日医ニュース 第993号(平成15年1月20日)

勤務医のひろば
内憂外患


 近年の勤務医を取り巻く状況は,極めて厳しいといわざるを得ない.
 日本経済の不況から,厚生労働省は,医療費削減に躍起となり,平成十四年度の診療報酬改定でも,単価引き下げ,減算性を導入しての診療報酬の抑制,医療提供施設の役割分担,平均在院日数の短縮化・病床数削減,定額制の導入など,政策誘導を強化している.
 一方,医学教育の分野でも,医学部も含めた大学院大学への移行,大学病院の独立行政法人化,新たな卒後研修制度の導入など,ダイナミックに変貌を遂げつつある.さらに,社会的には,医療情報公開,医療過誤,医療の質などが大きく報道される時代である.
 このような外圧のなかで,公立病院は,赤字体質からなかなか脱却できず,効率的な経営戦略を模索している現状である.これに追い打ちをかけているのが,一つは厚生労働省の政策誘導で,急性期病院たらんとしての平均在院日数の短縮対策・クリティカルパス導入など,院内的に数々の効率化と業務改善を迫られている.
 また,病院の主軸である医療安全対策・医療の質向上対策,医療情報公開に関連した診療録記載対策,新たに費用および人的資源投入が必要な卒後研修制度対策,良質な医師の確保対策,そして,その次には公立病院の独立行政法人化がちらついており,病院の存亡にかかる経営戦略の再構築,人的資源の効率的活用にも,これまで以上の腐心と工夫が求められている時代である.
 一方で現場では,従来からいわれている勤務医の過重労働は,いまだ解決されていない状況である.
 まさに,勤務医にとっては,かつてない激動の時代がしばらく続くことになろう.
 とはいえ,勤務医には,このような現実を認識し,それぞれの課題に対応し,患者さんに信頼される病院となるよう努力する以外に方法はない.これらを達成するためには,勤務医のモチベーション・インセンティブをいかに引き出し,高めるか,集約・持続できるかが,重要な因子となろう.
(広島県立広島病院副院長 田中一誠)


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