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令和6年(2024年)5月5日(日) / 日医ニュース

地域医師会と一丸となり取り組みを一層強力に推進していく決意を表明

地域医師会と一丸となり取り組みを一層強力に推進していく決意を表明

地域医師会と一丸となり取り組みを一層強力に推進していく決意を表明

 第155回日本医師会臨時代議員会が3月31日、日本医師会館大講堂で開催された。
 当日は、執行部から令和6年度日本医師会事業計画及び予算の報告を行うとともに、代議員から寄せられた19の質問に回答(別記事参照)。安田健二石川県医師会長からは令和6年能登半島地震の被災地支援に対する感謝の言葉が述べられた。
 冒頭あいさつした松本吉郎会長は、次期においても地域医師会と一丸となり、国民の信頼を得るとともに、医師の先生方の期待に応えるため、取り組みを一層強力に推進していく決意を表明した。

令和6年能登半島地震

 1月1日に発生した能登半島地震につきましては、犠牲になられた方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された皆様へのお見舞いを申し上げます。
 これまで日本医師会は、都道府県医師会のご協力の下、石川県能登半島の被災地や金沢以南の1・5次避難所、2次避難所に、日本医師会災害医療チーム「JMAT」を派遣して参りました。
 これまで約1000チームがJMATとして現地で活動し、延べ派遣者数は約1万2000人となりました。
 更に、被災状況等について迅速な情報共有を行うため、1月より災害対策本部会議を開催している他、3月8日には武見敬三厚生労働大臣と会談し、令和6年能登半島地震により被害を受けた医療機関等の早期復旧及び再建の実現に向け、補助金等の支給、医療・介護従事者の確保等を求める要請書を手交いたしました。
 引き続き、医療ニーズの変化を踏まえつつ、石川県医師会と連携を取り、支援のあり方について中長期的な視点に立って、被災地の医療が復旧するまで息の長い支援を続けて参ります。
 また、日本医師会が協力を求めていた、被災された医療機関及び医療従事者への支援金は、全国の医師会並びに会員の先生方、更には台湾医師会、そして日本医師会のホームページを通じて呼び掛けを行ってきた結果、国民の皆様から総額で5億6400万円を超える支援金が寄せられました。本日ご出席の代議員の先生方におかれましては、ご協力頂き、誠にありがとうございました。
 この支援金につきましては、被災地の医療提供体制を1日でも早く復興できるように役立てて参ります。
 今後、日本医師会は災害対策基本法上の指定公共機関として、今回の経験を踏まえて、日本医師会と被災県との緊密な連携の下でJMATの統括機能を強化し、また、迅速な活動ができるよう、訓練や研修の実施、体制づくり等を行っていきます。
 そして、災害時には、被災地や全国の都道府県医師会と連携し、多数のJMATを効率的に派遣できるようにして参ります。

組織強化

 組織強化の取り組みにつきましては、本会常勤役員による都道府県医師会役員への訪問・面会など、本会が実施するさまざまな取り組みに対し、各地域医師会の多大なるご理解とご協力を得る中で、その活動を深めて参りました。
 組織力を測る上では、会員数が一つの大きな指標となりますことから、現在、会費減免の対象となる医学部卒後5年目までの若手医師を中心に入会促進を行っております。
 その結果、昨年12月1日時点で、日本医師会の会員数は17万5933人となり、前年比で2172人増の成果を上げました。会員数が2000人以上の増加となるのは、平成13年度以来、22年ぶりのことです。
 また、3月19日に公表された「医師・歯科医師・薬剤師統計」、いわゆる三師統計の結果を踏まえますと、日本医師会の組織率は51・25%となり、20年ぶりに上昇に転じました。各地域医師会のご協力に改めて深く感謝申し上げる次第です。
 会費減免期間中に入会頂いた先生方には、会費減免期間終了後も、医師会員として定着して頂くことが重要です。そのため、日本医師会、都道府県医師会、郡市区等医師会が一体・一丸となって、好事例等を共有しながら、医師会員であることを実感できるような取り組みを、積極的に進めていきたいと考えておりますので、より一層のお力添えをお願いいたします。
 また、3月15日には、第118回医師国家試験における9547人の合格者が発表されました。4月から新たに医師として就業される方々に医師会へ入会頂くことは極めて大切です。
 都道府県医師会の役員の先生方におかれましては、この機を逃さず、入会に向けて尽力頂きますよう、重ねてお願い申し上げます。
 一方、組織強化の取り組みは、入会促進にとどまるものではございません。最も大切なことは、会員数のみを重要視するのではなく、医師会活動の意義や重要性を再確認し、医師会の存在意義に対する理解を改めて深めると同時に、それを広く周知することです。
 換言すれば、そうした医師会活動の理念を共有する中で、各医師会及び各会員の有機的連携に基づく発信力や実現力を高め、医療を取り巻く難局を乗り越えていくための力を一段と強固にしていくことが重要です。
 また、その過程においては、医師会活動がどれだけ各地域の医療に根付き、国民医療を支えているのかということを、医師会に未入会の医師や国民に継続的に伝えていく中で、医師会活動への理解と更なる参画を促していかなければなりません。
 なお、新会員情報管理システム「MAMIS」につきましては、本年夏頃に一部の医師会への先行導入を予定しております。その後、体制を整えつつ希望する医師会への導入を開始し、来年3月末までに全医師会への導入と移行完了を目指しておりますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
 今後、日本医師会は、より一層、医師会のプレゼンスの向上と会員数の増加・定着が相乗効果を生むよう、組織強化に向けた取り組みを続けて参りますので、先生方におかれましても、引き続きお力添えを賜りたく存じます。

新興感染症対応

 新興感染症対応につきましては、昨年11月には、厚労省と日本医師会を含む八つの医療関係団体と共に「ポストコロナ医療体制充実宣言」を公表し、次の感染症拡大への備えを先んじて実施するため、新興感染症対応と医療DXの推進を集中的に進めることを表明いたしました。
 そして、本年4月より、改正感染症法に基づく、医療措置協定が施行されるとともに、第8次医療計画が開始されます。それに先立ち、日本医師会は3月24日に、診療所の新興感染症に対する総合力を一層高めることを目的として、地域医師会のためのモデル研修「診療所における新興感染症対策研修」を実施いたしました。
 思い返しますと、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、昨年5月に感染症法上の位置付けが5類感染症に変更されました。わが国は国際的に見ても、新型コロナによる人口当たり死亡者数や陽性者の致死率の低さなど、特筆すべき医療実績を積み上げてきました。
 これは、全国の医療機関の先生方による懸命な対応のたまものと考えており、改めまして深く感謝申し上げます。
 特に、診療所で対応した新型コロナ患者及び新型コロナ疑い患者数は約7700万人に上る上、これまでの新型コロナワクチンの接種回数は約4億3500万回に達しました。
 更に、新型コロナ対応における外来対応医療機関(診療・検査医療機関)の数は約5万施設となりましたが、これを今後もしっかりと増やしていくことが必要です。
 このような、新型コロナに懸命に対応した医療機関や医師、医師会の活動について、国民の皆様に広く知って頂くことも重要です。
 今後、我々が発熱外来等で患者をしっかり診ていく姿勢を示すことが、国民・患者からの更なる信頼獲得につながるものと考えております。先生方にはコロナ禍においても大変なご尽力を賜りましたが、引き続きご協力の程よろしくお願い申し上げます。

地域に根ざした医師の活動

 かかりつけ医機能につきましては、日本医師会の提言に沿った方向で法律が成立し、現在、厚労省において、かかりつけ医機能報告制度等の施行に向けて「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」が設置され、2名の常任理事が議論に参画しております。
 日本医師会は、かかりつけ医機能が発揮される制度整備の方向性として、「一人の医師や一つの医療機関ではなく、複数の医師や複数の医療機関が地域を面として支える」「人口や医療従事者が減少していく中で、地域の医療資源をうまく活用・開発して地域に必要な機能を実現するため、多くの医療機関が積極的に参加できる」「医師を始めとする医療従事者や医療機関が、それぞれの役目に応じてできることを拡大していく努力をする」の3点を主張して参ります。
 一方、代議員の先生方を始めとする会員の先生方におかれましては、地域住民の健康を守るため、日頃から地域にどっぷりとつかり、さまざまな活動を通じて地域を面として支えて頂いており、郡市区等医師会はそうした活動に深く関与しておられます。
 昨年より、国民の皆様にそうした医師会活動を知ってもらうため、「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」を開始し、その一環として、10月11日には第1回シンポジウム「有事の医師会活動~地域、住民を守る活動~」を開催し、大規模災害時やコロナ禍での医師会活動について、情報を発信いたしました。更に、3月10日には第2回シンポジウム「こどもの健康と生活~医師会はどうかかわる?」を開催し、子どもの安心・安全を守る取り組みや医療的ケア児を支える活動について、医療関係者のみならず、国民の皆様に対しても広く情報を発信いたしました。
 今後も引き続き当該プロジェクトを進め、かかりつけ医機能の推進を図るとともに、面として地域医療を支える機能をより高め、国民の信頼に応えて参ります。

医療DX

 医療DXについては、日本医師会が目指す「国民・患者の皆様への安心・安全でより質の高い医療提供」と「医療現場の負担軽減」の実現に資するものでなければなりません。
 また、診療報酬改定DXの一環として、今回の令和6年度診療報酬改定より、施行時期が2カ月後ろ倒しになりました。本件につきましては、医療現場にその効果がどうもたらされるのか、状況を注視しながら、必要な対応を行っていくべきだと考えております。
 今後、政府に対しては、サイバーセキュリティ対策も含めた、医療DXに掛かるコストに対する公的支援の拡充、並びに現場の負担軽減に向けた取り組みと情報発信を引き続き求めて参ります。

医師の働き方改革

 本年4月より医師の働き方改革の新制度が施行され、医師の時間外・休日労働時間の上限規制が開始されます。
 医師の働き方改革では、(1)医師の健康確保、(2)地域医療の継続性、(3)医療・医学の質の維持・向上―の三つの重要な課題にしっかりと取り組むことが求められます。
 日本医師会は、厚労省から指定を受けている医療機関勤務環境評価センターにて484件の評価受審申込を受け付けるなど、医療機関及び勤務医の先生方を支援し、本年4月からの改革を無事に迎えられるよう尽力して参りました。予定どおり4月1日から新制度の施行を迎えられることになったのは、日本医師会の取り組みに意義があったからだと考えております。
 これまでも、地域医療に影響が出ないよう、制度設計に取り組んで参りましたが、引き続き地域への影響を十分に注視しながら、しっかりと取り組んで参ります。
 また、今後も、地域医療提供体制を守るため、大学病院や病院団体などの医療関係者と共に、新制度施行後の状況を把握・検証すると同時に、浮かび上がってくるであろう課題への対応に取り組んで参る所存です。

令和6年度診療報酬改定

 令和6年度診療報酬改定につきましては、日進月歩する医療を全ての国民に提供するためだけではなく、今回は医療・介護の就業者約900万人に対して、公定価格の引き上げを通じた賃上げの実現や、過去30年間、類を見ない急激な物価高騰によるインフレへの対応を要する、極めて難しい改定でありました。
 当初は、財務省から診療所の報酬単価を5・5%程度引き下げ、診療報酬の本体部分の改定率を1%引き下げることを求められるといった厳しい状況の中、物価・賃金の動向、保険財政や国の財政など、さまざまな主張や議論を踏まえた結果、賃上げ対応としてプラス0・61%、入院時の食費対応としてプラス0・06%、一般的な改定分としてプラス0・46%、これらを合わせてプラス1・13%となった一方、適正化としてマイナス0・25%とされ、結果として本体改定率はプラス0・88%となりました。
 こうした結果を得られましたのは、財務省の厳しい主張に対し、中医協でしっかり反論し、論破できたことに加え、各地域において、都道府県医師会・郡市区等医師会が、医政の重要性を踏まえて、医療が置かれている厳しい現状や医療施策への更なる理解を求める活動を広く行って頂いたことが大きな力になりました。
 物価・賃金の動向を踏まえれば、十分に満足できるものとは言えない部分もありますが、多くの皆様のご支援・ご協力に改めて感謝申し上げます。
 今後も医療費の財源につきましては、税金による公助、保険料による共助、患者の自己負担による自助、これら三つのバランスをとることが大切です。その際、自助ばかり増やすことはあってはなりません。
 一方で、新年度からの更なる物価高騰への対応など、6月頃に閣議決定が見込まれる「骨太の方針」等に向けて、診療報酬のみならず、補助金や税制措置など、あらゆる選択肢を含めて対応頂くよう、政府に働き掛けて参ります。

医薬品・原材料の安定供給

 将来を見据え、海外で生産している医薬品の原材料の供給が滞った場合、国内の医薬品供給が不安定化します。入手困難や価格高騰といった状況を回避するためにも、国産回帰や、それが実現するまでは医薬品の原材料等に係るサプライチェーンの多様化等の対応も必要になると考えております。
 他方、「経済安全保障推進法」では、抗菌性物質製剤が特定重要物資に指定され、安定供給確保に向けた支援が始まっています。しかし、せき止め薬など日常診療で頻用する医薬品に対しても、安定供給に向けた支援を行うべきだと考えております。
 今後、これらの取り組みを推進するためにも、国に対しては補助金や税制を活用した支援の検討を促して参ります。

今後の会務運営

 2年前の会長就任時における所信表明では、医師会運営に当たって、「地方から中央へ」「国民の信頼を得られる医師会へ」「医師の期待に応える医師会へ」「一致団結する強い医師会へ」を四つの柱として進めて参りたいと述べさせて頂きました。
 日本医師会長に就任してからの2年間、会務の運営方法等の再構築に尽力し、厚労省を始めとする関係省庁との適切な連携を進めるとともに、政府・与党とのより強固な関係の構築に努めて参りました。
 また、日本医師会と地域医師会との連携についても手応えを感じており、こうした連携は本当に大切だと思っております。
 更に、日本医師会には多くの会内委員会を設置し、現場の情報収集を大切にしておりますが、地域医師会から選出された委員の先生方には大変有意義な議論をして頂いており、厚く御礼申し上げます。
 また、「現場の声を直接伺うためにも47都道府県医師会に積極的にお伺いしたい」と述べさせて頂きましたが、ほぼ全ての都道府県を回らせて頂くばかりでなく、全国の都道府県医師会長とは対面や電話等を通じて緊密に連絡を取らせて頂いています。
 次期においても、引き続き日本医師会長として、地域医師会と共に一丸となって、国民の皆様から更なる信頼を得られるよう、そして医師の先生方からの期待にまた一段と応えられるよう、これらの取り組みを一層強力に推進して参りたいと考えております。

おわりに

 現在、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの紛争、また近隣国の脅威など、国際的にも予断を許さない状況にあり、更に地球温暖化等による異常気象の影響等も注視していく必要があります。そして、日進月歩する医療界において、これからさまざまな変化を迎えることになります。
 今後とも、国民医療を守る団体と共に、医療界は一体・一丸となって、国民の生命と健康を守って参りたいと考えております。
 結びに当たり、今後とも本会執行部に対して皆様からの絶大なるご支援を賜りますよう切にお願い申し上げまして、私からのごあいさつとさせて頂きます。

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