閉じる

令和2年(2020年)6月12日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース

2018・2019年度医療IT委員会答申「そもそも医療の IT化とは何か―原点から考え、そして未来へつなぐ―」について

 石川広己常任理事は、6月10日の定例記者会見で、医療IT委員会が会長諮問「そもそも医療のIT化とは何か―原点から考え、そして未来へつなぐ―」を受けて取りまとめた答申を、5月21日に塚田篤郎委員長(茨城県医師会常任理事)から横倉義武会長に提出したことを報告し、その概要について説明した。

 答申は、(1)はじめに、(2)原点から考える―我が国の医療のIT化はどのように進展してきたのか、(3)現在の取り組み―医療のIT化の現状と今後の課題、(4)未来につなぐ―医療のIT化はどこに向かうべきなのか―で構成され、巻末補足として、初診からのオンライン・電話による診療について、診療報酬上の臨時的な取り扱いが承認されたことを受けて、「ポスト・コロナ時代におけるオンライン診療のあり方」を追記している。

 (2)では、我が国の医療のIT化の歴史を概説。医療現場の事務の効率化に始まり、医療情報の電子化、更にはその情報を集積、ビッグデータ化し利活用するという流れで進展してきた状況は、医療情報を「個益」から「公益」に資するためへと展開してきた流れでもあると説明。

 今後、「益」の増大に向けて必要な施策としては、保健医療記録共有サービスやPHRの構築、次世代医療基盤法やデータベースの連結解析などが挙げられるが、それらを活かすためには、全国保健医療情報ネットワークや医療等IDの整備、地域医療連携ネットワークは欠かすことができないとしている。

 (3)では、日医の取り組みである、「ORCAプロジェクト」「認証局と医師資格証」「次世代医療基盤法への対応」の3項目について、それぞれの経緯や検討内容などを解説している。

 また、国のデータヘルス改革と各種施策として、現在厚労省が進めている「データヘルス改革」とそれに基づく各種施策、「オンライン資格確認」「全国保健医療情報ネットワーク」「医療等ID」「PHR」について概説するとともに、地域医療連携ネットワークに関しては、山形県、東京都、石川県、島根県、熊本県のネットワークの特徴を紹介・比較しながら、今後取るべき対応等について触れられている。

 (4)では、これまで医療になかなかITが活用されてこなかったのは機微性が高い医療情報を"守る"ことに力点を置いてきたからであるとし、それは正しい方法だったことを確認した上で、技術の進歩により医療情報を保護しつつ、医師や関連職種と情報を共有できる時代になってきたことから、ITを用いた情報共有は今後の医療において非常に重要な役割を果たしていくものであるとして、まず一歩先に進んでみることを提案している。

 また、患者のQOL向上のためには、病気になる前からの医療の介入によって行動変容を促し、生活習慣病予防につなげることが課題になると指摘。その解決のためにはIoTデバイスで収集・蓄積された個人の健康情報と、EHRにかかりつけ医が提供する正確な医療情報を組み合わせて、真に個人の健康に資するPHRを構築し、それを医師が上手に活かすべきとしている。

 更に、IoTデバイスで集まる膨大な情報を処理するためにはAIが、そのAIを進化させるためにはEHRとPHRを元にしたビッグデータがそれぞれ必要であり、進化したAIが示す可能性や選択肢の中から、責任を持って最適解を選び出すためには、医師は従来以上に自己研鑽を積む必要があるとした上で、結論として、「医療のIT化が未来につなぐもの―それは先達がこれまで培ってきた"医の心"に他ならない」と、締めくくっている。

 同常任理事は今回の答申について、「過去10年間の医療IT委員会で議論したことをまとめたものになっており、今後、頂いたさまざまな提言を基に、医療ITの諸課題がより良い形で解決できるよう、日医として取り組んでいく」とした。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる