日医ニュース 第993号(平成15年1月20日)

視点

―ツ反・BCG廃止後の―
学校における新しい結核予防対策

 小・中学校のツ反・BCG廃止後の結核予防対策については,現場でかなり混乱しているようである.
 小一・中一年生のツ反・BCG体制による従来の結核健診では,毎年二〇〇万人以上の健診者のなかで,各々四名,十三名の合計十七名の感染者しか発見できず,その数倍にも及ぶ新規発病者の大部分を見逃す結果となった.そればかりか,乳幼児期のBCG接種により,結核に対する免疫の不十分な者でも,その後のツ反応は大部分陽性を示し,不必要な精密検査や予防投薬を受けたり,逆に結核未感染者を誤認してしまう数が無視できなくなった.特に,青少年期の感染率の激減している現在では,この体制での予防対策には限界がきたといえる.
 そこで,その強化を図るためには,接触者健診の徹底と有所見者の早期発見以外に方法はない.まずは,学校健診のなかで,問診等で家族の情報によりチェックされた者,校医により特に指示された者等を,各市町村教育委員会によって設置された学校結核対策委員会(新設)に集め,新規結核感染登録の情報を持つ地域の保健所の参加により,精密検査の可否を決定する仕組みである.精密検査が必要とされた者には,ツ反,検痰,胸部X線撮影等により診断を確定し,事後指導をすることまでを学校保健法の範囲で公費で実施し,治療は結核予防法により行われることになる.
 また,施設内での結核集団発生のトップを占める学校内での発生源は,半数以上教職員であるにもかかわらず,現在,その健診体制は曖昧で,特に,結核に対する事後指導の不徹底さは見逃すことはできない.学校結核対策委員会には,これら教職員の情報も集め,教職員の健診の完全実施を指示するとともに,その事後指導の徹底を図ることもその重要な機能として含めている.
 今回の制度改正により,従来のツ反・BCGによる一律的・集団的健診体制を見直し,学校医,家族,保健所,教職員からの情報を集積し,地域が一体となって接触者健診,有所見者健診の強化を図り,きめ細かな対策を実施しようとするもので,決して学校における結核健診を軽視するものではない.
 今年度は,特に,政省令による改正が可能な小一・中一のツ反・BCG体制の廃止を急いだが,本来の青少年期結核予防体制の基本は,「乳幼児期における六カ月までの直接BCG接種」の徹底にある.しかし,これは結核予防法の改正が必要であるために,平成十六年度以降の実施にずれ込むことになった.


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