日医ニュース 第981号(平成14年7月20日)

日医
「児童虐待の早期発見と予防マニュアル」を刊行


 雪下國雄常任理事は,七月二日に記者会見を行い,「児童虐待の早期発見と防止マニュアル―医師のために―」を刊行し,日医雑誌の付録として,日医全会員約十六万人に配布したと発表した.
 この本は,子どもに対する虐待の件数が,最近十年で十六倍にも達し,早期発見に果たす医師の責務が重要なものとなっていることから,刊行されたもので,虐待増加の背景には,核家族化による育児不安,離婚率の上昇,地域の育児支援体制の低下などがあるとされている.
 雪下常任理事は,「平成十二年度には虐待相談処理件数が,一万七千七百二十五件になっており,このうち,医療機関からの通告件数は七百九十九件で,例年五〜六%の比率となっている.本書では,平成十一年度の医療機関からの通告件数五百七十三件について調査・分析を行った結果を取りまとめた」と述べた.
 さらに,医療機関の通告件数について,「この数字は,直接,医療機関から児童相談所へ通告されたものだけで,それ以外に学校医がかかわって,学校側から通告されたもの,地域の住民と医師が連携して,住民から通告されたもの,医師が親族から相談を受けて,親族が通告したものなどを含めると,なんらかの形で医師がかかわっているものは,この数倍に及ぶと予想される」と解説した.
 日医では,国の「少子化への対応を推進する国民会議」でも,子どもの虐待防止対策を重点施策として取り上げ,地域における関連ネットワークに積極的に参加し,医療機関における子どもの虐待の早期発見・防止に努力することを提言している.
 本書によれば,早期発見に役立つチェックポイントとして,「医師に見せたがらない」「原因の説明があいまいでつじつまがあわない」「親の様子がおかしい」「子どもが親になつかない」の四点を挙げている.
 雪下常任理事は,「身体的虐待について,頭部損傷が意外に多い.若いお父さん,お母さんに対して,首が座らないうちにゆすぶったりして起こる乳児のゆさぶられっ子症候群にも注意を喚起したい」と述べた.
 本書は,明石書店(Tel:03-5818-1171,Fax:03-5818-1174)から一冊八百円(外税)で一般に対しても発売される.


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