日医ニュース 第985号(平成14年9月20日)

勤務医のひろば
転勤の奨め


 卒業以来,勤務医の道を歩き続けているが,ある時,勤務医は五年くらいの周期で仕事場を変えるのがよいのではないか,と仲間うちで話し合ったことがある.
 長く同じところで仕事をするメリットはたくさんあるが,新しい刺激を受け,他者と交わることで自分の医療行為を見直し,レベルアップを図るには,武者修行に出ることが必要だろう.三年では短く,五年くらいの期間が効果的ではないか.それがキャリアアップにもつながればよい,というのが意図であった.
 勤務や給与形態の違いがあって,即実現にはならないだろうが,自己研鑽の一法だろう.
 私の場合,大学医局生活から公的総合病院,某企業の専任産業医を経て,現在の私立病院まで,五年周期とはいかなかったが,仕事の場を移した.
 前の仕事の経験が次の場で生かせるのはいうまでもないが,ことに専任産業医であった数年間は,異業種の人たちからの啓発や医師に求められる社会性を考えるうえで,貴重な時期であった.
 自らの少ない経験だけで主張するわけではないが,仕事の場を変えることはもっと推奨されてもいいのではないか.勤務医のキャリアアップの条件にしてもいいとも考える.
 しかし,求職・求人の情報を的確に得るのは意外に難しいようだ.出身大学などの医局や個人的なツテを頼るか,医学関連誌の求人・求職欄などを基に探すことになるが,特に,求人が難しい.
 卒後十年以上で,職場を変える意思をもっている医師は,専門分野,特に,得意とする部門・経験年数,希望条件などをインターネット上に登録(もちろんセキュリティをしっかりして)しておき,求人側はそれを閲覧してアプローチをするなどというやり方もあっていいのではないか.逆もまたある.
 人事に苦労する者の真夏の夢かと読み流していただきたい.

(入間ハート病院副院長 野矢久美子)


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