日医ニュース 第946号(平成13年2月5日)

会員の窓

 会員の皆様の強い要望により,投稿欄「会員の窓」を設けました.意見・提案などをご応募ください.


納得と体得
渡辺 武(千葉県・船橋市医師会)

 日医ニュース平成十三年一月五日号の会員の窓欄で,「健康教育と納得」という投稿を拝読した.メモ程度の情報では役に立たず,実行に結びつかなければ意味がないとの貴重なご意見である.
 いかにIT革命によるものでも,結局は二次元の情報に過ぎない.難病,遺伝病,これからはじまるゲノム利用のオーダーメイド医療へのインフォームド・コンセント時代には,表面的な納得では到底,理解へはほど遠い.では,どうするかである.
 三次元による教育しかない.立体模型を駆使し,五感を利用した,楽しくカラダの仕組みを繰り返し体得できる学習施設が,どうしても必要となる.きちんと講習会へ出席できる人は,よほどのヒマな人である.国民皆保険制度であるからには,受ける国民もある程度の知識が前提となる.国民参加型の年中無休の学習施設,日本健康科学センター構想を提案して十年になるが,開発国からの留学施設としても国際貢献策ともなる.
 元気老人の参加をはじめ,修学旅行,社内研修の一翼としても大きな健康投資となる.ハコモノは,公共事業の〇・一%,二百億円で済む.医療専門団体として,国民皆保険制度崩壊を前に提案できないものか.
 「視点」で国民本位の医療を目指す世界医師会長としては,これも二十一世紀のグランドデザインではなかろうか.

インフルエンザワクチン接種について
伯井俊明(大阪府・松原市医師会)

 一九九四年に予防接種法が改正され,インフルエンザワクチンは任意接種となり,接種率が大幅に低下したが,近年インフルエンザによる高齢者の死亡や小児の脳炎,脳症による死亡が社会的問題となり,再び接種希望者が増加してきた.
 一方,高齢者は基礎免疫が低下しているのに加え,何らかの基礎疾患を抱えている人が多く,インフルエンザによって急速に症状が悪化し,毎年,数千人以上の人が,それが引き金になって死亡している.また,乳幼児では脳炎,脳症を引き起こす原因となり,死亡率三〇%以上と非常に高く,回復しても後遺症を残す割合が多い.
 そこで,インフルエンザワクチンを高齢者に接種すると,発症しても重症者,死亡者の数が有意に減少することが認められており,また,小児に対する接種の場合も,発症しても発熱の持続時間を二分の一以下に短縮し,熱性痙攣を予防するなどの効果が認められている.ただ,現時点では,小児における脳炎・脳症に対する阻止効果は不明である.
 接種回数に関しては,大人の場合,ほとんどの人が一回の接種で十分な抗体価の上昇が得られるが,小児の場合は感染の既往が少ないため,二回接種が必要である.
 今後,インフルエンザワクチンが小児を対象に定期の接種となり,個別接種方式として実施されれば,重症のインフルエンザ,ひいては脳炎・脳症の抑止に期待がもてると思われるので,早急な法制化が望まれる.

予防接種医の悩み
岡空謙之輔(鳥取県・西部医師会)

 予防接種法の改正で,ほとんどの定期接種が個別接種となり,体質をよく知っているかかりつけ医で接種を受ける機会が多くなったのは非常に好ましいことであった.また,万に一つの健康被害の救済手続きも容易になったのは良かったが,一方で定期枠から外された予防接種との料金や健康被害救済方法など,諸条件に格段の相違が目立つようになった.
 人口,面積とも小さなわが鳥取県小児科医会では,この機に個別接種料金の全県統一化と県内自治体間の完全相互乗り入れを計ったが,費用増の危惧もあってか,この企画に参加しない自治体もあり,不発に終わった.地方交付税の一般財源化による自治体首長の考えの影響が今後いっそう強まることが予想される.
 海外留学の機会が増え,健康調査の各種予防接種欄に接種日,回数の記載を要求される今日である.一方で,「ポリオワクチンのテイク率が低い年齢層の再接種に協力せよ,ただし定期外接種とみなす」との通達が出ていれば,自治体のポリオ接種会場の一隅で,余って廃棄するはずの一回分の材料を利用して青年たちへの接種の試みすら,責任問題を恐れて断られるのが現実であるが,一本十人分の材料費を一人で負担させるのは酷というものだ
 常日ごろから,数十万回に一回の健康被害が次の被接種児に当たらないことを祈りながら,使命感に燃えた医師たちは,毎日の医療活動に邁進しているのである.

静岡県における健康教育について
 博(静岡県・浜松市医師会)

 高度経済成長期が終息し,生活水準が安定期に入った昭和五十年代,ライフスタイルが様変わりし,人々が自分の健康に関心をもちはじめてきた.静岡県では,県民自らが健康を守るという意識の啓発を目的として,昭和五十二年度より平成五年度まで医師会と行政が協力し合い,健康大学講座を県内各地区で実施してきた.平成六年度からは,テレビを利用した健康教育として「テレビ健康大学」等を企画制作し,年一回放映してきたが,所期の目的を達したことにより平成十一年度で終了した.
 昭和六十三年度からは,一般県民を対象とした「静岡県医師会健康セミナー」を年一回開催しており,本年度は平成十二年十二月十六日(土)に開催した.
 また,昨年四月からは,毎回決められたテーマごとに聴取者から電話・ファックス・メール等で寄せられた質問・相談に県医師会役員をはじめ,県内各医療機関の医師が回答する「サンデー テレフォン クリニック」(毎週日曜午前十時三十分〜十一時)をSBSラジオより放送している.
 自分の健康は自分で守るという,昨今の健康志向ブームは,健康に対する認識が深まった点では大いに歓迎すべきことではあるが,巷間に健康情報が氾濫し,一歩間違えば,逆に健康を害するような誤った情報も少なくないという状況も事実である.住民の健康を預かる医師,医師会としては,これらの点に配慮して健康教育を行っていく義務があると考える.

「会員の窓」原稿募集

 下記の投稿規定をご覧のうえ,意見・提案などをご応募ください.

  • テーマ「たばこ」について
  • 字数 六百字(本文のみ,字数厳守)
  • 匿名・仮名等はご遠慮ください.
  • 原稿の採否は広報委員会におまかせください.
  • 原稿は,タイトル・氏名・所属医師会・電話番号を明記のうえ,日医広報課「会員の窓」係宛郵送もしくはFAXでお寄せください.


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