日医ニュース 第969号(平成14年1月20日)

勤務医のページ

第22回全国医師会勤務医部会連絡協議会
「2001年,勤務医の未来を考える」

 第二十二回全国医師会勤務医部会連絡協議会(日医主催)が,平成十三年十月二十七日,宮崎市で開催された.「二〇〇一年,勤務医の未来を考える」をメインテーマに,全国の医師会から三百名を超える会員が参加した.
 開会式で,担当県の秦喜八郎宮崎県医師会長は,医師国家試験合格者の半数を女性が占める現状を踏まえ,女性医師処遇の重要性を強調し,「女性医師が結婚・育児を経て,生涯を通じて安心して働ける環境を実現すれば,過重労働,低賃金,標榜科目の偏りなど,現在,医療現場で勤務医が抱える大多数の問題は解決できる」と述べた.また,医師の勤務体制について「最低でも二交代」を提唱し,当直の翌日は休める体制の実現を訴えた.

特別講演 1

 坪井栄孝会長が,「二十一世紀の医療ビッグバン」と題して講演した.
 そのなかで医療制度の短期的課題としての「三割負担」に断固反対の姿勢を強調し,厚生労働省試案,財務省案に対して日医の提唱する医療構造改革構想をかかげ,正面から議論に臨む考えを示した.経済財政諮問会議,総合規制改革会議が打ち出した混合診療と企業の医業経営参入については,市場原理に基づき企業が医療で利潤をあげようというものであり,話にならないと批判した.

日医勤務医委員会報告

 池田俊彦日医勤務医委員会委員長より,坪井会長諮問「二十一世紀における勤務医のあり方」について,答申案作成の最終段階に入っている旨報告があり,答申案の骨格が示された.また,勤務医の医師会活動参加状況や勤務医部会・大学医師会の設立状況についても述べた.

勤務医アンケート調査報告

 宮崎県勤務医アンケート調査の結果を,濱砂重仁宮崎県医師会常任理事から報告した.アンケート調査用紙を千五百八十五部配布し,七百五十一部の回答を得た(回収率四七・四%).
 今回のアンケートは,これまでの継続的な調査内容に加え,ITに関する項目と女性医師に関するものを取り上げた.IT関連では,パソコンの利用が進み(利用率七五%),文献検索,学会発表スライド作成,論文作成などのほか,診療面で患者データベース,他院への紹介書類等の作成などにも利用されている現状が数字で示された.
 女性医師関連では,女性医師が仕事を続けるうえでの環境整備が十分整っていない現状が示された.

特別講演 2

 開原成允医療システム開発センター理事長が,「IT革命と医療」と題して講演した.
 開原氏は,電子カルテなどのIT化は手段にすぎず,これを用いた診療情報の蓄積,情報開示,エビデンスの構築など医療現場における情報活用が重要であるとし,その実践を促した.日本では,医療機関間の情報不足により,連携が不活発で非効率な医療になっていることを指摘した.
 さらに,これからの医療機関はそれぞれが特徴を持ち,分業で診療に臨むことが求められるとし,医療機関連携を効率的に進める手段として情報システムを位置づけた.

シンポジウム

 シンポジウムは「勤務医に夢はあるのか」(座長:立山浩道宮崎県医師会勤務医部会長)をテーマに,地元からの五人のシンポジスト(児玉英明県立延岡病院副院長,池ノ上克宮崎医科大学附属病院副病院長,石川恵美県立宮崎病院内科医長,三倉剛和田病院長,日高良雄宮崎県保健薬務課長)が,それぞれの立場で,勤務医の現状と未来について述べた.
 シンポジウムにおいては,女性医師の処遇問題が重点テーマとして取り上げられた.石川氏は,女性の立場から,出産・育児休暇のシステムが十分整備されておらず,加えて,産休・育児中の人材確保が困難な実態を指摘したうえで,(1)夜間,病児対応を含む託児所などの保育施設の整備(2)出産・育児休暇制度(3)勤務体制の整備(4)人材バンクの活用―などを課題としてあげた.
 コメンテーターとして参加した星北斗常任理事は,自助・互助意識の必要性を強調し,「日医が何か制度をつくってあげるということではなく,一緒につくっていく方法を鋭意考えていきたい」と述べ,シンポジウムを締めくくった.
 なお,平成十四年度全国医師会勤務医部会連絡協議会は,山口県医師会(藤井康宏会長)の担当で開催される予定である.
 


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