日医ニュース 第891号(平成10年10月20日)

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へき地医療に対する勤務医のアンケート調査
広島県医師会地域保健対策協議会

  広島県医師会では,平成9年度の県地域保健対策協議会(広島大学,広島県,広島市,広島県医師会の4者により,保健,医療,福祉に関する諸問題を討議・研究する組織)の事業として,中山間部の医療問題を取り上げ,検討した.その事業の一環として,勤務医のへき地医療に対する意識調査を昨年12月にアンケート方式により行ったので,その回答の一部を報告する.
 対象者として,広島県医師会に所属する勤務医のうち,20代から60歳以上までの各年代別に無作為に各100名を抽出し,アンケート用紙を配布した.
 回答者286名(57.2%)の性別は男性238名(83.2%),女性47名(16.4%).年齢別では,20代39名(13.6%),30代56名(19.6%),40代61名(21.3%),50代60名(21.0%),60歳以上70名(24.5%).所属別では,国公立病院127名(44.4%),私立病院73名(25.5%),国立大学病院30名(10.5%),診療科別では,内科80名(28.0%),外科45名(15.7%),整形外科19名(6.6%)などであった.
 国公立病院の回答者127名の年齢は各年代層に均等であり,私立病院73名の回答者は20代において少なく,大学病院30名の回答者は30代,40代であった.

へき地勤務について

 へき地勤務の「意志あり」とした回答者は286名中124名(43.4%),「意志なし」162名(56.6%)であり,「意志なし」とした回答者が多い.「意志なし」とした回答者は,家庭生活の問題22.8%,健康に対する不安21.1%,現職に満足15.7%,プライマリ・ケアに対する不安14.5%などを理由としている.「意志あり」とした回答者124名の年齢別,所属別割合を図1,2に示す.60歳以上の回答者に少ない理由は健康に対する不安が強いことを挙げている.
 国公立病院の回答者127名のうち約半数の62名が「意志あり」としているが,60代,40代の年齢層においては少ない.
 また,大学病院の回答者30名のうち11名が「意志あり」と回答しているが,若い年齢層で関心の高い勤務医が回答しているためであろう.

へき地勤務の時期

 「へき地に勤務するその時期はいつを考えるか」という設問に対しては,定年後56名(45.2%),条件が合えばいつでも45名(36.3%),50歳くらいから19名(15.3%)であった.
 「条件が合えば時期は問わない」とする回答者45名についてみると,20代,30代の回答者が28名,そのうち国公立病院の勤務医は17名であり,個別意見において記載されていたように,医師過剰時代を迎え,自分の進路について不安があり,積極的に地域医療に取り組もうとする意志の反映と考える.

へき地勤務の条件

 「へき地勤務の条件はなにか」という設問に対しては,「後方支援」「給与」「負担にならない勤務形態」が主である.後方支援,負担にならない勤務形態としては,「学会出張,病気になった時の代診の確保」「検診を主業務とする」などの意見が記載されている.また,「1人ではむずかしく,2〜3人でのグループ診療を」とする意見もある.
 最後に,これを調整する組織として,「県医師会内に人材バンクを設置してほしい」という回答もいくつかあり,現在の医師協同組合内にある人材バンクとは別の人材バンク運営委員会を,県の財政支援を受け,県医師会内に設置することが決定している.


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