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令和2年(2020年)3月5日(木) / 日医ニュース

令和2年度診療報酬改定に関する答申まとまる

令和2年度診療報酬改定に関する答申まとまる

令和2年度診療報酬改定に関する答申まとまる

 中医協総会が2月7日、都内で開催され、令和2年度診療報酬改定に関する答申がまとまり、田邊國昭中医協会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)から、加藤勝信厚生労働大臣(代理:小島敏文厚労大臣政務官)に提出された。
 これを受けて、同日の夕刻には厚労省で三師会合同記者会見並びに日医・四病協団体協議会の合同記者会見が行われ、各団体から今回の改定に対する見解が示された。

 当日の総会では、厚労省事務局からこれまでの議論を踏まえて作成された個別改定項目、いわゆる短冊に具体的な点数が盛り込まれた診療報酬点数表の改正案が示され、診療・支払両側がこれを了承。答申には、「医師・医療従事者の働き方改革を推進し、地域医療を確保するための取組に係る今回改定での対応について、その効果等を検証・調査するとともに、適切な評価の在り方について引き続き検討すること。」等、20項目からなる附帯意見が付けられることになった。
 答申の取りまとめを受け、松本吉郎常任理事は診療側を代表して、働き方改革への対応について、民間医療機関も含めた地域医療で特別な役割のある医療機関に対し、確実に財政的な支援が行われるよう求めるとともに、病院の機能分化について、「大病院は急性期医療にしっかり対応して頂くというメッセージが明確に打ち出されたと理解している」と述べた。
 また、外来医療の機能分化において、紹介状なしで受診した場合の定額負担の対象病院拡大や、かかりつけ医機能の評価が行われたことにも言及し、「地域包括ケアシステムを進展させていくためには、機能分化・連携が不可欠である。こうした(施策による)メッセージが浸透し、着実に機能していくことを期待している」とした。
 なお、日医では、今回の答申取りまとめを受けて、改定の内容を伝達することを目的とした、都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会を3月5日にテレビ会議システムを利用して開催することにしている(本紙4月5日号で詳報の予定)

三師会合同記者会見

「医師等の働き方改革の推進」に向けた評価の新たな第一歩―横倉会長

200305a2.jpg 三師会合同記者会見には、横倉会長、堀憲郎日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長を始め、中医協委員である、今村聡副会長、松本・城守国斗両常任理事、林正純日歯常務理事、有澤賢二日薬常務理事が出席した。
 横倉会長は冒頭、今回の改定について、「昨年度、各都道府県で策定された地域医療構想が実行に移され、2025年に向けた新しい医療提供体制に踏み出したことに加え、今回改定では、『医師等の働き方改革の推進』という大きなミッションへの対応という新たな第一歩を踏み出した」と述べた他、「地域医療を堅持していくためには、医療関係者の働きやすい環境づくりと医療機関の経営の安定化を図ることが不可欠であるが、今回は医師等の働き方改革推進への対応を明確にした上で、評価の第一歩を踏むことができた。少ない改定財源の中、それなりの評価ができた」との認識を示した。
 また、超高齢社会に対応する上での最重要課題である地域包括ケアの推進に向け、「地域における医療資源を有効活用しながら継続して改革を進めるため、必要な財源配分を行うことが重要」とした。
 その上で、医科部分における今回の改定のポイントとして、(1)医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進、(2)外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の評価、(3)薬価制度の見直し、(4)医療技術の適正評価、(5)重症度、医療・看護必要度の見直し―の五つを挙げた(日医・四病協合同記者会見で詳説)。
 更に横倉会長は、昨年12月に中間報告が取りまとめられ、本年6月には最終報告が取りまとめられる予定の政府の「全世代型社会保障検討会議」の議論についても言及。最終報告の内容は「骨太の方針2020」を経た上で、年内にも関連法案が提出される見込みであるとして、「最終報告に向けては、更なる紆余曲折(うよきょくせつ)があると思われる。しかし、そもそもわが国の社会保障は、自助・共助・公助で成り立っていることから、それぞれのバランスをとりながら、時代に対応できる給付と負担のあり方という視点で議論することが非常に重要になる」と強調した。

 

日医・四病協合同記者会見

今回改定の五つのポイントを解説

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 引き続き行われた日医・四病協合同記者会見には、日医から横倉会長、今村副会長、松本・城守両常任理事が、日本病院会から相澤孝夫会長、島弘志副会長が、全日本病院協会から猪口雄二会長が、日本精神科病院協会から山崎學会長が、日本医療法人協会から加納繁照会長がそれぞれ出席した。
 横倉会長は、三師会合同記者会見で挙げた五つのポイントを解説。
 (1)では、地域の救急医療の維持のため、診療報酬プラス0・08%に当たる公費約126億円に加え、「地域医療介護総合確保基金」として公費約143億円が措置され、救急用の自動車や救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間2000件以上の医療機関は診療報酬で評価される一方、2000件未満で地域医療に特別な役割がある医療機関などは基金の補助対象となったことに触れ、「基金は都道府県からの要望に応じて支払われるものであり、民間医療機関は活用しにくいものとなっている」と指摘。
 この点については、中医協の議論の中で厚労省医政局から、従来の基金とは異なる専用の新たな区分を設定することや、厚労省が都道府県に対して、対象になる可能性がある医療機関数をあらかじめ提示・説明し、民間医療機関も含めた地域医療で特別な役割のある医療機関に対し、財政的な支援が確実に行われるよう対応する旨の答弁があったことを紹介し、今後も地域の実情に応じて適切に基金が使えるように、改めて求めていくとした。
 その他、長時間労働改善のための取り組みやタスク・シェアリング/シフティングのためのチーム医療等の推進が行われたことについては、「負担軽減や働き方改革に関しては、引き続き対応していくべきものである」との見解を示した。
 (2)では、平成26年度改定で地域包括診療加算及び診療料を創設して以降、改定の度に評価の拡大が行われてきたかかりつけ医機能の評価について、今回、①複数診療所の連携によって対応する時間外対応加算3の施設でも算定可能となるよう施設基準を緩和し、小児科外来診療料や小児かかりつけ診療料の対象年齢を6歳未満にまで拡大②紹介先の医療機関から紹介元のかかりつけ医機能を有する医療機関へ情報提供を行った場合の新たな評価として診療情報提供料(Ⅲ)を新設③調剤料や一般名処方加算の増点④外来医療の機能分化を推進するため、紹介率・逆紹介率の規定を満たさない病院の長期処方に対する処方料・処方箋料・薬剤料の減額措置の適正化―が行われたことを評価。
 その上で、③については、「長年据え置かれてきた調剤料を、実に20年ぶりに増点することができただけでなく、幅広く実施される各科医師の基本的な処置、手術、検査などもしっかりと評価されている」と述べた。
 ④については、「大病院から診療所、中小病院への外来患者の誘導策の実効性の向上を図るとともに、今回、紹介状なしで受診した場合の定額負担の対象病院が、特定機能病院及び一般病床200床未満を除く地域医療支援病院に拡大された」と説明。「この選定療養の仕組みは、そもそも中医協でしっかりと議論されたものであり、外来機能の分化・連携が進み、患者の受療行動を変えることができれば、医師の働き方改革にもつなげることができる」との見方を示す一方、今後、更なる対象範囲の拡大については慎重な姿勢を示した。
 更に、こうした外来医療の機能分化が進む中、かかりつけ医機能の定着に一層力を入れていくとするとともに、「地域の身近なかかりつけ医を、入院機能を持つ地域密着型の有床診療所や中小病院がバックアップし、更にそれを後方支援する特定機能病院を始めとした大病院が高度急性期や専門的な医療機能を担うことにより、それぞれの医療機関が連携して地域の医療提供体制をつくっていくことが重要になる」と強調した。
 (3)では、「薬価制度の抜本改革が行われた前回改定で『引き続き検討する』とされた事項を含め、改革が継続されている」との認識を示し、特に新薬創出等加算制度において、先駆け審査指定品目や革新性の高い効能追加品目を新たに対象とするなど、イノベーションに配慮しつつ、効能変化再算定の特例を設け、急激に市場規模が拡大する品目に対する再算定ルールを厳格化したこと等を評価した。
 (4)では、「医学・医療が日々進歩する中で、診療報酬改定でその進歩に対応し、国民に対して、より安心・安全な医療を提供していく必要があるのは当然」とした上で、改定ごとに各学会等から提案され、医療技術評価分科会で検討の上、新規技術の評価及び既存技術の再評価が行われ、財源が少ない中でも医師の技術が適切に位置づけられたことを評価した。
 (5)では、将来の医療ニーズが大きく変動・多様化する一方、支え手は急速な減少が見込まれることから、前回改定では、入院医療の評価体系の再編・統合という、中長期的な方向性を踏まえた大きな改定が行われたことを説明。今回の改定で公益裁定を経て了承された、急性期一般入院料1の看護必要度Ⅰの該当患者割合31%という数値については、厳しい水準であるとの見方を示した。
 また、改定の度に要件が改変される入院基本料については、「医療現場はそのたびに対応に迫られ混乱している。各地域において必要な医療提供体制を検討し、診療報酬は地域医療構想が描いた医療提供体制を推進するよう、"医療機関がどのような医療機能を選択したとしても経営が成り立つように寄り添う"という理念を守るべき」と述べ、入院基本料の改正の朝令暮改(ちょうれいぼかい)をやめ、改めて中長期的な方向性で考えていくことを要望した。

病院団体からもさまざまな意見

 続いて、四病協の各団体から今回の改定に対する考えが示された。
 相澤日病会長は、「今回改定は働き方改革に大きな焦点があり、救急医療を行い、手術数の多い病院に診療報酬が手当てされた。これらの病院が、これからも医療を継続できるようになることを心より望んでいる」と述べるとともに、病院の機能分化が以前よりもはっきり示されたとした。
 また、病院の施設基準については、複雑になり過ぎているとして、簡素化を求めた。
 猪口全日病会長は、「今回の改定で、地域医療体制確保加算が新設されたことは非常に大きい」と述べる一方、動き出してみないと分からない部分も多いとした。
 また、医療従事者の常勤・専従の考え方が変わってきたことにより、病院団体や個々の病院がそれぞれ工夫をしていくチャンスができたと評価した他、地域包括ケア病棟については、考え方が多少は整理されたものの、いまだに複雑であるとの問題意識を示した。
 山崎日精協会長は、前提となる診療報酬改定の財源のあり方について疑問を呈した上で、「今後、精神科病院の経営が厳しくなってくるのではないか」と述べた他、人材確保への懸念も示した。
 加納医法協会長は、今回新設された項目等について、「高齢者の救急医療における二次救急は、どこにおいても重要になってくるという点数配置となっている」と一定の評価をする一方で、救急車等の搬送件数でラインが設けられたことに対しては、搬送先選択時の判断に注意が必要とした。
 更に、入院基本料については、経費が上がる中、点数が変わらずに要件が厳しくなったことから、経営への影響を懸念した。

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