日医ニュース 第883号(平成10年6月20日)

介護保険制度の概要

 わが国では、急速な高齢化の進展に伴って、寝たきりや痴呆の高齢者が急速に増えつつあります。このことは、介護期間の長期化や核家族化等に伴う家族機能の変化等とあいまって、介護問題をより深刻化させる一因となっております。

 介護が必要になった場合、訪問介護等の福祉サービスのほか、その心身の状況に応じた保健医療サービスが必要となりますが、現行の制度では、利用者の立場にたったサービス提供や効率的なサービス提供という観点からさまざまな問題点が指摘されております。

 こうした状況を踏まえ、現行制度の再構築を図り、社会全体で要介護者等の介護を支える仕組みとして創設されるのが、介護保険制度です。

 本資料は、介護保険制度の仕組みについて、その全体像(フロー)をまとめてみたものです。

 さらに、制度全体を、サービスの流れとお金の流れに分けたフローもまとめておりますので、介護保険制度のご理解にお役立てください。

 


図1.介護保険制度の全体像

 

 


関連用語の解説

1 要介護状態

 身体上または精神上の障害があるために、入浴、排泄、食事等の日常生活における基本的な動作の全部または一部について、厚生省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生省令で定める要介護状態区分のいずれかに該当するもの。

2 要支援状態

 身体上または精神上の障害があるために、厚生省令で定める期間にわたり継続して、日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態であって、要介護状態以外の状態をいう。

3 日常生活動作(ADL)

 人間が毎日の生活を送るための基本的動作群のことで、具体的には(1)身の回り動作(食事、更衣、整容、トイレ、入浴の各動作)、(2)移動動作、(3)その他生活関連動作(家事動作、交通機関の利用等)がある。通常ADLという場合、(1)と(2)をさす。Activities of daily livingの略。

4 手段的日常生活動作(IADL)

 人間が毎日の生活を送るための基本的動作群(日常生活動作;ADL)の中で、外出、買物、家計、服薬管理、料理等をいう。Instrumental ADLの略。

5 ケアマネジメント

 各利用者のニーズに沿った最適なサービスを提供できるよう、地域で利用できるさまざまな資源を最大限に活用して組み合わせ、調整すること。

6 ケアアセスメント

 事前評価、初期評価のこと。介護利用者が直面している問題や状況の本質、原因、経過、予測を理解するために、援助活動に先だって行われる一連の手続きをいう。

7 介護サービス計画(ケアプラン)

 要介護者等の心身の状況、生活環境、希望などを勘案し、利用する介護サービスの種類、内容、担当者などを定めた計画のこと。

8 居宅介護支援事業者(ケアプラン作成機関)

 介護支援専門員(ケアマネジャー)を配置して、ケアプランの作成を行う事業者。法人であることが原則。病院、診療所、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター等が兼務することができる。

9 介護支援専門員(ケアマネジャー)

 要介護者等からの相談に応じ、その方の心身の状況に応じた適切な在宅・施設サービスを利用できるよう、市町村や事業者、施設等との連絡調整を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識および技術を有する者として厚生省令で定める者をいう。

 


図2.要介護認定とサービスの利用方法

 

 

注1.要介護認定の訪問調査は、ケアプラン作成機関への委託も可能。
注2.要支援者・要介護者は、自分自身でケアプランを作成することも可能。
注3.ケアプラン作成費の本人負担はなし。在宅・施設サービスは原則1割負担。

 


図3.お金の流れ

 

 

注1.財政安定化基金の負担構成
 (1)国・・・・・・・・33%
 (2)都道府県・・・・・33%
 (3)第1号保険料・・・33%
注2.国の公費負担25%のうち、5%分は、市町村間の財政力格差の調整にあてる。