日医ニュース 第955号(平成13年6月20日)

―第2回「医療改革フォーラム」福岡市で開催―
医療費総枠制導入に反論


 今秋の高齢者医療制度改革案のとりまとめに向け,五月十七日の神戸市に次いで,二回目の「医療改革フォーラム」が,五月三十日,福岡市において開催された.これは一般対象で,国民に医療制度改革に対する関心と理解を得るための目的がある.
 まず,基調講演として,西村周三京都大学大学院教授は「医療改革の課題と展望」について講演し,日本での改革論議に欠けている視点,独立保険方式や突き抜け方式等の高齢者医療制度の見直し方式について,年齢リスク構造調整がなされていない点などを指摘した.
 もう一つの基調講演の石原謙愛媛大学医学部教授は,日本の医療は医療人のボランティア精神と犠牲に依存しており,今の医療の現場では生死をかけるところまで来ていることに理解を求め,「持続可能な医療体制のために」国は戦略的成長事業として医療に投資すべきと訴えた.
 パネルディスカッションでは,「老人医療の負担のあり方」をテーマに,渡辺俊介日経新聞社論説委員の司会で,糸氏英吉副会長,村上忠行日本労働組合総連合会政策グループ長,山本文男福岡県添田町長,宮島俊彦厚生労働省保険局国民健康保険課長がそれぞれの持論を展開した.
 糸氏副会長は,保険制度全体のために高齢者医療制度の改革が必要であるが,フリーアクセス制,皆保険制,現物給付制といった日本の医療の優れた部分は確保しなければならないことを強調.日医が提案する「独立方式」について,公費負担九割はあくまで目標であり,まず五割に引き上げることから始め,老人拠出金の廃止とともに徐々に進めていくことを説明した.また,老人医療費の単価の伸びや受療率を抑えるために,具体的に努力していく方針を語った.
 次に,小泉首相が議長を務める「経済財政諮問会議」の基本方針原案に盛り込まれた「医療費総額の伸びの抑制」に議論を移し,糸氏副会長は,「総枠抑制は,良質な皆保険制度を崩壊する危険性がある」と,安易な総枠管理の導入に懸念を示した.全国町村会長の山本添田町長も,「総枠抑制は考えられない.すべきではない」と発言した.
 最後に,「予防給付」に触れ,糸氏副会長が,「これは本当の意味での医療費抑制につながるもの.医療費を使わなかった人には見返りを真剣に考えても良いのではないか」と発言し,各パネリストとも,予防給付について今後の重要課題と認識していることを明らかにした.会場では,満員の参加者が,各パネリストの主張に真剣に耳を傾けていた.


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