日医として全国的、将来的な医師需給を含めた広い視点での偏在対策を進めていくとして、理解と協力を求めた。

(4)医療介護総合確保基金の早期交付を求める

 宮城県医師会が地域医療介護総合確保基金の使用率が、医療、介護とも約6割にとどまっているのは内示が遅いことが主要因であるとして、基金の早期交付を求めたことに対しては、小玉常任理事が「厚労省医政局地域医療計画課が内々示の後に再度配分額の精査を行った結果、各都道府県の取り組みにあまり差異が無いにもかかわらず、配分額で大きな差が生じていることが判明し、金額の見直しを行ったためである」と同課が弁明していることを説明。
 日医としては、昨年11月に厚労大臣に対して基金の柔軟な運用などを求める要望を行った他、同省医政局に基金の早期内示を含めた要望を行ったことを報告し、理解を求めた。
 また、未計画の執行残が相当額に及んでいることに関しては、消費税増税分という貴重な財源が有効活用されていないことと同義であると指摘。「来年度は、事業区分2と4の枠が27億円分拡充され、新たに『勤務医の働き方改革の推進に関する事業』という事業区分も創設される。現場に不安や混乱をもたらさないよう、早期内示とともに、柔軟で適切な運用を改めて要求していく」と述べた。

(5)地域包括ケアでの薬剤師による訪問服薬指導について

 山口県医師会からの「在宅患者訪問薬剤管理指導料(介護保険被保険者であれば居宅療養管理指導費)」における"通院困難なもの"が恣意(しい)的に拡大解釈されているため、通院中の患者にも算定可能となっている現行の扱いに対し、日医の見解を問う質問には、江澤和彦常任理事が回答。
 算定に当たっては、いずれも「医師の指示があること」が要件であるものの、対象患者は「在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なもの」とされ、医師が訪問診療または往診を行っているか否かは厳密には問われていないと前置きした上で、「在宅患者訪問診療料(I)では、"独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者"は対象となっておらず、本件の趣旨からも対象となる患者・利用者については同様の取り扱いとすることが適切であると考えており、厚労省に見直しを申し入れた」と述べた。
 また、本件に関して、適切な対応を求めることを目的として広報を行っている日本薬剤師会に対し、更なる協力を要望していく考えを示すとともに、不適切な事案があれば日医へ情報提供するよう呼び掛けた。

(6)「有床診療所減少の歯止め対策」について

 長崎県医師会からの有床診療所減少の歯止め対策に関する質問には、平川俊夫常任理事が回答した。
 同常任理事は、有床診療所減少の背景について、看護職員の雇用困難、医師の高齢化や承継問題などに加え、経済的な厳しさがあり、そのことは「医療経済実態調査」や「2019年有床診療所の現状調査」からも明らかであると説明。
 令和2年度診療報酬改定に向けた中医協の議論の中でも、日医は有床診療所が病院と同様に地域医療を支える受け皿として機能していることを強調するとともに、入院医療に係る評価の引き上げを検討すべきと指摘。1月15日に取りまとめられた「令和2年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(現時点の骨子)」では、地域包括ケアシステムの推進のための取り組みの評価の一つとして、「有床診療所が地域において担う機能等を更に推進する観点から、有床診療所入院基本料の加算について要件及び評価を見直す」ことなどが明記されたことを報告し、「究極のかかりつけ医である有床診療所がその機能を十分に発揮できるよう、今後もこれらの点を主張していきたい」とした。

(7)専門医制度と専門医機構の在り方について

 現状の専門医制度と日本専門医機構に対する日医の考えを問う京都府医師会からの質問には、羽鳥裕常任理事が回答した。
 同常任理事はまず、現行の専門医制度が2018年度から開始されるまでの経緯を概説。「新たな専門研修が多くの課題を抱えていることは承知している」と述べる一方、「いきなり大きな方向転換を図ることは現在の専攻医や、これから専攻医となる若い医師達の不安を煽(あお)ることになりかねない」と指摘。
 日本専門医機構についても、財政基盤の脆弱(ぜいじゃく)性が組織のガバナンスにも影響を与えているとの第三者委員会の指摘を受け、財政と組織体制の立て直しに着手していることを説明するとともに、「日医としても、中立的第三者機関としての日本専門医機構の基盤強化とオートノミーによる運営を支援し、国の介入は謙抑(けんよく)的であるべきという基本姿勢を貫いていきたい」と述べ、引き続きの理解と協力を求めた。
 その他、カリキュラム制の導入を求める意見に対しては、「各診療領域のプログラムについて、日本専門医機構から各地域の地対協に診療領域別のデータが提出されている。都道府県医師会には地対協の場で、その妥当性の検討に加えて、カリキュラム制による登録専攻医の有無の確認やカリキュラム制自体の周知等に主導性をもって取り組んで欲しい」と要請した。

(8)救急隊要請時におけるDNAR指示書等への対応について

 兵庫県医師会からは、心肺蘇生を行わないこと(以下、DNAR)の事前指示書に対するかかりつけ医、地域医師会の関与のあり方や法的な責任について、日医の考えを問う質問が出された。
 長島常任理事は、DNARの事前指示書への対応方針を消防本部が定めるに当たっては、郡市区医師会も参画する地域メディカルコントロール(MC)協議会において、地域の在宅医療や介護関係者、そして警察の参画も得て、議論していくことが重要になると指摘するとともに、地域での事案や知見の集積を踏まえた標準的な対応方針を策定することになると説明。「日医としても、各地域での事例も踏まえながら、患者が尊厳をもって最善の医療を受けられる体制づくりを目指して、消防庁だけでなく、厚労省などの関係省庁と共に、ガイドラインの策定を検討していきたい」とした。
 また、DNAR指示と救急隊の法的な責任については、法制化を含む法令上の整備に関して、日医でも関係省庁と、適宜、協議を行っていく考えを示した。
 最後に、同常任理事は、「消防庁の報告書や通知では、消防機関であっても、地域包括ケアシステムやACPに関する議論の場に参画していくことが求められている」とし、都道府県医師会に対して、管下の郡市区医師会が消防機関との連携を深め、地域包括ケアシステムへの関与を働き掛けてもらえるよう、協力を求めた。

(9)医療資源不足地域の緊急対応と将来の医療について

 埼玉県医師会は、医療資源不足地域の緊急対応として、他地域にある医療資源の活用のための交通手段などの検討を行うべきと提案するとともに、医師数と関連した将来の医療についての日医の考えを質した。
 釜萢常任理事は、今回の産科・小児科の医師確保計画について、他の地域からの医師派遣のみで医師の偏在解消を目指すことは適当でなく、医療圏を越えた地域間の連携や再編統合を含めた医療機関の集約化等の検討も医師確保計画策定ガイドラインに掲載されていることを紹介。埼玉県におけるドクターカー、ドクターヘリの活用や隣接県との連携についても大変参考になるとした。
 医師数と関連した将来の医療に関しては、これまでの医学部定員の増員分を一旦(いったん)リセットし、原則として必要な地域枠は恒久定員の中で対応すべきとの考えを明示。地域枠の確保については、各都道府県医師会が主導的な役割を果たすことが重要として、引き続きの協力を求めた。

(10)医師の働き方改革における副業・兼業について他、国の検討状況について

 松本吉郎常任理事は、全国の病院並びに都道府県医師会を対象として緊急に実施した「医師の副業・兼業と地域医療に関する日本医師会緊急調査」の結果の概要を報告(別記事参照)
 調査への協力に感謝の意を示した上で、(1)複数医療機関に勤務する医師の労働時間を通算することについて、「通算に反対」「通算にどちらかと言えば反対」とする回答が医療機関では51・8%、都道府県医師会では65・2%ある、(2)医療機関の不安として、医療機関、都道府県医師会共に「宿日直体制が維持困難」「派遣医師の引き上げ」を挙げる回答が多い―ことなどを紹介した。
 今村聡副会長は、医師の副業・兼業に何らかのルールを設けるに当たって医師の意見を聞くよう、社会保障審議会医療部会で厚労省に要請した結果、1月10日の労働政策審議会労働条件分科会で日医の意見を述べる機会を得たことを報告(詳細は別記事参照)。今後も、一般の労働者と同じような副業・兼業への対応を医師の働き方に単純に当てはめることのないよう働き掛けを行っていくとした。

医師の働き方改革で委員会を新設

 協議会の最後にあいさつした横倉会長は、「人口構成が大きく変化し、人々の考えも多様化する中で、本日は地域医療提供体制を今後どのようにしていくべきか、良い議論ができたと思う」とした他、医師の働き方については、患者の医療へのかかり方という視点から議論することを目的として、労働法制の専門家を交えた新たな委員会を会内に設置し、年度内には意見を取りまとめる考えを明らかとした。

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