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令和2年(2020年)10月5日(月) / 日医ニュース

日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の目的

 この度、日医総研副所長に就任いたしました原祐一です。本紙面をお借りして、日医総研のご紹介をさせて頂きます。
 日医総研は坪井栄孝会長時代の1997年、日本医師会内に設立された研究機関で、目的は①国民に選択される医療政策の企画立案②国民を中心とする合意の形成③信頼できる正確な情報の提供―です。

研究活動内容

 日医総研は日本医師会内に設置された常設の研究機関であり、研究成果は地域医療の向上に資するとともに、診療報酬改定や医療関連法の改正などの際に大きな武器となってきました。
 研究成果としてワーキングペーパー(2020年9月現在、446編)、リサーチエッセイ(同、90編)を公表しています。研究内容は、医療経済、医療機関経営、医事法制、医療倫理、健康教育、糖尿病DB、医療の意識調査、医療のアクセス状況、有床診療所、医療とICT、新型コロナウイルス感染症の対応など多岐にわたっています。
 また、研究成果であるワーキングペーパーは全国の医育機関や大学院などで教材としても使われています。

最近の主な研究成果

 日医総研はワーキングペーパーとリサーチエッセイをそれぞれ年に10本から20本程度発表しています。その中からいくつかご紹介します。
(1)リサーチエッセイNo.80『オンライン診療についての現状整理』(前田由美子)
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年4月にオンライン診療が時限的・特例的に緩和され、初診患者へのオンライン診療が可能になった経緯をまとめた上で、足下の有事のエビデンスをそのまま、収束後のオンライン診療のあり方の検討に用いることには注意が必要であるとしています。
 また、オンライン診療の評価について、医療機関へのアクセスが変わるだけなのか、診療技術そのものが対面診療とは異なるのかという点で、関係者の間に意見の相違が見られることを紹介しています。
https://www.jmari.med.or.jp/research/essay/wr_698.html

(2)ワーキングペーパーNo.446『持分の定めのない医療法人への移行に関する課題の考察』(原祐一、堤信之、坂口一樹、石尾勝)
 医療の非営利性を担保するために、2007年度より新規の医療法人は持分の定めのない法人が原則となりました。厚生労働省は持分ありの医療法人に対してアンケート調査を実施しましたが、逆に持ち分を既に放棄した法人についての調査はあまりありません。
 本調査は四つの医療法人の理事長に対して、持分放棄を決定した経過をヒアリングしたものです。
https://www.jmari.med.or.jp/research/working/wr_704.html

(3)ワーキングペーパーNo.436『2019年(第6回)有床診療所の現状調査』(江口成美)
 有床診療所の運営、財務、入院患者像の実態についての定点調査であり、今回で6回目となります。コロナ禍以前の結果でありますが、有床診療所の経営の悪化、看護職員の確保困難、医師の勤務負担、患者数減少などの実態を明らかにしています。
 病床再編の中、身近な入院施設としての有床診療所を存続させ、地域包括ケアの中で活用していく必要性についても論じられています。
https://www.jmari.med.or.jp/research/working/wr_688.html

今後の方向性

 日医総研は日本医師会の医療政策をバックアップしているシンクタンクです。
 しかし、その知名度をより高めるためにも更なる広報活動が必要と考えており、今後は定期的に『日医ニュース』での情報提供、『日本医師会雑誌』への論文掲載などを行い、会員への広報を積極的に行っていきたいと考えています。
 会員の先生方におかれましても、研究のテーマについてのご提言がございましたら、ぜひご教示頂きたいと思います。また、若手の研究者も若干名募集しておりますので、ぜひご連絡下さい。
問い合わせ先:
E-mail:saiyou@jmari.med.or.jp
 現在、中川俊男所長の下、副所長1名、主席研究員2名、主任研究員14名が在籍しておりますが、今後も日本の医療に対して政策提言を行い、地域医療の更なる向上を図っていくよう努めて参る所存でおりますので、引き続きのご支援をお願いいたします。
 (日医総研副所長 原祐一)

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