日医ニュース
日医ニュース目次 第1012号(平成15年11月5日)

感染症(SARS)危機管理対策協議会
中国,ベトナムで得た教訓を報告

感染症(SARS)危機管理対策協議会 中国,ベトナムで得た教訓を報告 感染症(SARS)危機管理対策協議会が,十月八日,日医会館小講堂で開催された.当日は,ベトナム,中国で実際にSARSの治療に当たった経験を踏まえた講演が行われるなど,大変盛会な協議会となった.
 櫻井秀也常任理事の総合司会で開会.SARSに対する診療提供体制確立への協力を求める坪井栄孝会長のあいさつの後,講演二題が行われた.
 講演(一)「重症急性呼吸器症候群(SARS)について─ベトナムでのSARS対策支援を踏まえて」では,川名明彦国立国際医療センター呼吸器科病棟医長が,ベトナムでの成功の要因として,(1)新興感染症と認識してからの迅速な判断(2)病院全体をSARS専用として隔離したこと─などが挙げられると説明.
 今冬に向けての対策としては,(1)インフルエンザを防ぐことのできる感染対策レベルを実現する(2)インフルエンザワクチンの接種を強化する(3)WHOなどの情報に注意を払う─などが重要になると指摘した.
 講演(二)「中国における重症急性呼吸器症候群(SARS)対策」では,王隴徳中国衛生部副部長が,中国でSARSが広まってしまった原因を,(1)問題の深刻性,危険性に対する認識不足(2)疾病予防コントロールシステムの能力不足(3)法に基づく衛生監督作業の未成熟(4)農村部での不十分な衛生作業─などがあったと分析.
 また,今年のような大流行を防ぐには,早期に蔓延源を押さえることも重要であるが,国民の協力が不可欠であると強調した.
 報告・協議では,雪下國雄常任理事が,本年五月に実施したSARSに対する診療提供体制の調査結果を紹介.第一種感染症指定医療機関の不足や搬送体制の不備を問題視した.
 さらに,今冬の日医のSARS対策として,(1)日医から三点セット(N95マスク,ガウン,手袋)を都道府県・郡市区医師会に十セットずつ配布したこと(2)SARSに対する初期の外来診療医療機関に国から整備費が補助されること(3)感染症危機管理対策室のもとにSARS対策本部を設置して,情報を積極的に流していくこと─等を明らかにした.
 その後の質疑では,(1)SARS診断キットの開発状況(2)SARS患者を診療したことにより休業となってしまった場合の補償問題─など,多数の質問が寄せられた.
 (1)については,現在開発中で行政の検討課題であるとの回答がなされた.また,(2)について,雪下常任理事は,「今冬については民間の店舗休業保険で対応してほしい.国からの補償は難しいが,引き続き国に要望していく」と述べた.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.