日医ニュース 第865号(平成9年9月20日)

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勤務医座談会─その2
勤務医と地域医療

《出席者》

日本医師会勤務医委員会委員長・大阪市立住吉市民病院長
濱田 和孝(司会)
宮崎市郡医師会病院外科医長
島山 俊夫
盛岡赤十字病院第一小児科部長
寺井 泰彦
神戸中央市民病院副院長・消化器内科部長
藤堂 彰男
前橋赤十字病院副院長・脳神経外科部長・救急部長
宮崎 瑞穂
本荘第一病院消化器科長
村田  誠
岩美町国民健康保険岩美病院長
渡辺 賢司
日本医師会勤務医担当常任理事
津久江一郎

各医療機関における勤務医の意識

 濱田 病院と地域のかかわりとのお話をいただきましたが,規模によっていろいろだと思います.勤務医自身が何かそういうシステムなり,その病院の地域医療との関係なりで,非常に喜んで働いている,あるいは不満に思っているようなことを,もしご存じだったらお聞かせください.
 渡辺 うちの病院は小さいので,そこへ勤めているということは,地域医療に直接かかわるということで,面白さもある反面,町立ですから,行政を通さないと何もできないということがあります.
 去年,医療監視によって医師数不足を指摘され,自主返還という事態になり,なかで働いている者としては,ものすごく忙しかったのに,揚げ句に返還までさせられて,やりきれないというか,自分たちの苦労が水の泡になったようで,そういう意味でのやりがいのなさを感じます.
 濱田 週の勤務時間,当直はどの程度ですか.
 渡辺 当直は,医師の数が少ないものですから,私で月に3回から4回,若い人はだいたい6回です.勤務時間といいますと,外来も毎日やっています.
 濱田 この前アンケートを取りましたら,週に45時間以上の人が多かったですが.
 渡辺 いや,みんな当然そうだと思います.私は外科ですが.外科の医師が少ないものですから.毎日出て.手術は午後するとか,手術がない日に外仕事に出るという格好でやっています.ほかの内科の医師も,外来がなければもちろん検査等,フルに組んでいますので,駆け足で動いているというのが実情です.
 濱田 それだけ働いても,生き残りをかけないといけないということですか.
 渡辺 そう思います.
 村田 待遇,給与および勤務時間体系に関しては,いろいろ個々不満があると思います.例えば,人間ドックをやっても,早朝,日曜出勤の手当てがある程度に抑えられているといったことに対しての不満が蓄積しているようですが,そこは院長の個人的魅力でカバーされているところがあります.
 私の病院は,常勤医師数は160床の割に19人という比較的恵まれた数だと思うのですが,外へ出ていっての診療が常にあるものですから,実際に院内にいる人数からいうと.ちょっと厳しい.週45時間という体制は守れていないと思いますし,病棟は主治医制なものですから,夜間,病棟の患者のことに関しては,当直医ではなく,主治医に連絡がくるという状況でやっていますので,そういう勤務状態に対しては不満を持っているんじゃないかと思います.
 しかし,公立の病院と違って,院長個人に対する魅力を非常に感じているということは大きなメリットだと思っていますし,それが働く原動力になっているんじゃないかと思います.
 宮崎 うちで若い人の意見を聞くと,まず,1つは,各部門で,科によって忙しい科と忙しくないところで差が大きく,それが待遇にはほとんど響いてこないという不満が大きいです.特に,年配の先生で,入院患者もほとんど診ていない先生もいらっしゃるのですけれども,そのぶん若い人のほうにしわ寄せがいくと,そういう不満が非常にあります.
 あと,救急をやっていますと,どうしても救急の方でベッドを使ってしまったりして,落ちついた診療ができないということで,脳外科とか循環器科とかはいいのですけれども,逆に落ちついた仕事をやりたいと考えている科にとっては,病院救急にばかり力を入れているというような不満は,ときどき聞こえてまいります.
 濱田 島山先生はいかがですか.先生はずっと常勤なわけですか.
 島山 いや,私も含めてほとんどが大学派遣です.私もまだ大学に在籍しているのですけれども,内科・外科関係は,医長は出向でも固定に近い出向が何人かいます.あとは,研修医以上で,1年から半年ぐらいのローテーションでいつも若い人たちが来てくれるので助かっております.医師会病院に来れば,十分救急なども含めて手術できるということで,人気は高いほうだと思っております.
 給料面でも,大学のようにアルバイトに行く必要はありませんので,そんなに高い給料ではないかもしれませんが,一生懸命ずっとやれば,給与面は保障されているので,若い人にも人気は高いと思っております.
 寺井 若手の先生方はだいたい月4〜5回当直されて,アンケートによると,勤務時間はだいたい週48〜50時間ぐらいの実働時間という内容でした.
 医局の先生方の一番の不満は,救急医療に関してで,規模の大きい病院とうちの病院を比べた場合に,急患数がほぼ同じということがいつも問題になります.もう限界に達していて,疲れきっているようです.
 藤堂 私どもの病院をみまして,診療科によって忙しさが違うというのは多少はあると思うのですが,全体的に見て,みんな非常によく働いているなという気がします.
 一方,臨床研究,学会活動,教育研修などが盛んで,病院が学術振興費を出しておりますし,海外出張などにも多少なりとも補助が出ていますので,そちらに生きがいを感じているようです.
 また,一生懸命働いているのに,部門別原価計算をやると赤字という結果になるので,割り切れない気持ちは持っておりますが,医師の平均年齢が高いのは退職者が少ないということですから,それなりに満足しているのではないかなという気はしています.

認定医・専門医と地域医療

 濱田 この頃,委員会で,医療が細分化し過ぎている,例えば,認定医,専門医もあるけれども,内科でも消化管しか診れない医師もいて,広く診ないといけない部分と,非常に細分化しなければならない部分があると.その辺も含めて,認定医や専門医が地域で医療に携わるときに,勤務医としてどのようにやるべきか,その辺のところで何かお考えがありましたら.
 寺井 急患室では,専門性以前の大学の救急外来でトレーニングをしっかり受けなければいけないプライマリ・ケアのレベルが必要です.ただ,自分の病院のことを考えますと,他から患者さんを紹介していただくためには,その科のなかでもある程度の専門的知識がないと紹介をしていただけない.この相反する2つが日常的に常に要求されていると思うのです.
 結局,プライマリ・ケアをすべてできるということと,高い専門性を維持するということは非常にむずかしいと思います.
 濱田 先生は小児科ですが,小児診療が不採算であるので,病院によっては小児を切り捨てた.すると,それによって,だんだん一部の病院に患者が集まって来て,その病院で働いている小児科の医師は忙しい,というような問題が起こっているようなんですが.
 寺井 これは小児科仲間ではよく耳にします.小児科単独で黒字でいることは,病院では不可能といわれています.忙しい思いをしても,1人の稼働額は少ないのが小児科のような気がします.
 藤堂 専門領域で,ある一定の知識,技量を身につけたということを証明するものであるという意味づけはできると思うのですけれども,だからといって,診療報酬が上がるわけでもないし,その人の収入がよくなるわけでもない.逆に,専門医・認定医を維持しようと思いますと,更新のためには,いろいろな学会に必ず出席し,いろいろな仕事をしなければならないということで.専門医・認定医にとってはあまりメリットはありません.もう少しそういった裏付けとともに,病院に診療報酬の面で考えてもらえるように,医師会として頑張ってほしいという意見もございます.
 濱田 ただ,専門医・認定医といいましても,科によっていろいろなむずかしさと認定の仕方等がばらばらなところもありますね.津久江先生.日医では認定医制協議会などの話をされているように聞いていますが.
 津久江 1つの共通項としては,生涯教育のポイントが加算されるというものがあります.そういう方向にいかないと意味がないと思います.
 宮崎 うちの病院にも研修医が来ているのですけれども,ほとんど大学からの直接の入局で,最初から専門医の教育に入ってしまいます.ただ.救急をやっていると,いろいろ広い知識が必要ですので,当院ではスーパーローテイトを志向したいと思っています.
 村田 日医の生涯教育制度が学会を凌駕するぐらいに大きくなって,学会の単位が全部補えるぐらいになったら,非常に参加しやすくなると思います.ですから,お互いにリンクする部分をできるだけ多くして,地域にいながら,かなりの単位が取れるということになってくれるのがありがたいと思います.
 渡辺 私のところみたいに小さい病院でも.就職で来る人は.その前に専門医を取りたがります.普段は一般診療がほとんどですから,小さい病院で何の役に立つのだといっても,専門医をとってから就職ということを非常にしたがります.逆に,小さい病院に勤める以上は,それぐらい持っていないとプライドが許さないのかもしれません.うちの病院でも,専門医なり認定医を持っているから待遇が違うということはまったくありません.


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