日医ニュース 第993号(平成15年1月20日)

勤務医のページ

平成14年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会
「医療の大きな変革期にあたって勤務医の医師会活動へのいっそうの参画を」

 平成十四年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会が,昨年十一月二十二日,日医会館にて開催された.
 冒頭,坪井栄孝会長は,あいさつのなかで,次のように述べた.
 「小泉内閣の財政主導の改革によってわが国の優れた医療制度は崩壊の危機にある.国民皆保険,フリーアクセスなど,国民にとって極めて大切なものすら堅持が容易なことではなくなっている.今こそ,開業医・勤務医ともに,広い国家観,医師としての任務を念頭に会務に参画していただきたい」

勤務医会員比率四七・三%,十七道府県で五〇%を超す

 星北斗常任理事(勤務医委員会担当)が,勤務医の入会・勤務医部会設立状況について報告した.
 これによると,平成十四年八月一日現在の日医会員数は十五万六千九百五十三人(前年比〇・八%増)で,うち勤務医は七万四千三百八十四人(前年比一・二%増).全会員の四七・四%を占め,前年より〇・二%増加が認められた(図).このなかで,岩手県,滋賀県を始め,十三の府県において勤務医会員の減少がみられたが,これは,昨年度相次いで実施された公立病院における会費公費負担打ち切りの影響と推察される.
 日医会員中,勤務医会員の比率が最も高かったのは鹿児島県の六四・〇%で,十七道府県において同比率が五〇%を超えた.
 大学医師会の設立状況は,前年と同じく八十校中,五十七大学(三十四都道府県)であった.

盛況であった全国医師会勤務医部会連絡協議会(山口)

 本年度の全国医師会勤務医部会連絡協議会を担当した山口県医師会の上田尚紀常任理事から,新たに試みられたランチョンセミナーを始め,多方面にわたる企画において,活発な議論がなされ,盛会裏に終了したことが報告された.次いで,来年度担当の奈良県医師会山本博昭理事より,平成十五年十月十八日奈良市において開催の予定が報告された.

日医勤務医委員会の活動状況

 池田俊彦日医勤務医委員会委員長により,今年度の委員会活動について報告がなされた.まず,坪井会長諮問の「勤務医と医師会活動」についての,現在までの議論の流れが紹介され,フリートーキングのなかでは,卒後臨床研修問題,勤務医の労働条件,女性医師の問題が中心に議論されていること,勤務医の医師会活動参画状況ならびに生涯教育申告率について報告がなされた.

勤務医と会費問題,入会促進,生涯教育,医賠責・医事紛争

 都道府県医師会勤務医部会の報告として,福井県医師会(山本誠理事),静岡県医師会(岡崎博理事),島根県医師会(今村貞夫常任理事),大分県医師会(阿南茂啓常任理事)からそれぞれ活動の現況と勤務医の抱える課題について発言がなされた.福井県における勤務医へのアンケート調査では,医師会への不満を持つ人が四五%あり,その理由として「開業医に偏重している」が三分の二を占めていたことが報告された.また,会費について,たくさんの学会に入っている関係上,一〜二万円の希望が圧倒的に多かったとのことである.また,全国的に公立病院における医師会費の病院負担が縮小・廃止されつつあることに関連し,樋口紘日医勤務医委員会委員が,岩手県において会費の病院負担が廃止された際,約五百人の退会があったが,若手勤務医が医師会との繋がりの大切さを認識して自発的に再入会するのを少し時間をかけて待とう―という岩手県医師会の方針を紹介した.
 新研修医との懇談会の形で医師会の紹介を行っていることが,福井県および島根県から報告された.また,一括申告方式を始め,さまざまな工夫を行って,各県で日医生涯教育制度への勤務医の申告率向上に努めているとのことであった.頻発する医療事故・医事紛争に関連して,日医医賠責保険と会費徴収種別との関係について質疑がなされた.

新医師臨床研修制度と医師会の役割

 日医の提唱する地域施設群研修方式による卒後臨床研修モデル事業について,大分県の大分市医師会立アルメイダ病院を中心とした病院群と研修内容について報告がなされ,このモデル事業が国が平成十六年度より実施する当該研修制度に確実に影響を与えるであろうとのことであった.
 また,栃木県医師会の昌子正實常任理事より,同じモデル事業に参加した立場で,医師会が良い医師を育てる取り組みを始めていることをマスコミにPRする絶好の機会となったとの追加発言があった.
 さらに,星常任理事より,同研修方式を来年度さらに拡充していく方針である旨,報告がなされた.

勤務医の労働環境と勤務医の責務について

 最後に,藤田敬之助大阪府医師会常任理事(日医勤務医委員会委員)より,新医師臨床研修制度への対応にしても,医療安全対策の観点からも,勤務医の労働環境の整備は急務で,日医のいっそうの努力を求む旨,提言がなされた.


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