日医ニュース 第987号(平成14年10月20日)

勤務医のひろば
セカンド・オピニオンと医療相談


 医療に関する情報が氾濫するなかで,セカンド・オピニオンを求める患者が増加している.がんの診断に間違いはないか,手術方法は適しているかに始まり,補助療法や再発の治療が適切かといった質問まで幅が広い.
 術前の診断や手術方法に関しては,場合によっては,予後にも関わる大きな決断を強いられる患者としては,当然の行為と理解できる.
 また,手術も無事に終了し,術後や再発の治療がすでに行われている場合は,内服薬や静脈注射が適切に投与されているか,もっと効果のある治療法はないかと意見を求められることもある.
 これらは患者の権利であるから,できる限り要求に応えなければならないと思う.
 しかし,最近の傾向として,担当医師に対する不満,ひいては受けている治療に対する不満を訴える医療相談も多くなった.勤務移動による担当医の交代,怒られそうで質問できない,また,質問しても納得できるように説明してもらえないなどさまざまである.勤務移動などのように,相談されてもどうしようもないものもある.
 だが,根本的には医師と患者との間に信頼関係が築けていない時に不満が生じるようであり,ほとんどの場合は,医師側に原因があるのではないかと推察される.
 今やがんの告知はほとんどなされ,患者自身も本やインターネットによって医療情報を得ることができる時代になった.にもかかわらず,医師は知らず知らずのうちに不遜な態度をとっているのではないだろうか.患者にとって,医師に経験の差はあっても,医療の質に差があってはならないはずである.
 したがって,当然のことであるが,個人の裁量で治療を行うのではなく,EBMに基づき,チームで治療方針を決定すべきである.そして,このことを患者にきちんと伝えれば,不満は減るのではないかと思われる.
 数ある病院のなかから,この病院を選んで治療を受けに来てくれたのだと謙虚に構え,研鑽を積みたいと肝に銘じる毎日である.

(社会保険久留米第一病院外科部長 田中真紀)


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