日医ニュース 第977号(平成14年5月20日)

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平成12・13年度勤務医委員会答申
21世紀における勤務医のあり方

 勤務医委員会は,平成12年6月23日の第1回委員会において,坪井栄孝会長より「21世紀における勤務医のあり方」について諮問を受け,鋭意検討を行ってきたが,本年3月に委員会の見解を答申に取りまとめ,坪井会長に提出した.答申の概要について2回に分けて報告する.

はじめに
 二十一世紀といっても百年の幅があり,二十一世紀のどのあたりに焦点をおくかがまず議論となり,日医の政策提言である「二〇一五年医療のグランドデザイン」「医療構造改革構想」がターゲットにしている二〇一五年から高齢化がピークに達するといわれている二〇二五年ぐらいを視野に入れながら,論ずることとした.
 今回の答申の中心を貫いている理念は,国民のための質の高い医療の確保ということである.

I .二十一世紀における医療環境の推移と変化
 医療構造改革の議論が各方面で行われているところであり,どのような医療構造の変化が起こるのかを明示することはできないが,少なくとも国民皆保険体制の維持や現物給付制度の確保は間違いないだろう.
 改革の目標は,医の理念にかなったものであるべきで,医療の質の向上であることは間違いない.そのための基本になるのが,患者の安全,EBM,競争原理である.
 医師の需給については,過剰になるという危惧をよそに,医師の標準定数を満たしていない医療機関も多く,患者の待ち時間の長さ,医師の長時間労働など,医療現場では医師不足が感じられる状況が多い.
 医師総数の問題とともに,医師の診療科別,地域別適正配分についても検討されるべきで,その調整システムが求められる.

II .二十一世紀における勤務医のあり方
一,医師としてのあり方と勤務医に求められる役割
 医学や診療技術の進歩は,医療の現場においても著しい細分化を招き,狭い分野別に深い専門性が要求される.勤務医が専門性を優先するあまり,技術はもちろん心の面での基礎的臨床能力を取得することを軽視してはならない.少なくとも基礎的臨床能力を確実に身につけておくことは,患者の安全を確保するための基本である.
 医療の専門性と複雑化が進むなかで疾病の診療過程に的確に対応するには,各専門領域,各職域の機能連携をチーム医療システムとして確立することである.医師としての特権意識から脱却し,チーム医療を認識した意識改革とリーダーシップが勤務医に強く求められる.
 また,組織医療の中枢的な役割を果たす勤務医が,質と経済性について認識し責任を果たすことは義務の一つであり,診療材料への配慮,診療の効率性,高額機器の導入と効率的な活用など,質と経済性を念頭においた積極的な姿勢が期待される.
二,勤務医の質の確保と評価
 二十一世紀の医療を担う勤務医は,自らの資質を明確に把握し,自己評価することが必要である.診療において得意とする技術,業績,資格など専門職としての質を確認できる証を必要に応じて自ら提出できること.これらは医療の質の証としても重視されるEBMの基盤となる.
 勤務医の資質を確保するには,評価にあたり限られた専門的な視野からのみでなく,患者を総合的に把握できる幅広い視点が要請される.(1)基礎学力(2)情報収集能力(3)診療録の記載の的確性,理解力(4)診断と治療能力(5)患者ニーズの把握力(6)協調性(7)積極性等─を評価の視点にあげることができる.評価方法は自己評価と第三者評価を合わせて行うことが基本である.
 病院が医師の採用に際し,人事を大学に依存する受け身の体質から脱却し,質による選択を優先させることが必要である.
三,臨床研修システムの将来像
 二〇〇四年に必修化される卒後臨床研修制度は,卒後研修の要であり,必修化の目的に添った医師,すなわち救急医療やプライマリ・ケア,幅広い臨床能力,チーム医療や患者対応の優れた医師が勤務医として病院医療に加わるようになってほしい.具体的には,(1)研修医は特定の診療科,医局に属さず,各地域等におかれた卒後臨床研修センターが一元的に管理運営する(2)研修施設としては,救急医療と地域医療を組み込んだオープンな病院群とする(3)研修医と研修施設をマッチングさせるための全国的なプログラムを導入する―ことなどを提案する.

 卒前教育,臨床研修,専門研修などが,すべて大学医局やその関連病院でなされていたのは時代遅れとなり,医局が医師甘やかしの温床になったり,何となく安心感を求めて入局する時代ではなくなる.教授を頂点とする医局講座制の弊害は解消に向かうだろう.

勤務医委員会
池田 俊彦 (福岡県医理事)
谷口  繁 (岩手県医勤務医部会長)
藤井 康宏 (山口県医会長)
 伊賀 六一 (日本医療機能評価機構専務理事)
 伊藤 正一 (新潟県医理事)
 梅園  明 (栃木県医副会長)
 斉藤 義昭 (山梨県・東八代郡医理事)
 佐野 文男 (北海道医副会長)
 中村  智 (東京医科大学医会長)
 濱田 和孝 (大阪府医監事)
 宮西 永樹 (三重県医理事)
 山本 泰次 (広島県医常任理事)
 渡辺  憲 (鳥取県医理事)

(◎委員長,○:副委員長)


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