日医ニュース 第905号(平成11年5月20日)

勤務医のひろば

21世紀の輝ける勤務医のために



 山口県の勤務医部会長として,県医師会の担当理事・勤務医部会の副会長や理事の方々とともに,現実の勤務医の諸問題を,医師会の組織強化というマクロの立場から,また,医事紛争や医師の裁量権,卒後教育などのミクロの立場から,問題の掘り起こしや情報の会員への周知や諸問題の解決などに努力している.
 厚生省の医療改革の方針を聞いても,全国医師会勤務医部会連絡協議会に出席しても,日医ニュースの勤務医のページを読んでも,現在の勤務医につきつけられている課題は深刻である.問題は,この深刻な状況を大部分の勤務医が知らないのか,自分の身近な問題として感じないのか,無関心のように思われる.
 315床の公的病院長の立場から見て,21世紀の勤務医が卒後教育を受け,仕事を続けていく環境は,現在よりさらに悪くなっていくように思われる.さまざまな枠をはめられた医療のなかで,過剰となっていく勤務医は,理想とする医療へのエネルギーを弱められていくであろう.
 10年前までは,私も医師であることに誇りと満足感を抱いていて,人にも医師になることを勧めていたが,最近は黙っている.病院経営の重圧のもとで,問題解決の方程式がない現状では,21世紀の勤務医の姿が輝いてこないからである.せめて,私の病院の医師たちが,のびのびと明るい気持ちで医療に励むのを守りたい.そのためには病院経営を良くすることだと自分にいい聞かせている.
 医療の実態経済が良くならなければ,どんなに理想論を唱えても無駄である.医療経済といえども,競争の原理にさらされていくのが,これからの市場経済のルールである.
 21世紀の勤務医が輝くためには,医師が大同団結して国民が納得する医療の姿を明示し,問題解決をみずからなさねばならない.人まかせでは,問題は解決しない.
 今日も21世紀の勤務医のために,呼びかけてもわずかしか集まらない勤務医との懇談会に,医師会加入のメリット論を唱えに行かねばならない.

(社会保険下関厚生病院長 福村昭信)


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