日医ニュース 第925号(平成12年3月20日)

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平成10・11年度勤務医委員会答申

諮問「医師会の組織強化への勤務医からの提言」
についての答申概要(1)

 勤務医委員会は,平成十年七月十七日の第一回委員会において,坪井栄孝会長より「医師会の組織強化への勤務医からの提言」について,諮問を受け,鋭意検討を行ってきたが,このたび,委員会の見解を取りまとめたので,その概要について二回に分けて報告する.

I. はじめに

 医師会の組織強化とは何か.視点はいろいろあるが,ここでは,医師会という組織体が,その理念の実現や目標を達成する力の強化と理解することが妥当と考える.
 以上の観点から,医師会の組織強化を,組織の拡大,組織の結束力の強化,医師会の信頼性の確立という立場から種々検討した.

II. 組織の拡大

 医師会の組織強化のためには,まず,会員数の増加であり,医師集団としての組織率の向上である.現在,医師のおよそ四〇%が未加入という現状では,そのパワー不足は免れない.
 勤務医にとって転勤は不可避であり,そのたびに所属医師会を変更しなければならない.手続き中の空白期間が,医賠責保険や医師年金の継続に不利益を及ぼすこともある.
 そこで,医師会入会・異動の簡素化が望まれる.その方法として,郡市区医師会間における共通会員制度や医師登録カードの導入が考えられる.
 また,予想以上に著しい会費の地域間格差のあることも問題であり,勤務医にとって,医師会費の高額負担と格差が医師会離れの一因でもあり,勤務医会費が標準化されれば,このような弊害は避けられる.
 さらに,未入会者への対応も,これまでのように,医師会入会のメリットのみを強調するのではなく,医師会の社会的役割や医師会活動の重要性を正しく伝達することこそ肝要である.
 医学教育,卒後教育の場も活用し,医師免許取得時,保険医資格取得時など,節目節目のあらゆる機会を通して,医師会の存在・意義を訴える活動が望まれる.

III. 組織力の充実・強化

 組織は大きいだけでなく,会員の結束力が重要である.医師会への強い帰属意識に立脚した団結力と実践力が望まれる.そのためには,組織は構成員の価値観を,構成員は組織の価値観や目標を大事にすることが重要であり,執行部のリーダーシップと会員の意思集約の絶妙なバランスこそ,強い組織力の原動力となろう.
一,会員の意識改革
 会員として,医師会に対し,何を,どのように求めるかではなく,どれだけのことを,どのように与えることができるかという視点で,医師会活動に参加すべきである.
 また,医師として,医の原点であるヒューマニズムに立脚した医療を心がけること,古典的な医の倫理から新しいバイオエシックスへの,あるいは与える医療から患者が参加する医療への意識の改革も必要となるし,さらに,人間の生存・健康に及ぼすすべての問題について,グローバルな視野で関心を寄せることも重要である.
二,医師会の意思決定への参加
 医療を取り巻く情勢が著しく変化しつつあるなかで,医療制度や医療提供体制は,その再構築が求められている.勤務医自身がその再構築に積極的にかかわっていく重要性はかつてないほどである.
 かねてより,日医が,役員,代議員,各種委員等に積極的に勤務医を活用すべきことを主張していたが,特に,現在会員の約半数を占める勤務医の代議員が二十人(六・三%)であり,半数を超える都道府県において,勤務医である日医代議員が選出されていないことは問題視されるべきであろう.
三,地域医療活動への参加と役割
 短期勤務や転勤の多い勤務医は,医師会活動,特に,地域医療活動に対する認識・関心が希薄になりがちであるが,高度な専門性や学術性を生かしつつ,地域医療に参加・貢献することの意義を認識すべく意識改革が求められる.
四,勤務医組織のあり方と意義
 勤務医の組織化により,医師会のなかに勤務医の存在の認識が高まり,勤務医も次第に医師会に関心を持つようになってきている.勤務医の組織は,医師会からの情報の伝達と勤務医の意見集約を行い,勤務医の意見が,将来の医療に反映されるよう提言をしていくべきである.医療連携上の役割も大きく,大学医師会の果たすべき役割も重要である.
五,勤務医の医政への関心
 勤務医は従来,医療現場において,さまざまな不満,不合理を感じながらも,制度的改善を図るべき具体的提言,行動を行う機会が少なく,また,これらへの関心もきわめて低かった.しかし,保健,医療,福祉すべての分野における変革の大きな潮流のなか,勤務医は,勤務医の視点で,現状の医療に関する問題点を見据え,医師会活動を通して,改革へ向けての提言を行っていく好機である.

勤務医委員会委員
◎池田 俊彦(福岡県医勤務医部会長)
○谷口  繁(岩手県医常任理事)
 秋山 昌範(国立国際医療センター
       第一専門外来部第五内科医長)
 岩 榮(日医大常任理事)
 長部 敬一(新潟県医理事)
 小林  博(岐阜県医常務理事)
 佐野 文男(北海道医副会長)
 柴田  醇(広島県医監事)
 清野 精彦(日医大医理事)
 田中  隆(前東京都医理事)
 濱田 和孝(大阪府医理事)
 宗像 秀雄(全日本病院協会常任理事)
 山浦 隆宏(福岡市医理事)
 渡辺  憲(鳥取県医理事)
【担当:西島英利常任理事・庶務課】

◎委員長 ○副委員長


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