日医ニュース 第948号(平成13年3月5日)

平成12年度学校保健講習会
「喫煙防止教育と学校医の役割」を協議

 平成12年度学校保健講習会が,2月17日,日医会館大講堂で開かれた.現在,日医は,組織をあげて禁煙キャンペーンに取り組んでおり,当日行われたシンポジウム「喫煙防止教育と学校医の役割」は時宜を得たものとなった.

 冒頭,坪井栄孝会長は次のように述べた.
 「ご存知のように日医は,若年者の喫煙に焦点を当てながら,全面的な禁煙啓発運動に取り組み,大々的なキャンペーンを行っている.先生方は,現場で生徒と触れ合う場面が多いので,私どもと一緒にこのキャンペーンを成功させるべく協力いただきたい.
 学校医のあり方,あるいは,学校保健のあり方に関しては,日医のなかで,地域医療を展開する一つの大きな役割を担っていると考えている.そういう意味からも,先生方の仕事の重大さ,重要さというものについて,十分に認識をしつつ,会務を執行していきたい」
 つづいて,矢野亨日本学校保健会長があいさつしたのち,講演に入った.
 高杉重夫文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課長が,「最近の学校健康教育行政の課題について」の講演を行い,(1)学校健康教育を取り巻く状況(2)保健管理の充実(3)健康教育の充実(4)その他について述べた.
 (1)では,学校給食を摂っている間は生徒の栄養バランスがいいが,給食でなくなると栄養バランスが偏ることから,栄養に関する知識を教育する必要がある.(2)の感染症対策では,結核,エイズ,クラミジアなどの問題があり,特に性感染症は教師が教えにくい分野に当たり,学校・家庭・地域の連携と,学校医など専門性を生かした対応が必要だと述べた.
 また,薬物乱用の防止に関しては,誰でも繁華街で覚醒剤が買えるなど,危機的な状況にあり,かつては,特別な生徒の問題であったものが,一般の生徒にも教育が必要な状況が生じている.薬物乱用防止教育は,高校,中学では,年に一回は行うよう指導していると述べた.
 最後に,「児童売春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」「児童虐待の防止等に関する法律」について,概説した.
 本間研一北大大学院医学研究科統合生理学教授は,「生物時計と睡眠覚醒リズム」の演題で,現代社会で夜型化しているライフスタイルが,生活パターンにどのような影響を与えているか,学術的な見地から講演を行った.
 統計によれば,人々の就寝時間は年ごとに遅くなっており,高校生はおろか乳幼児でも両親の影響で夜型の生活になっており,睡眠時間が短縮している傾向がある.ヒトは,サーカディアンリズム(睡眠覚醒リズムなど)とホルモンリズム(他に体温リズムなど)の二種類の内的リズムをもち,これらを同調させるには,光が重要な役割を果たしている.睡眠の乱れが不登校の原因となったり,不登校から睡眠が乱れることがあるのではないかと述べた.
 午後からは,講演とシンポジウムが行われた.
 まず,衞藤東京大学大学院教育学研究科教授(日医学校保健委員会委員)による,「学校におけるこれからの健康教育」と題した講演が行われ,(1)学校をめぐる今日の状況(2)学校健康教育のあり方(3)学校医と健康教育について報告され,終わりに,これからの学校教育において,健康に関する専門的知識の豊富な学校医の参画が大きく期待されると結んだ.
 次に,「喫煙防止教育と学校医の役割―だめ! タバコ・ストップ」と題したシンポジウムに移った.
 まず,川畑徹朗神戸大学発達科学部助教授から,「青少年の喫煙防止教育」についての講演があり,(1)青少年の喫煙防止の重要性(2)青少年の喫煙行動の実態とその形成要因(3)喫煙防止教育の理論と実際(4)これからの健康教育の方向性について報告された.
 つづいて,「児童・生徒の喫煙行動と意識調査並びに喫煙対策」について,大橋勝英愛媛県新居浜市医師会理事から,新居浜市の小学生,中学生約二千七百名を対象にした意識調査の結果が報告された.特に,禁煙活動を漫画化して製作した冊子(二十円)を利用配布し,啓蒙運動を行っていること,また,子ども,未成年者へのタバコ販売禁止と自動販売機の禁止を強く求め,愛媛県小児科医会が家庭,学校,地域,行政に積極的に働きかけている取り組みについての紹介があった.
 次に,新田康郎広島県医師会常任理事から,「喫煙防止教育の実際と学校医の役割」と題して,(1)広島県医師会の禁煙活動(2)学校における防煙教育の進め方(3)学校医の役割について報告された.広島県医師会は,約三十年前より禁煙活動を積極的に行い,会員自身の喫煙率も年々低下し,平成十二年現在一一・六%と会員の全国平均を大幅に下回る結果を示している.また,県教委から禁煙活動に学校医の積極的な指導を要請されているとの報告があった.
 シンポジストに対する質疑応答がなされた後,山田統正常任理事が,医師,教職員が率先して自ら禁煙すべきであるとし,今後の禁煙活動に対する日医の方針について,広報担当の立場から説明を行った.
 最後に,本吉鼎三日本学校保健会専務理事が閉会のあいさつを行った.


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